言葉を獲得する基盤➀

以前、学会での発表で、3歳から幼稚園に入園した子どもが1歳から入園した子どもたちに比べて、語彙が少ない印象があるという事を発表しました。ただ、これはあくまで自園の職員に聞いた感覚的な印象であるため、証明されたわけでもなく、3歳から入園したからといって語彙の獲得ができないというものではありません。では、子どもたちはどのようにして語彙を獲得していくのでしょうか。

 

子どもの言語の獲得は1歳前後から2半ごろまでといった非常に短い期間の中で獲得していきます。そして、語と語を一定のルールに従って結合し、構造化された発話をするようになります。3~4歳になるとどの子どもも、まわりで話されている言語の主な要素を獲得するようになります。この言語の習得ですが、これには生まれ持っている能力を基盤とすることと、環境からの要因によって発達していきます。つまり、環境からの働きかけがなければ発達していかないと言われています。そして、言葉の獲得のために、前言語期の重要性があげられています。

 

この前言語期は「意味のある言葉を発するのではなく、他者の言葉に敏感に反応したり、五感を通じて物や人と関わったりするなど、言葉を獲得するための準備期間」にあたる期間のことを言います。そして、その前言語期において言葉の発達を支えるものに4つの基盤があるといわれています。

 

その一つが「音声知覚」です。これは簡単に言うと「音を聞く」といことです。赤ちゃんは生まれながらこの音声知覚を持っていると言われており、様々な音の中から音を聞き取る能力や聞き分ける能力は乳児期の早い段階から発達していると言われています。たとえば、生後間もない赤ちゃんに人の話す言語音と機械音を聞かせると赤ちゃんは機械音よりも、人の話す言語音の方をより長く注意を向けることが知られています。ほかにも母親の声と他の女性との言葉を聞き分けて、母親の語りかけに対して手足を動かして反応します。

 

子どもは当初母語に依存しない音声知覚能力を持っていると言われています。その一つがたとえば赤ちゃんは生まれた直後は英語の「L」と「R」の違いが分かるとされています。しかし、意味のある言葉を発するようになると母語に存在しない音韻の違いは聞き分けられなくなり、母語の言語体系に適した音声知覚能力となっていくのです。

 

赤ちゃんは生まれた直後から決して、受動的に存在しているのではなく、常に頭の中をフル活動して、周りの音を聞き分けながら、音韻や音節を聞き分け、自分が環境の中に適応していくために、様々なことを取り入れようとアンテナを張っているということが分かります。では「音声知覚」の他にどういった言語を習得するための基盤があるのでしょうか。