IQと非認知能力

子どもの将来にとって大事な力とは何でしょうか。多くの人が思い浮かぶのが、学歴や成績といったIQなどに代表される「頭の良さ」ではないでしょうか。実際のところ、子どものときのIQは、学力や将来の年収などにも影響することが知られています。ところが、最近の研究の進展により、IQが重要であることは間違いないものの、IQだけでは不十分であることが明らかになっています。なぜならIQだけではその人の能力を推し量ることはできないためです。

 

森口氏は大学教員と話をしている中で、「東大卒なのに仕事ができないのはなぜか」という相談を真剣に受けることがあったそうです。これに近い話は私も過去に受けたことがありました。私の場合は某人材紹介の人でしたが、その人も「有名大学の優秀な人でも、頭が良く、IQが高くても仕事ができなかったり、使いものにならない人材がいることを最近よく聞く」と言っていました。どうやら学力や学歴だけでは社会では活躍できないというのはよくある話なのだろうと思います。では、なぜ仕事ができないのでしょうか。

 

同じように勉強ができたり、知識があったりするのに社会に出た後に大きく差をつけられる人たちに出会うことがあります。その差を生むのが「非認知スキル」なのです。OECD(経済協力開発機構)では、2015年の報告書の中で、今後教育で育むべき能力は、非認知スキルだと述べています。

 

このスキルは、言うなれば、自分や他人とうまく付き合っていく能力のことです。私たちは、会社や学校などの社会の中では、自分ばかりの意見だけではうまくやってはいけません。他者ともうまくやっていかなければいけないのです。いくらIQが高く、知識があったとしても、同僚や上司とコミュニケーションが取れなかったら、ノルマのクリアやプロジェクトの成功といった目標を達成することはできないでしょう。非認知スキルが低いと、粘り強く仕事をやり遂げられず、すぐに放り出してしまうかもしれませんし、顧客とトラブルを起こしてしまうかもしれません。森口氏はこのように実際の社会生活においては、IQのみならず、非認知能力が要求される場面が多いといっています。

 

東大生や有名大学を出ている学生は当然のことながらIQが高いことは言えるでしょう。しかし、仕事でうまくいかず、なかなか活躍できないというのはかなりもったいないことです。「IQが大切なのはもちろんであるが、非認知能力がもっと必要」というのはこういったことが背景にあるのでしょう。いかに勉強や要領がよくても、それを生かすことができなければ宝の持ち腐れになってしまうのです。そう考えるとIQというのはツールでしかないのかもしれません。問題はそれをどう使うのかということが社会で生きる力につながるのだと思います。