9月2022

保育や教育の意味

門脇氏は互恵的社会を作るには社会力が必要だといっています。社会力とは「人が人とつながり社会をつくる力」と言っています。そして、その人は社会に積極的に社会の運営に関わる意志と能力がある人であり、人が好きな人間であるといいます。この人が好きというのは何も今身の回りにいる人だけではなく、海外の人、まだ会ったこともない人、これから生まれる未来を生きる人まで全ての人に対して、思いをもてる人であるといいます。このことを踏まえ、先の未来を考えるということは保育や教育にもつながるなと感じます。

 

私はこれまで、あまり保育が社会のためになるといった実感はありませんでした。もちろん、社会のためになると理解はしていたのですが、「実感」がなかったのです。しかし、最近、園見学の保護者と話していると、今自分に課せられている仕事は、今の子どもたちの生活を守ることだけではなく、今いる子どもたちが生きる社会も含めて考えていかなければいけないと思うことが多くなりました。

 

これはある先生が言った言葉で気付かされたことです。「何のために、保育をするのか?」という問いを考えたとき、誰もが「子どものため」といいます。しかし、これは未来の子どもの社会を予想して考えなければいけません。大人の押し付けや今の世の中を想定しても意味がないのです。そう考えるとやはり未来を予測することや考える必要が保育者側にも必要になります。ある意味で、社会力が最も必要なのは教育者や保育者であるべきなのかもしれません。

互恵的協働社会

最近、ふとこれからの世の中を考えて不安になることがあります。さまざまな勉強をしていく中で、人間はそう遠くない未来に滅びてしまうのではないかと思うことがよくあります。そして、その問題を解決するには子供の保育や教育、環境といったものが非常に大きなキーワードになるように思います

1972年にローマ・クラブといったシンクタンクが世界の将来を予測して、その結果を「成長の限界」といった報告書に「このまま経済成長を続けていくと人口はさらに増え、その分消費する資源や食糧も増え、結果として地球の負担が限界に達し、あと100年もすれば人類の存在も危うくなると、いったことを発表しました。

その後40年後の2012年にアメリカのスミソニアン研究所が検証してみたところ「成長の限界の予測は正しかった」という結論になったようです。しかも、2030年までに世界経済は破綻し持続可能な軌道から外れ人口が急激に減少すると改めて発表したのです。

その片鱗は昨今の少子化や出生率の低下による人口減少は目に見えており、日本でも労働力の低下のために海外から労働者を入れたり、AIによる代替労働力が開発されています。人との関わりは少なくなり、地域コミュニティの力は低下。事件においても無差別や衝動的な事件が増えています。社会に対する不安を上げればキリがありません。

何が今の社会に足りないのか、このことに対して、互恵的協働社会が今の時代に必要だといっているのが社会学者の門脇厚司さんです。この互恵というのは「お互いに恵む」ということですが、今の不寛容な社会にはこういった視点は確かに必要なことかもしれません。結局のところ、人はコミュニケーションを必要とする生き物であり、これを自ら断つような今の社会にとても危機感を覚えます。