メタ認知の枠組み
Education2030のプロジェクトにおいて、国連が出したSDGsとの関連性があることは前回の内容でありました。ここではコンピテンシーを考えるにあたって、2030年にウェルビーングの達成につながるように、まずは様々なコンピテンシーの要素を収集し、それらを分析していくということから始められました。
この議論の中で論点がいくつか上がってきました。その一つは「メタ認知をどのように整理するか」といった点です。メタ認知については「21世紀型スキル」などのコンピテンシーモデルにおいても、重要であるとしています。また、DeSeCoでも「省察やふりかえり」という項目として、すでにメタ認知を含む要素として位置付けられていました。このことをふまえて、Education2030プロジェクトの検討過程においてもこのメタ認知については新しい学習枠組みにおいて位置付けることが強く提案されていました。
しかし、その一方で、メタ認知の位置づけは、表のように、すべてのスキルや態度、性格に至るまですべてにおいて通じている概念として捉えられていました。そのため、プロジェクトにおいて、これらのような形で、メタ認知を知識やスキルとは異なる、それらよりも高次な別種のものとして捉えるのか、それとは違い、一つのスキルとして捉えるのかということが議論されました。というのも、メタ認知においては自らの知識の量や質についてメタ認知することもありますし、自らの態度や価値観のあり方についてメタ認知することもあります。そもそもコンピテンシーの総合的性格を前提とすると、メタ認知という個別のスキルのみをこのように特別に扱うことが適当なのかという疑問も出てきました。また、メタ認知スキルも認知的スキルの一つであることから、これらを別枠に整理することは概念整理として適当でないとの指摘もあり、結果的にメタ認知スキルを認知的スキルの一環として整理することで合意が得られました。
メタ認知とはこれまでもブログの中で紹介していましたが、「思考を思考する」ことをメタ認知といいます。そして、この自制であったり、自己評価や振り返りを伴う能力は様々なプロジェクトでも出ている通り、どのスキルや態度、知識といったドメインにおいても、共通して重要になる力です。自分の中で考えを整理することは感情のコントロールといった情動においても、学習における創造性などのスキルを深めるためにも、知識を深めていくためにも重要になってきます。分類というものをする場合、どこにメタ認知は入るべきなのかというのがコンピテンシーの概念を作るにあたって、はっきりとした答えが出なかったのです。
しかし、逆を言えば、それだけ重要な能力であるということも同時に浮き上がっています。どの分野においても必要な力であり、必要とされる力でもあります。そもそも21世紀型の教育の土台にはこのメタ認知というものが欠かせないということであれば、それをどのように培うことが必要であり、どういった環境が重要なのかということは無視できるものではありません。今回の合意では認知スキルとして合意されましたが、それでもその重要性は認知スキルとしての一つの能力として捉えるだけでは足りないだけの能力であるということが言えますね。