子どもの統計と確率

赤ちゃんが白と赤の球の入った箱から、各々の球が出てくる様子を見て、意外なものの方を見つめる様子を見て、赤ちゃんが可能性の確立を理解しているということが考えられました。次に、科学者がしているように、確率パターンから因果関係を推測することはどうなのか?ということですが、結論から言うと、赤ちゃんは確率パターンから因果関係を推測することができるようです。しかも、それは遅くても二歳半、もしかするともう少し前から、確立に基づいた因果推論ができるようになるようです。

 

この検証には以前、紹介した「ブリケット探知機」を使います。改めてこの装置の説明をすると、この装置は特定のブロックを載せると光がついて音楽が鳴りますが、決まったもの以外のブロックを載せたときは反応しないといったものです。まずは、このブリケット探知機において、ブロックの置き方と装置の作動状況をいろいろな組み合わせで見せます。つまり、様々な例を子どもに提示します。そのうえで、装置を作動させるのはどのブロックかということ、装置はどうすれば止まるのかということを子どもに答えてもらいます。

 

この実験では2回実験を行います。1回目は白のブロックを載せると音が鳴り、黒のブロックでは音が鳴りませんでした。白と黒両方載せると音が鳴ります。2回目では白のブロックを載せると音が鳴ります。黒を載せるだけでは音が鳴りません。しかし、2度黒のブロックを載せると音が鳴ります。この2つの実験を見て子どもたちがどのようにブリケットを見つけるかを見ます。2回の実験では、微妙に違いがあり、1回目では白と黒とを一緒に置かなければ装置は作動しません。つまり、白ブロックという要因を取り除いて考えないと断定できないのです。結果はどうだったかというと、3歳、4歳、時に2歳の子でも、白という要因を取り除くという判断ができました。1つ目の実験では白がブリケットで、2つ目の実験では白も黒もどちらもブリケットだと正しく答えたのです。つまり、科学者が喫煙とがんの関連を調べるときのように統計に基づいて行う因果推論を行うことができたのです。

 

次の実験では子どもたちは覚えた知識を使って世界に変化を起こせるかです。これも2回の実験を行います。1回目は黒のブロックを載せたときは音が鳴りません。ブロックが乗っていないと音はなりません。白のブロックを載せます。すると音が鳴ります。つづいて、白と黒のブロックを載せると音が鳴ります。2回目は黒のブロックを載せると音が鳴ります。部録がなければ音はなりません。次に白のブロックを載せます。すると音が鳴ります。黒と白のブロックを載せると音が鳴ります。といった2つの実験です。そして、子どもたちに白と黒のブロックが乗った状態で、子どもに「音を止めて」と頼みます。つまり、一つ目の実験では白を取り除くと音が止まります。2回目だと白と黒を取り除かなければいけません。

子どもたちはこの実験においても、装置を止めるところを見ていないにもかかわらず、止めることができました。つまり、因果推論を働かせ、装置の停止という小さな変化を起こさせたのです。

 

他にもブリケット探知機を使った実験では、幼児が無意識のうちに確率計算をしていることも分かったそうです。あるブロックで装置が6回中2回、別のブロックでは4回中2回作動するところを子どもに見せます。すると簡単な足し算もできない4歳児が後のブックの方が装置がよく動作すると答えたのです。

 

子どもたちは何もできない存在ではなく、実に緻密に世の中を見ているのですね。