保育所と地域

小西氏は日本の保育所における重要性を話しています。しかし、そこで日本の保育所において今一度考えなければいけないことがあるのではないかと話しています。もともと保育所は日本が貧しかったことで子どもを預ける場所、いわゆる「保育に欠ける」子どもが対象で始まりました。しかし、高度経済成長を経て、成熟社会になった今では、本来の「保育に欠ける」子どもは少なくなり、その代わりに、就労を希望する親の増加や、親と一緒に保育に関わってくれる場としての役割が強くなってきました。

 

小西氏は日本における保育所のあり方は未だ、働くお母さんのものであると言っており、「同年齢の子どもと一緒に遊ぶ楽しさを味わわせ、社会のルールを身につけさせたい」ということや「手のかかる兄弟がいるので少し預かってほしい」といった多様化する親の願いを充足させるものではないと言っています。そして、待機児解消の政策も、どれほど子どもに必要な「保育」というものが議論がされたのか、されないまま一部の人のものとして利用されているのが現状だと言っています。

 

確かに、待機児の政策はそういった「保育」とは別の部分で箱だけが作られ、保育の質が保たれていないのではないかという議論が常々起きています。また、最近では乳児を受け入れる小規模園が増えている分、幼児の受け入れ先に困ったり、少子化が進んでいる地域においては、乳児を受け入れる園は作ってあっても、肝心の子どもがいなく、定員割れしている保育園もあるほどです。作ったはいいが、その後のことを考えていないことが結果として出てきてしまい、つぶれる園が今の時代は出てきています。大切なことは箱を作り、親が預けやすい環境を作ることだけではなく、そこで過ごす子どものための場でなければならず、親の就労に関わらず、保育所を地域の保育の場として提供し、親にとって育児がしやすい環境を作るのであれば、一度「保育に欠ける」という概念を取っ払い、地域と保育所が一体となって、子育て支援を行う必要があるのではないかと小西氏は言っています。

 

今後求められる保育所の役割は、一つは「保育所が長年培ってきた専門的知識や実践技術を親に提供し、地域の子育てを豊かなものにすること」とし、「地域全体の保育化」が求められ、もう一つの役割は「開かれた保育所」だと言います。それは「主に行事や保育所整備について、乳幼児とその親に参加・利用してもらうことで、保育所そのものが地域の一部を担う」ということです。小西氏はこの「保育所の地域化」には、「地域の人々を子育ての『傍観者』にしないという大切な役割がある」と言っています。そして、「親の要望の高まりに合わせて保育の質の向上」も求められると言っています。

 

このことから踏まえても、保育所やこども園の必要とされる役割というのは非常に大きいものであるということがわかります。未だ、乳幼児施設で働く人は楽でいいよねと言われます。単純にいいように思われないようにしようとするにはどうしたらいいのか、それはもちろん外に向かって発信をしていくことが大切で、こうやって保護者・地域とのつながりを通して、地域に根差した保育や幼稚園が増えてくると、また、様々なところにお金がかかって暮らすでしょうね。