寿命をのばす

祖父母世代が孫の育児に関わることで、心身の健康にはどういった効果があるのでしょうか。これについて孫への育児参加が祖父母にとってどう影響するのかについて、中高年のメンタルケアなどを専門にしている大阪大学人間科学科招聘教授の石蔵文信医師が紹介されています。孫との育児にかかわることは、体力的にも経済的にもきついものがあり、自由時間が奪われることもあり、「孫疲れ」という言葉も出てきています。このように孫と関わることはいいことだけではなく、悪い部分もあります。しかし、見方を変えると違った見え方もあります。60歳以上の患者に一番多い悩みはどういったことがあるかというと、食欲がわかない、睡眠がしっかりとれないというものが多く上がってきます。じっとしているばかりでは当然、食べる気も起きないし、睡眠もそれほど必要になってきません。そうすると結局、食欲増進剤や睡眠薬などを服薬し、さらに体調が悪くなったりします。世話で疲れることによって食事も睡眠もしっかりとれるというメリットも裏を返せばあるということがいわれています。

 

では、どういった関わりを孫としたらいいのでしょうか。子どもが小さいうちは体を使う遊びが多いが、祖父母が遊び方を提案しても、子どもはその通りにはしてくれません。子どもに合わせて、呼ばれたら近くに行き、やってといわれたらやるという方法でいいと石蔵氏は言います。悪い疲れ方は子どもに対してイライラすること。時間に追われて、子どもをせかし、イライラすることも多い働く世代の両親と違い、祖父母は時間に余裕があるのがメリットであるのであって、時には子どもの寄り道に付き添い、余裕を持った行動を見てやればいいというのです。

 

また、以前にも紹介したように、孫育てが「認知症」の予防にもつながる可能性があるというのです。小さい子どもは視力も聴力も記憶力も優れています。興味のあるものを見つければ追いつけないような速さで走り出すのです。たかが、子どもと考えず、一人の人間として接することは、祖父母にとってもいい刺激になるのです。また、最近では高度経済成長期に子どもの育児は妻にまかせっきりで自分は仕事ばかりしていたというケースが今の祖父たちに多いが、祖母たちにとっては自分の育児期の恨み辛みが熟年離婚や「夫源病」(夫の言動や束縛がストレスになり、妻が不調をきたす状態、石蔵氏が命名し、話題を呼んだ)につながる現象も起きているのです。そのため、これまでは忙しくて育児を支えられなかった分、男性は孫育てを支えるといい。孫を世話することで家族の予定を把握し、連絡を密にとるので、家族の絆の深まりや会話も多くなるというのです。孫が来ると強制的に動くようになり、億劫であり、何もしない状態ではなくなります。それ自体が、祖父母世代にとってはいい刺激につながるのです。

 

最近では、少子高齢化社会につながった背景には何か意味があるのではないかということが言われています。そして、祖父母の存在、特に人間の場合、女性には「閉経」があります。それの意味は、赤ちゃんを育てるために閉経後から寿命までの期間があるのでないかという話もあります。そして、その役割は仕事をする両親世代からは非常に大きなサポートとなります。よく3歳までは母親が見なければいけないという風潮がまだまだありますが、本来のところ、人が3歳まで母親と一対一で一緒にいなければいけないという形態は、人の生存戦略から見ても、ここ数十年での話です。本来は赤ちゃんは家族を含め、社会の中で育てられてきたのです。結局のところ、そういったような環境下で子どもを育てることが健康においても、良い影響を及ぼすのですね。