自分理解

どうやら、大人が実行機能を鍛えるというのは賛否両論あるようです。また、実行機能を鍛えることができたとしても、その効果は継続的なものであるというよりは、一時的なものであり、訓練をやめたらその効果はなくなっていくようです。森口氏は大人においては、実行機能を鍛えるよりも、実行機能がどのような状況下でうまく働かなくなるのかを理解し、ここぞというときに実行機能がしっかりと働くように準備することが大事だと言っています。

 

では、それはどのようにしていくことなのでしょうか。

まず、感情の実行機能については、「誘惑をできるだけ避ける」ことです。それはマシュマロテストに参加した子どもがマシュマロを見ないことで誘惑に耐えることができたように、ビールやタバコ、性的刺激などの誘惑をできるだけ目にしないようにすることが大切だと言います。自分が控えているときにはそういったものを目にすると、アクセルが全開になってしまい、ブレーキが利かなくなってしまうのです。そのため、そういったものが目に入らない環境を作ることが大切になってきます。

 

次に、感情の実行機能にも、思考の実行機能にも言えることですが、「ストレス時にはブレーキやハンドルの機能が著しく低下してしまう」ということです。仕事で疲れているとき、人間関係でトラブルになったとき、感情や思考をコントロールすることができないといいます。そのため、強いストレスを感じているときは、休息が必要になってくるのです。また、睡眠不足や不安な時、抑うつ気味なときのように、精神的に健康ではない時にも実行機能はうまく働きません。このようなときには大事な決定をすることは避けたほうが無難なのです。ほかにも、実行機能を使った直後には実行機能はうまく働かないということも言えるのだそうです。

 

森口氏が言うには、なによりも「大事な時には、誘惑のある状況に身を置かないことが大事だ」と言っています。子どもにおいても、大人においても、誘惑のある状況から身を離すすべを持つことが大切なことのなのですね。これにはある意味で自分をしっかりと認識する客観的な能力が必要になってきます。大人になってからでも、ある程度は鍛えることができるということが分かってきましたが、しかし、それを身につけるというのはなかなか困難なことのようです。であればこそ、乳幼児の頃から、友だちとの関わりや大人との関わり、ストレスの少ない環境の中で、感情をコントロールする力を養っておくことが必要になってきます。そして、この力を社会に出たときにしっかりと生かせるよう現場では考えていく必要があるのですね。