コンピテンシーの整理

DeSeCoにおいて、様々な定義が整理されてきました。その一つが先に紹介した「メタ認知」というスキルですが、それ以外にも「社会的スキル」や「情動的スキル」というものの見直しも図られました。キー・コンピテンシーにおいて「自律的に行動する力」、「道具を相互作用的に用いる力」「異質な人々から構成される集団で相互に関わり合う力」といったものが柱として位置づけられています。しかし、これらの力を「社会的スキル」や「情動的スキル」といった視点で整理していくと、例えば「自律的に行動する力」は個人の内面に関する力といえます。対して、「異質な人々から構成される集団で相互に関わり合う力」は人と人との関係に関することといえます。こういったように人における内面に向けた力と外面に向けた力がキー・コンピテンシーにはあっても、自立して行動するには対人関係が必要とされますし、相互に関わり合うためには内面の能力も当然必要とされます。つまり、対人関係において内面と外面というものを明確には区分するのは難しいということがいえます。結果的にこれらの能力は分類はできても、発達や学習することにおいては相互に絡み合ったものであるということを認識していなければいけないということが述べられました。そのため、コンピテンシーにおいては、内面の力「Intra-personal」と外面の力「Inter-personal」に分けて捉える形での整理は行わなかったそうです。

 

最後に態度などに関する側面の整理です。態度というのは「一定の道徳や倫理に基づいて表出されるもの」として捉えられていたのですが、問題は「道徳や倫理を含めた価値観を、他度などに関する側面のラベリングにおいてどう考えるかという事でした。これに対して、「キャラクター」という言葉も使われることがありました。この「キャラクター」は「学習によって変えることが困難な、あるいは先天的な性格という意味合いが強いことから、この用語を使用することが懸念されたのです。最終的に態度に価値観を加える形で「態度及び価値観」という言葉で合意が得られました。

 

これらの「メタ認知」「社会性・情動性スキル」「態度及び価値観」の整理というのが行われました。こういった定義の整理というのはとても難解ですね。自分自身、こういったことを整理しているつもりでもなかなか理解するのは難しいです。こういった整理が行われていくことで、必要なコンピテンシーが定められていきます。それが「新たな価値を創造する力(Creative new nalue)」「対立やジレンマに対処する力(Coping with tensions and dilemmas)」「責任ある行動をとる力(Taking responsibility)」といったものです。そして、そのために先に整理された「知識」「スキル」「態度及び価値観」というドメインはコンピテンシーの要素を分解して、整理したものであるのです。