教育
前回、齋藤氏が著書の中で言っていた。アクティブラーニングを行うための3つの視点「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」を遂げるにはどういったことを重視していけばいいのでしょうか。齋藤氏はその一つに「課題設定の重要性」を挙げています。
課題設定が明確でなければ「なぜそうなるのか、どうすれば解決できるのか」を考える思考が進まないのです。当然ですね。何を考えなければいけないのかが曖昧なのですから考えようがありません。しかし、その一方で、課題があまりに具体的で一問一答であるのも思考に深みが生まれないというのです。これは今までの暗記形式の授業と重なります。覚えることをアウトプットするという意味では思考は生まれますが、だからといって、それが本質として使われるのかというとそうではなく、どちらかというと作業的な思考になります。
このように問いかけ、課題の設定は教師の腕の見せ所でもあるのです。理想となるのは「課題が終わったら、その結果を踏まえ次の課題に向かう。そして、その課題は子どもたちが発見する」ということだと齋藤氏は言います。そのために、教師が誘導するのも授業の活性化には実際のところ必要なのです。そして、ここで重要になってくるのが、指導する側は「ほかの学生の発表に対するコメントをポジティブなものにするように求めること」に注意しなければならないと齋藤氏は言います。なぜなら、否定的な場面であると、準備自体も報われなく、モチベーションも下がってしまいます。まずはプレゼンテーションでよかった点を褒めることが重要になってきます。つまり、ポジティブな方向に改善するようなコメントをしていくことが求められるのです。そうすることで、発表者は前向きになり、雰囲気も明るくなり、それが次の課題に向かうプロセスの起爆剤ともなるのです。
この一連のプロセスは何もアクティブラーニングのためだけのものではないと思います。この活性化する流れであったり、課題設定であるというのはどの場においても、重要なものであります。ともすれば、これは企業や会社、それぞれの組織においても、必要な環境構成のプロセスではないでしょうか。実に経営者的な視点であったり、リーダーシップ的なものの見方がアクティブラーニングに求められるというのは非常に興味深く感じます。
よく私は「場が人を育てる」という言葉を言います。学ぶことや自分からやろうとする意識というのは「やれ」と言われてできるものではありません。やろうと思わなければできないのです。つまり、「主体的な活動」はもしかすると「場」によって起きるものなのかもしれないのです。そして、そのためにはリーダーがやる気を見せたり、考えを発信したりすることが重要になってきます。そういった意味では、子どもたちのリーダーである教師であtったり、保育者である先生はより、明確な意図や課題を持っていなければいけないのだろうと思います。世の中にリーダーシップという言葉が出てきますが、それは何も会社や企業だけではなく、教育においても必要とされる資質なのでしょう。
2020年12月10日 5:00 PM |
カテゴリー:教育 |
投稿者名:Tomoki Murahashi
新しい学力観をもとに2020年から2030年にかけて、教育改革が行われていくと言われています。その一つが「アクティブラーニング」です。このアクティブラーニングは「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」と定義されており、学習内容それ自体ではなく、子どもたちの「学び方」に着目した概念です。それは「基本的な知識の習得を前提としたうえで、具体的な課題の発見・解決を通じて思考力・表現力・判断力を磨くことが目的である。そうすることで、既存の知識や技能が新しい形で体系化され、自己の中で再構築されて定着していくことも期待される。」と齋藤氏は言っています。
『教育課程企画特別部会 論点整理』によれば、アクティブラーニングには3つの視点があると言われています。それは「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」です。この三つに立って授業を改善していくことが目的とされるのです。
第一の「深い学び」とは、習得・活用・探求という学習プロセスの中で、問題発見・解決を念頭に置いた学びの過程です。つまり、すでにあるものを記憶するのではなく、学習過程で見方、考え方が深まるような学習が求められる。
第二の「対話的な学び」とは、他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める学びの過程です。これは教師が話すことを聞いて終わりにするというのではなく、子どもたちが話し合いをして情報交換を行ない、子どもたちのものの見方が変わっていくような学びです。そこには外界との相互作用の手段としてインターネット、ICT(情報通信技術)を活用していくことが期待されています。
第三の「主体的な学び」とは、子どもたちが見通しを持って粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげるまなび過程を指します。これには自分で問題を見つけ、解決することができるような環境作りが重要になります。
これらの三つの視点を持った学習スタイルがアクティブラーニングなのですが、大切なことは「学習内容ではない」といことなのです。伝統的な学力が学習内容として知識を身につけるものに対して、アクティブラーニングは「学びの方法」であるのです。このことはよく理解していなければいけません。
アクティブラーニングの話は教育の本質とも共通する話だと思います。何を知るかではなく、何のために知るのかが今問われているのだと思います。保育においても、教育においても、人を扱う仕事であり、コンピューターやロボットにデータをインプットすることが仕事ではないのです。そこには相手がいて、意志があり、感情もあります。そういった人たちに対し、知る機会を与えることが学習であるとおもいます。
2020年12月9日 5:00 PM |
カテゴリー:教育 |
投稿者名:Tomoki Murahashi
「PISA型学力」や「問題解決学力」は従来の「伝統的学力」とは明らかに異なると齋藤氏は言っています。そして、「教科書を完全に暗記したとしても問題が解けるとは限らないというのです。実際の生活状況に近い問題が出され、仕事や生活で必要とされる力に近いと思われる力を測ることを目的としています。それは問題ごとに新たに考え、判断しなければならないタイプの問題がPISA型の学力である」といっています。
そのような学力を得るためには、問題を機械的に覚えて回答するのではなく、まず問題を理解しなければいけません。そうでなければ回答できないになるのです。ただ、知っていることを記載する試験では思考力は求められまさせん。そのため、問題を解くことに対する意欲自体ははかりづらくなります。その一方で、問題解決型の場合は、出題の意図をキチンと理解し、問われていることに対して自分で考えるプロセスが要求されます。そこには思考のエネルギーも求められます。このような問題に取り組み、そして、思考する意欲自体が問われ、また実際に問題解決能力も問われているという点では、このPISAの調査はまさに文部省が平成元年から目指してきた「新しい学力観」を具現化したものといえます。そういった意味では、今後の学習内容において、PISA型の学力の測られ方に変わってくるかもしれませんね。
このように「新しい学力観」では、生徒の主体性が重んじされることも大きな特徴になります。そのため、子ども一人ひとりがそれぞれ感じていること、考えていることを活かした授業を行うことが教師には求められるようになりました。子どもたち個々の意欲や感じ方、表現力・思考力・判断力が重要なのは疑いようがありません。しかし、実際にどのようにそれらを伸ばすか、どのように評価するか、ということになると、工夫が必要になると齋藤氏は言っています。
齋藤氏はこういった主体性を求めた学習について、「全体に対して特定の教育内容を一方的に伝達するという形式の指導では、ひとり一人の主体的な学習を活性させることにはならない」と言います。こういった学習形態は保育の中にも、落とし込んで考えられます。つまり、「子どもたちに一方的に情報を伝える保育は子どもたちの主体性を活性化させることにはならない」ということになるのです。そのためにも子どもたちが「自分で考え、自分で判断する」機会を与えることが重要になってきます。また、なぜ、「主体性」がこれほどまでに言われるのか、それは「子どもの権利条約」において「意見の表明権」というのはあります。それは子どもたちが自分で選び、自分で考える自由があるということが言われています。日本の場合、この意見の表明権に関してはまだまだ課題があると言われています。それは何も「子どもの言いなり」になることではありません。子どもを一人の人格者として見ることが必要なのです。よく「見守る」ということをいいますが、それは見ているだけでは、それはただの放置になるのです。「主体性」というのもただ、「主体が子ども」であればいいのではなく、何のためにそういったことが求められているのかということを念頭に考えていかなければいけないのだろうと思います。
2020年12月8日 5:00 PM |
カテゴリー:教育 |
投稿者名:Tomoki Murahashi
前回も紹介したように「生きる力」とは「変化が激しく、新しい未知の課題に試行錯誤しながらも対応することが求められる複雑で難しい時代を担う子どもたちにとって、将来の職業や生活を通して、社会において自立的に生きるために必要とされる力」とされています。そして、その「生きる力」を育成するにあたっては、他者、自然、社会との関わりの中で意欲を育むことや、体験活動を充実させること、コミュニケーションの基礎となる言語活動など、実際に社会を生きていく力として必要な資質を育てていくことが重視されていると平成23年(2011年)の中教審答申で言われています。
齋藤氏は「根本的な考え方としては、現存の各教科の重要性を認めつつ、現実の社会に対応できる力、現代の社会を生き抜く実践力を身につけることが狙いとされている。具体的には、人間関係形成・社会形成能力(多様な他者の考えや立場を理解し、自分の考えを伝えることができるとともに、他者と協同して社会に参画し、社会を形成していく力)、自己理解・自己観管理能力(自己の可能性や希望について肯定的に理解し、主体的に行動しつつ、社会との相互関係を保ち自らの思考や感情を律する力)、課題対応能力(自ら課題を発見し、課題処理のために計画立案し解決する力)、キャリアプランニング能力(『働くこと』の意義を理解し、情報を取捨選択しながら主体的にキャリアを形成していく力)といった能力が社会に対応できる力であるとされる。」と言っています。
この4つの能力は略していくと、人と関わって社会を作る力、自己実現に向けて自分と向き合う力、課題を発見し計画立案と解決する力、主体的に情報を取り入れながらキャリアを形成していく力、これらの力が社会で必要とされているのです。そして、そのどれにも共通するのことが「主体的である」ことです。自らが関わり、自らが向き合い、解決し、情報を取り入れる。「自ら学び自ら考える力」がこれらの学習観がこれからの学習観であるというのです。
そして、平成10年の指導要領には「基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくむ」「主体的に学習に取り組む態度を養い、個性を生かす」「学習習慣が確立するよう配慮」という「新しい学習観」を規定するようになり、これまでの知識偏重型であり、暗記を中心とした「伝統的な学力」の育成では得られなかった「問題解決能力」が共通の目的となったのです。
OECDにおいてもこの「問題解決能力」は考えられており、PISAの2012年の調査では「問題解決能力とは、解決の方法がすぐには分からない問題状況を理解し、問題解決のために、認知的プロセスに関わろうとする個人の能力であり、そこには建設的で思慮深い一市民として、個人の可能性を実現するために、自ら進んで問題状況に関わろうとする意志も含まれる」と定義されており、問題解決に向かう意欲それ自体が能力とされています。以前紹介したアンドレアス・シュライヒャー氏も著書の中で「協同的問題解決能力」について話していました。それほど「問題解決能力」は今の時代非常に重要になってきていると考えられているのです。では、この問題解決能力はより具体的にどういった力と言えるのでしょうか。
2020年12月7日 5:00 PM |
カテゴリー:教育 |
投稿者名:Tomoki Murahashi
「新しい学力観」に変化する大きなきっかけとなったのは、平成元年(1989年)の文部省が示した学習指導要領の改訂において、「学力は何か」について「新しい学力観」を提唱しました。それでは教科書を丸暗記すれば満点が取れる「記憶力中心の知識偏重の教育」と対比すべきものとして、「自ら学ぶ意欲の育成や思考力、判断力などの育成に重点を置く」学力観が提唱されたのです。
文部省によるとその背景には、社会の変化に対応できる人間を育てたいという意図があるというのです。情報化、国際化、価値観の多様化、核家族化、高齢化など、現在の社会は大きな変化に直面しており、これにともなって子ども自身の生活や意識も変化して生きている。これらの変化に対応する力を学力として位置付けたいということがあるのです。
そして、評価の観点としては、自ら学ぶ意欲、思考力、表現力、判断力などが重視される。そして、各科目の評価にあたっては「関心・意欲・態度」「思考・判断」「知識・理解」といった観点別に学習状況を評価することが目指されるようになったのです。
そして、平成八年(1996年)の中教審答申「二十一世紀を展望した我が国の教育の在り方について」で「生きる力」が使われるようになります。この生きる力は変化の激しい社会を担う子どもたちに必要な力であり、それは「いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他者と共に協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性」や、「たくましく生きるための健康や体力」を備えたものであるとされているのです。そして、この「生きる力」の育成が学校教育の基本におかれるようになったのです。そして、この理念は法的にも明確にされるようになりました。
「生きる力」は乳幼児教育でも、出てくるキーワードです。その根底にはやはり社会の変化によることで、教育の変革が求められるようになったからなのです。こう学力観の変遷を見ていると平成元年(1989年)にはもうすでに、こういった社会の変遷を想定された学習の変化の兆しは始まっていたのですね。この「生きる力」の育成が学校教育の基本におかれるようになり、平成一八年(2006年)改正の教育基本法では、あらたに「知・徳・体の育成」や「個人の自律」、「他者や社会との関係」「自然や環境との関係」「日本の伝統や文化を基盤として国際社会を生きる日本人」という観点から教育の目標を新たに定めています。
そして、平成一九年(2007年)改正の学校教育法では、「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に異を用いなければならない」と規定されるようになったのです。
こうして、法律的に見直された「学力」概念において①基礎的・基本的な知識・技能 ②知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力 ③学習意欲 の三要素が主要な構成要素となってくるのです。
2020年12月5日 5:00 PM |
カテゴリー:教育 |
投稿者名:Tomoki Murahashi
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