個人レベルでの変化

最後の3つ目の変化が「個人レベルでの変化」です。これは家族の形態の変化、肥満や自殺の増加、社会への参加のあり方の変化が挙げられています。

 

一つ目の「家族の形態の変化」ですが、これは社会全体における「高齢化」が挙げられています。社会における高齢化は1950年~2010年にかけて急速に進行しているようです。そのため、経済や社会福祉を今後どのように維持していくかということが問題に挙げられています。また、それ以外に、女性の社会進出と結婚率の低下もあげられており、OECD加盟国のほとんどの国において、女性労働者の割合が上昇しています。しかし、この現状が女性労働者において、必ずしも平等な機会が与えられていることを意味しているわけではないようです。実際の問題として、家庭と仕事の両立にはいろいろと困難がありますし、管理職や起業家などについてみると女性の割合は今なお低く、賃金についても未だ男女間での格差は見られています。IMF(国際通貨基金)によると、労働市場において男女間の格差が生じていることによって、地域によって最大で一人当たりGDPの27%分もの損失につながっているそうです。

 

また、女性の社会参画はそれに伴って出産年齢が上昇することがあり、保育サービスの必要性も高まってくるといった社会的な変化が生じてきます。そのため、今後はより多様な家庭のあり方や労働市場に対する新たなルール、福祉制度を模索する必要がでてきます。その一方で、結婚する夫婦の割合の減少、離婚率が増大したり、あるいは制度上の結婚という形にとらわれず従来とはことなる形の家族で育てられた子どもも増えてくることが見込まれます。

 

次に「肥満や自殺の増加」です。子どものときの肥満は大人になっても続く傾向にあり、心血管系の疾患や糖尿病、癌、変形関節症などの病気のリスク要因でもあり、生活の質(QOL)を下げ、若年での死亡につながったりもするそうです。世界保健機構(WHO)によると2020年に世界全体での肥満は1975年から3倍になっています。また、「自殺」も大きな社会問題です。世界中では年間約80万人もの自殺者が出ていると推計されており、その原因はうつ病や双極性障害(躁うつ病)、統合失調症などの精神疾患や所得の低さや失業、アルコールや薬物、社会的孤立なども原因になっています。

 

最後に政治への市民参画の低下です。社会の変化の中にもあったように政治への信頼に低下が見られているが、議会選挙に際して投票率という形で政治への市民参画の指標としてみていると、OECD加盟国において、投票率が顕著に低下していることが見られたのです。投票は市民が社会をかえるための重要な行動であると考えると、そこ機会を活用せずに放棄している層が多いことが見えてきます。

 

これらのことが世界的に見たメガ・トレンドであり、社会経済的に変化が起きているといえるのです。そのため、2030年において、必要となるキー・コンピテンシーはこれらのことをふまえて、未来の予測を通して、将来起こりうる状況を可能な限り想定し、様々な問題を防ぐために必要なコンピテンシーを備えていけるようにしなければいけないというのです。