成人までの期間

10月に私に初めて娘ができました。赤ちゃんを観察しているととてもかわいくもありますが、それと同時にその赤ちゃんのする行動一つ一つがとても興味深く感じます。まず、私の妻が気が付いたのが生後数週間でまつ毛が伸びてきたことです。その頃、私はまつ毛が伸びるのは当然であり、それほど驚くことでもなかったのですが、その時、ある先生から、「それは目が見えてきたからだね」と言われました。「目が見えるようになることで、注視するようになる。注視するようになると瞬きが少なくなり、そのため、目にゴミが入らないようにするためにまつ毛が長くなってくるんだよ。つまり、よく周りを見ているんだろうね」と言われ、非常に人間の発育というのは無駄がなく起きているのだということを感じました。

 

この発育に関しては人間の何が関係しているのかを考えるとおそらくは遺伝子だと思います。しかし、さっきの話だと、環境の問題もそこにはあるかもしれません。このように遺伝子だけではなく、環境要因にもよって、変化することつまり「可塑性」が人間の脳の組織や心、社会にまであらゆるレベルで人間性の根幹をなしていると言っている人がいます。それが「哲学する赤ちゃん」を書いたアリソン・ゴプニックです。

 

ゴプニックは「子どもと大人は、同じホモ・サピエンスでありながら、形態のまるで違う生物だと考えるほうが適切です」と言っています。そのため、子どもも大人も、複雑で優れた心と脳と意識形態を持っています。だからこそ、幼児期は人間の子どもが大人に独特の依存の仕方をして過ごす、そして、他の時期からはっきりと区別される発達期間だと言っています。では、なぜそのような時期を人間は必要なのでしょうか。なぜなら幼児期は養育者なしでは生きていけないのです。

 

ここでゴプニックはほかの種と人間を比べると人間は未成熟なまま依存した生活を送る期間は各段に長いことを示しています。そして、さらに歴史と共にその期間はさらに延長されていると話しています。確かに考えてみると日本で成人とみなされた「元服」は12~15歳の年齢が成人とみなされていました。しかし、今でいう「成人」は日本では20歳になっています。ゴプニックの言うように、その期間は時代と共に遅くなってきているのが分かります。では、なぜ、子どもが大人になる期間が他の種よりも長いのでしょうか。

 

このことについて、この守られた未成熟機関こそが、人間の変革能力と分かちがた関係を持っているとゴプニックは言います。人間の優れた創造力や学習能力は進化的に大きな利点で、人間はこれらのおかげで、どんな動物よりも多様な環境に適応し、どんな動物にもできないような環境に適応し、どんな動物にもできないような方法で、自分のいる環境を変えることができるようになったというのです。

 

つまり、他と違い大人に守られた環境の中で「学んでいる」時間が長いために、環境に適応することができるようになったというのです。確かに、元服があった時代よりは今の時代はより複雑になり、テクノロジーも発達しています。それは時代とにより多様になってきています。これが元服にあった時代と今の時代の成人と言われるまでの期間の違いにつながっているのだと言います。しかし、そんな学習により、より環境に適応し、環境を変えるまでに至った人間の生存戦略も不利な部分があると言います。

 

では、それはどういったところなのでしょうか。