これからの教育現場

教員が当事者意識を持つことで、自律性を高めることができ、結果そのことで職員間のスキルの向上であったり、質の向上にもつながるのではないかとアンドレアス氏は言っています。これは特に21世紀の学校システムへの対応にも大きな影響が出てくることが見えてきます。

 

今の教育現場では国が定めたカリキュラムを教室で実践するという最重要事項でさえも、教育システムの様々な階層を経て目標と方法を共有し、それらを教育養成プログラムに組み入れるには10年以上もの時間を要すると言われています。そのため、生徒がこれからの社会の急速な変化に対して、「何を、どのように学ぶか」が急速に変わってきます。そういったなか、学ぶものの変化と教員がどのように教えるかにタイムラグが出てきます。そして、それは変化が急速であればあるほど、タイムラグは拡大するのです。

 

では、そのタイムラグを短縮するにはどうしたらいいのでしょうか。その唯一の方法は専門性を高めることだと言います。それは成績など成果としてカリキュラムではなく、カリキュラムの設計課程とカリキュラムの背後にある考えを最もよく伝える教授法を教員が確実に深く理解できるようにすることを意味します。

 

将来若者たちにとって価値あるものに対応するためには学校は厳しい課題に直面するだろうとアンドレアス氏は言っています。「教科書の内容はますます重要ではなくなり、より良い授業では文脈として扱われる。今日のカリキュラムの多くは、もはや存在しない静的な世界に生徒を参加させるように設計されている。そのような種類のカリキュラムは、階層的な官僚主義において産業的な手法で提供することができた。これまでの教育デザインでは、教員は専門家として高度な洞察を発揮することを期待されなかった。しかし、それでは不十分である」といっています。

 

これまでの教育とこれからの教育というのは、そもそもの根本的な考え方に違いがあることが分かります。そして、学ぶ主体が「学ばせる」職員側からではなく、今まで以上に「学ぶ側」つまり生徒側の姿勢に大きな意味が出てくるのだと思います。だからこそ、教員は指導的な立場から、より支援的な立場としてのスタンスになるのです。これからは主体である人がより明確に変わってくるのです。そんな時に、支援側でいるためには、より今子どもたちが必要としていることがどういったことなのかを予測し、察知していかなければいけません。そして、それができるためには、その活動や教育が「何のため、誰のため」といったじつに理念的な視点がより求められます。自分たちがどういったことが子どもたちに還元でき、自分の役割はどういったものなのか、主体はどういったことなのか、よりその意識によるものを持たなければいけません。そして、これは何度も言うように教育現場だけではなく、保育現場でも持たなければいけない意識です。今、保育している子どもたちが一体どんな世界で人生を送るのか、そういった見通しも含め、考えていく責任があるのだと思います。