社会情動的スキルの重要性

「社会情動的スキルは多様性と重要な形で交差している」とアンドレアス氏は言っています。そして、「様々な考え、観点、価値観を理解し、多様な文化的起源の人々と協力し、テクノロジーによって空間と時間を橋渡しする必要があるという世界、国境を越えた問題により人生に影響を受ける世界で子どもたちが生きて働くのに役立つ」といっています。これはこれからのグローバルな社会においては必要な力です。様々な文化圏では日本の文化が通用しないことは多くありますし、日本での常識は海外では非常識な場合もあるのです。そのため、グローバルな社会では多様性に目を向けれるほど柔軟な体質が求められます。そうでなければ、一緒に働くのは難しいのです。最近では、コンビニでも海外の人が働いていることもあります。実際自園でも、調理に入っている人は海外の人であったりします。近くの工場でも、海外の人が働いています。保護者でも、日本語が通じない海外の人がいます。これは決して、遠くの未来の話ではなく、今現在目の前で起きている現実なのです。こういった環境において、今目の前にいる子どもたちはそういった人たちと働いたり、関わることが今以上に多くなっていきます。そのうえ、遠隔での関わりができるようにテクノロジーの進化も目覚ましく、今後は世界中の人々がさらにつながっていくでしょう。こういった多様なチームの中で効果的なコミュニケーションと適切な行動がとれることが多くの職場での成功の鍵になってくるとアンドレアス氏は言っています。

 

そのため、雇用主は新たな文脈に自身のスキルや知識を適応したり応用したりし、容易に適応する学習者をますます求めています。このような相互に関連する世界に求められる社会人において、これからの若者はグローバリゼーションの複雑な動態を理解し、異なる文化的背景を持つ人々にオープンである必要があるというのです。

 

よく、「英語が話せても、その内容がなければ話せない」と言われます。つまり、中身が伴っていないのに、テクニックだけあっても宝の持ち腐れになるのです。知識や技能は間違いなく必要です。しかし、それを使いこなすためには根本的な人間性や思いやり、何のために行うのかといった動機がなければ使いこなせないのです。アンドレアス氏は「他者の現実観や視点に深い敬意と関心を持つこと」が異なる視点や世界観、価値観につながるといっています。これは相手の立場や信条をただ受け入れることとは異なります。複数のレンズを通して物事を見ることが重要なことで、こういったことを通して、自分自身の視点を深め、より成熟した意思決定を可能とすることができるようになるのです。

 

これは何も海外の人やグローバルな社会だけに必要なことではなく、そもそも社会において重要なスキルであるということが言えます。現在、自園ではチーム保育を行っていますが、やはりこういった多様性が保たれていると働く側はイキイキとしています。逆にワンマンな形になると、立場が上の人も従わせなければいけなく、下の人は窮屈そうです。「連携」や「チームワーク」というのは多様性が求められます。それは「こうすればいい」といったマニュアルではなく、それぞれの特性や思いやりを通したものが必要になります。チーム保育はそういった意味では働く先生方も子どもたちを見るだけではなく、各々が「気づく」環境に次第になっているように感じます。子どもにとっても、大人にとっても、こういった環境での迷いや葛藤はそのまま課題になっているように思います。