教育と経済効果2

アンドレアス氏はPISAの学習到達度調査とハヌシェック氏の方法を組み合わせることで、教育の向上による経済的影響を見出しました。そして、それは何も低所得者の多い国だけの話だけではなく、資源の豊かな高所得者の多い地域においても、同様に影響が出ることが見えてきたのです。

 

アンドレアス氏は「天然資源の乏しい国や地域(フィンランドや日本、シンガポールなど)の国民は自国が国民一人一人の才覚、すなわち知識とスキルで生き残っていかなければならないこと、そして、提供される教育の質が頼みの綱であることを理解している。したがって、国や地域が教育をどれくらい重視するかは、知識とスキルが国の財源を満たす方法にどう適合するのかに関する、その国や地域の見解に少なくとも部分的には左右されているように思われる。ゆえに、教育を重視することは最高の教育システムと経済的繁栄の両方を築くための前提条件であるかもしれない。」

 

教育を重視することは経済にも大きく影響するのです。そして、天然資源に乏しくない、つまり天然資源が多い国や地域のすべての生徒が最低限の基本スキルを習得した場合、それらの地域や国の経済的な利益を合わせると、現在のGDPのほぼ5倍に相当するといっているのです。現在、アラブ首長国連邦はごく最近この取り組みを始めました。そして、教育制度を迅速かつ根底から改善していくことを表明しています。経済的に豊かなOECD加盟国で、極端な学力不振を解消するだけで得られる経済的な利益は、初等教育と中等教育への投資よりも多くなることが見えてきたのです。

 

しかし、このようにそれぞれの生徒の基本的スキルを習得することは、学力が低い生徒にとっては大きな影響となるが、すでに高いスキルを習得している生徒にはあまり影響はない。ただ、PISAは学力の低い生徒の学力向上につながる学校改革は、学力が高い生徒にも等しく効果があることを示唆しているそうです。つまり、国や政府の学校教育改革の向き合い方によるようです。学力によって経済的影響が起きている国は、生産性の最も高い国や地域に追いつこうとさらなる努力を行っている国や地域で大きく異なるのです。そのため経済が改善してくプロセスは、このように学力の高い生徒の割合がより大きい国や地域で加速するようなのです。

 

では、学力の高い生徒の割合が高い国や地域はどういった特徴があるのでしょうか。一つのキーワードは公正な教育機会を提供することに成功していることです。教育の卓越性と公平性の両方に投資することが学力の高い生徒の割合が増える可能性が高くなるのです。

 

ただ、こういったように長期的に見て教育システムの影響が大きくなる予想の信頼性は長期的な予測の前提によってきまるといっています。それはどういったことなのでしょうか。