コンピテンスの定義と概念

OECDはDeSeCo(コンピテンシーの定義と選択)プロジェクトにおいて、PISA(生徒の学習到達度調査)やPIAAC(国際成人力調査)といった国際的な調査の理論的な根拠となることも期待していました。つまりPISA型の学力観にはどういった理論的根拠に基づいているかということが疑問になってきたのです。そのため、DeSeCoプロジェクトのテーマは「豊かで責任ある人生につなげ、現在や将来の課題に対応していくためには、どのようなコンピテンシーが必要とされるか」とされた。そしてそれは、「コンピテンシーとは何か」「どのようなコンピテンシーがより重要か」という課題ではなく、もっと大局的な視点が必要とされ、学校教育だけではなく、生涯学習の視点も含めて、コンピテンシーの枠組みを示すことが期待されていたのです。

 

では、実際、コンピテンシーとはどのような考え方が定義されたのでしょうか。まず、DeSeCoでのコンピテンスについての定義は「知識(認知的、メタ認知的、社会・情動、実用的)スキル、態度及び価値観を結集することを通じて、特定の文脈における複雑な要求に適切に対応してく能力」としています。つまり、これは以前にも書いた通り、コンピテンスとは、知識やスキルをつけることではなく、それらの考えを結集し、どのように駆使してこれからの複雑な社会に向けて「対応していく力」とするかという点にあるのです。

 

そして、その概念の特徴として①統合的な視点に立つこと ②文脈に即して捉えること といった二つのアプローチをコンピテンシーの概念の特徴として挙げています。

 

➀統合的なアプローチというのは個々の知識やスキルを必要な場面で結集して、発揮していくことです。自分が持っている知識をただ持っているものをただ持っているだけではなく、発揮していくためには、それをどう使うのかということが求められます。たとえば、自分自身が特定の知識を持っていて、それを発表するとしたとします。しかし、そこでPCを駆使して、資料を作れなければいけません。そのために、文章をタイピングできなければいけません。文章の構成や知識を説明するための下調べをするために論文を収集する能力やインターネットを駆使した情報収集能力も必要になってくるでしょう。ただ一つ「知識を外に出す」と言っても様々な能力を必要とします。それぞれの活動において、それに適した能力を必要に応じて活用していくことが重要になってきます。このように必要な力を組み合わせて活用していくというコンピテンシーの統合的な性格が一つ目の統合的なアプローチです。

 

次に②文脈に即したアプローチがあります。これは「ある状況の中で求められていることに呼応した行動を重視する能力」と言われてるものです。