これからの教育、教師②

前回話したように、これからの時代はデジタルテクノロジーを利用した授業というのはより進んでいくのではないかとアンドレアス氏は言っています。しかし、実際のところデジタルテクノロジーを利用した学習環境というのは実際のところまだ、課題は多いようです。2015年のPISAの調査では、生徒のデジタルスキルとデジタルスキルを育成するために設計された学習環境に関する報告書によると、まだまだこういったテクノロジーが現場では活用されていないことが明らかになったというのです。これは学校現場がデジタルテクノロジーを重要と考えていないからなのでしょうか。それとも、学校管理者が学習を変えるデジタルテクノロジーの可能性を認識していないのでしょうか。

 

このことについては生徒の成績から見ても重要なことが見えてくるとアンドレアス氏は言っています。例えば、PISAの調査でデジタルリテラシーについて、生徒が学校でコンピュータを利用する頻度と程度を調査したところ、コンピュータを学校で適度に利用する生徒は、まえにしか利用しない生徒よりも成績がややいい傾向にあったことが分かりました。しかし、非常に頻繁に利用する生徒は社会的背景や生徒の人口構成を考慮しても、ほとんどが成績が悪化することが分かったのです。またPISAは教育のためにデジタルテクノロジーに多額の投資をした国々では、生徒の成績があまり改善されていないことを示したそうなのです。そして、アンドレアス氏にとって最も残念だったのは恵まれた生徒と恵まれない生徒の知識とスキルの格差解消に、テクノロジーがほとんど役に立っていないことであったそうです。結局のところ、生徒が読解力や数学的リテラシーの最低基準の習熟度を達成するほうが、ハイテク機器を使って学習を補助するよりも、デジタル世界における公平な機会を作り出したのです。では、デジタルテクノロジーは必要ないのでしょうか。アンドレアス氏は問題は活用次第だと言っています。

 

「高次の思考を育てるには教員と生徒の緊密なやりとりが必要だが、テクノロジーはそういった関わりを阻害すると考えられる」といっています。そしてもう一つ、「19世紀の学校組織による20世紀の教育実践に21世紀のテクノロジーを加えるだけでは、テクノロジーを活用した教育は実現できない」というのです。そのため、今後の教師は「未来はテクノロジーの可能性を引き出し、生徒が内容の知識を習得するだけではなく、学習の価値を理解できる世に支える教員と共にある。また、教員は想像力溢れる問題解決のための環境をデザインし、批判的思考とメタ認知を育むことも求められる」とアンドレアス氏は言っています

 

デジタルテクノロジーは確かに便利なものですが、この技術の活用はこれまでの教育形態の延長にあるのではなく、新たな価値観を持たなければいけないのですね。新型コロナウィルスになり、タブレットやパソコンを取り入れた授業が今、改めて見直されています。これまで、遠隔での授業はなかなか進まなかったのが、ここ数カ月であっという間に広がりを見せ、自宅でも授業が受けられるようになりました。しかし、ただ、見ているとやはり遠隔での授業では学び辛いものでもあります。今まであったものから新たなものへ考え方のシフトが求められているのでしょう。そして、その時に教員においても保育士においても考えなければいけないのは、「ただ授業、ただ活動」ではなく、「何のための教育、何のための活動」といったことを中心に考えていかなければいけないのだろうことが見えてきます。