フィードバック

礼節のある人がもつ心得の4つ目は「フィードバック上手になる」です。フィードバックというのはたとえば「個々の社員の仕事ぶりについて、他の社員が評価をし、その評価をみんなで共有する」など、評価を全員で共有するということです。会社の状況を社員に正しく伝えていれば、社員は自分のことを価値ある存在だと感じるのです。そして、今、何が最も優先されるのか、最も重要な目的は何かといったことが誰にでもすぐに見てわかるようにするといったことです。また、フィードバックは経営者から現場に向かうものがすべてではありません。働いている人同士が互いの仕事ぶりについてフィードバックすることも大切なのです。

 

高い業績を上げているチームは平均的な業績のチームの実に6倍も肯定的なフィードバックをしているというデータがあります。また、一人一人の社員が何か良い成績を上げたことに気づけば、それを細かく指摘していくことも重要なのです。そうすることで、今の自分に自信を持つことができるし、これまでの努力を続ける気持ちにもなれるのです。自分自身が良い仕事をしている人ほど、周囲の人間のいい仕事ぶりに気づきやすいといった傾向もあります。ギャラップの調査では、マネージャーが部下の長所ばかりを指摘する企業では、全社員の67%が「自分は全力で仕事に打ち込んでいる」といっていたそうです。ところが、マネージャーが部下の短所ばかりを指摘する企業ではこの数字は31%にまで下がってしまったのです。いい仕事をすると褒められ、褒められるからまた努力をし、成果を上げていくという「ポジティブ・フィードバック」を起こすには早く褒めることが大切だと言っています。そして、称賛されたことが相手にとって意味深い部分であればあるほど、その人の後の行動に与える影響は大きくなります。否定的なフィードバックは避けられませんが、大切なのは肯定と否定どちらか一方だけがいいわけではなく、両方を組み合わせることが必要なのです。

 

そのうえで大切なことは、チームのメンバーに何をしてほしいか。そして、何を続けてほしいかを明確にしておくことです。各人がすべきことは何で、またそれをするよう促すのにどうすればいいかを把握する。把握できれば、その情報をみんなで共有することが求められます。フィードバックが真に価値あるものであれば、工夫次第でそれをさらに強力で効果的なものにすることできます。そのため、まず大事になってくるのが、受ける側になる人を良く知ることです。フィードバックを受けたとき、相手がどういう感情になるのかを理解しなくてはいけないのです。そして、フィードバックにどういう理由があるのかを受け手に十分に説明する必要があり、それは率直で正直でなくてはいけないとクリスティーン氏は言っています。フィードバックを与える際、重要なのは、常に未来に目を向けることです。最終的にはその人がこの先、前進するためにどうすればいいのかがわかるようにしなくてはいけないのです。

 

また、クリスティーン氏は「フィードバックの仕方は、ときにフィードバックの内容よりも重要な意味を持つ」といっています。たとえば、表情です。ある実験で悪い指摘を好意的なシグナル(笑顔、うなずき)で移した場合と肯定的な指摘を批判的なシグナル(顔をしかめる・目を細める)で示したのち、どちらが悪い感情を抱いたかという実験では、後者の肯定的な指摘を批判的なシグナルで受けたほうが相手に対して悪い感情を抱いたことが分かったのです。つまり、表情や伝え方によっていくら肯定的なフィードバックでも無駄になってしまったり、否定的なフィードバックでも受け入れやすくなったりするのです。

 

フィードバックというのはなかなかに伝えるのが難しいものです。相手に気づいてもらおうとこちら側が要求してばかりでは人の心は離れていってしまいます。いい仕事をしたときには相手を褒め認めなければ、新しい方向にポジティブには向かっていけません。そのために、相手を認めるということは相手の良いところを探さなくてはいけないのです。そして、相手の良いところをしっかりと伝えることも重要です。私は「褒める」ということは何も闇雲に褒めることではないと思っています。フィードバックは常に相手のためにあります。そして、相手が自信をつけることが大切です。そのためには相手を理解し、共感して話すことが重要なのでしょう。