サイコパス

人の道徳性というのは乳児期の子どもでも持ち合わせている能力であるということが分かってきました。ただ、世の中においては、サイコパスのように道徳的判断ができない人もまれにいます。このことについてゴプニックが紹介しています。サイコパスは「反社会性人格障害」と言われ、他人に直接共感することがありません。神経科学者ジェームズ・ブレアは、凶悪犯用刑務所にいる囚人で研究を行いました。殺人犯や強姦犯の中には、はっきりと違いがあり、熱情や誘惑にかられ衝動的犯行に走った人たちと、もともと罪悪感がないサイコパスに分かれていたのです。サイコパスはうわべは魅力的で口達者、人を操るのも巧みですが、他人を思いやらなければいけないことが分からないのです。

 

ブレアの研究ではサイコパスの大人であったり、そういった傾向がある子どもは平均的な人と比べ、恐怖や悲しみの表情を見ても動じないというのです。それでいて、怒りや軽蔑の表情はほぼ間違いなく認識できるというのです。そして、それは彼らの脳の反応を見てもあきらかで、ほとんどの人は恐怖や悲しみの表情を見ると、脳の中にある扁桃体問う部分が活性化されます。しかし、サイコパス傾向を持つ子どもは、平均的な子どものような反応的攻撃性を示さず、脅威を感じても食ってかかったりしません。いきなり冷淡に暴力をふるうというのです。彼らは赤ちゃんでさえ抱く他人への情緒的共感がないといえるとゴプニックは言います。しかし、それは他人を理解できないというというわけではありません。彼らは他人の願望や信念を言い当てる心の理論の課題はうまくやり遂げます。むしろ、この種の知識を利用し、人を巧みに操ろうとします。彼らができないのは、他人の恐怖や悲しみを取り込み、自分のものとして感じることが出来ないのです。そのため、普通の人ができる道徳的判断ができないのです。

 

こういったサイコパスの人間はある種の成功を収めるということも聞いたことがあります。冷淡で冷静な判断ができるからこそ、成功するケースもあるのです。海外サイト『The Conversation』にサイコパスに関する記事を掲載した、米エモニー大学のスコット・リリエンフェルト教授によるとサイコパスの人は「パッと見は大胆で魅力的だが、徹底的に不誠実で、冷淡、罪の意識に乏しく、衝動をうまく抑制できない」と定義されているといっています。そして、「冷血な人間や殺人鬼は、ほとんどいません。彼らの多くが、普通の人々に混ざって生活しており、他人を犠牲にするなど、自分の特色を生かして社会的成功を収めているのです」と話しています。

 

1940年 精神科医のハーヴェイ・クレックレーは「サイコパスの中には“普通の人間”の仮面をかぶり、感情的欠落や神経症的な部分を隠しながら、社会的に成功する者もいるだろう」とはなしていて、たとえば「凄腕のセールスマン」「街一番の美女と結婚する人」「政治的な成功者」を挙げたそうです。ある意味で、冷徹な判断を行わなければいけないといったときに躊躇なくできるということが特性としてあり、サイコパスの人はそういった特性を生かしたときに成功者としてなるというのでしょう。しかし、道徳的判断ができないということが凶悪な犯罪者を生むのも確かです。

 

ゴプニックは赤ちゃんは他人の恐怖や悲しみを自分の恐怖や悲しみとし、喜びも同様であり、少し成長すれば、他人の恐怖や悲しみを取り除こうとしたり、欲しいものを取ってあげようともします。このように相手の心情を理解するために、因果関係を理解することが重要になってくると言っています。