心の道具

森口氏は子どもたちに道具を使わせることで実行機能や読み書き能力を高めようとするプログラムを紹介しています。ここで言われる「道具」は物理的な道具も含みますし、心理的な道具も含まれると言っています。では、「心理的な道具」とはどういったものを指すのでしょうか。

 

心理的な道具とは、言葉や遊びなどのことを指します。たとえば、言葉は私たちの考えや行動を支えています。言葉を使わなくても私たちは考えることができますが、言葉を使うことで論理的推論などの複雑な思考が可能となってくるんです。つまり、言葉を「道具」として使うことで、実行機能の支援はできるのです。このことを研究するためにいくつかの重要な活動があることを森口氏は言っています。そして、そのうちの4つの活動について詳しく紹介してくれています。

 

その1つ目が「物理的な道具による外的な補助です。」幼い子どもは、まだ、自分をコントロールすることはできません。そういった場合、親や教師などによる支援的な関りが重要になってきます。その支援の一つの方法として、物理的な道具を使うことで、コントロールしやすくする方法があります。このプログラムでは、絵を使って子どもの実行機能を支援します。子どもが2人でペアになって、一冊の絵本を交代で読んでいくという活動を例にすると、子どもはどちらも自分が絵本を読みたくて仕方がありません。この場合、実行機能によって待つことが必要になってきます。その際に、片方の子どもには口の絵を、もう片方の子どもには耳の絵を渡します。口の絵を持ったほうが話を読み、耳の絵を持った方は聞き役です。途中で絵を交代し、役割も後退します。うまく自分をコントロールできない子どもも、絵という道具を与えられて、役割がはっきりすると、うまくコントロールできるようになります。この活動を繰り返す中で、そのうち絵が必要なくなり、聞き役が絵本の内容について質問するなど、発展的な活動に推移していくというのです。

 

2つ目は「友だちの行動をチェックする」です。子どもは友だちの行動を見ることで自分の実行機能を発達させます。この活動も、友だちとペアで行います。たとえば、友だちが物の数を数える活動をしている場合に、子どもはともだちがその活動を正しく行うことができているかをチェックするように求められます。チェックシートのようなものを渡され、逐次チェックしていきます。この活動では、友だちが正しく活動を行うことができるかをチェックし、この活動を振り返り、深く考えるようになります。これによって自分がその活動をやるときに、しっかりと考えて取り組むことができるようになります。このように癖をつけることによって実行機能も身についていくのです。

 

このことは見守る保育を行っていく中で非常に感じることであります。これはうちの職員と話していた時なのですが、家庭から着た子どもと、小さいときから入った子どもとでは大きく違うというのです。それも0歳と1歳ですら違っているというのです。それほど、子ども同士での関わりや模倣を通して、自分の活動を確認しているのかもしれません。そして、その土台には親との愛着や先生との信頼関係が土台にあるというのも無視できないように感じます。それほど、子どもにとっては、環境というのは大きな影響を与えるのでしょうね。