2つの実行機能

森口氏は実行機能には2種類あると言っています。それは感情面を担う実行機能と、思考面を担う実行機能です。では、それぞれどういった機能をさすのでしょうか。

 

まず、感情の実行機能ですが、これは本能的な欲求や感情をコントロールして、目標を達成する力です。例えば、喉が渇いたときに水を、お腹がすいたときに食事を、買いたいものがあるときにお金を目にすると、私たちは今その瞬間に直ちに手に入れたくなります。その気持ちのままに直ちに手に入れてもいい場合もあれば、一時的に欲求をコントロールする必要がある場合もあります。

 

それはダイエットをしている人が、体重を減らすために、食べ応えがあり、満足感を与えてくれるハンバーガーを食べたい気持ちになっても、目標を我慢するためにはその気持ちを抑えてサラダを食べる選択をしなければいけません。ほかにも、既婚者が、円滑な結婚生活を送るという目的を達成するために、目の前にいる魅力的な人の誘惑に打ち勝つことも、感情の実行機能が必要な例です。つまり、マシュマロテストはこの感情の実行機能を測る方法の一つなのです。ですが、マシュマロテストは感情の実行機能の一部を測定しているに限らないと森口氏は言います。

 

ここで森口氏は感情の実行機能の調べ方を2つ紹介しています。

一つは贈り物テストです。実験者と子どもはテーブルをはさんで椅子に座り、実験者が子どもに背を向けて座り、こちらを見ないように告げます。そのあと、実験者がテーブルの上に贈り物を置き、わざと大きな音を立てて包装します。つまり、子どもが見たくなるように仕向けるのです。このテストでは子どもがプレゼントをみたいという気持ちを抑えることができるかどうかが調べられます。

 

二つ目がギャンブルテストです。これは、子どもの前に2つの箱を用意します。それぞれの箱にはカードが入っています。カードには「あたり」と「はずれ」があり、あたりのカードを引くと子どもにとって魅力的なシールが貰え、外れのカードを引くとシールを取られるのです。そして、二つの箱のうち片方は「ローリスク・ローリターン」の箱で、あたりを引くとシールを1枚もらえ、外れを引くとシールを1枚とられるのです。そして、この箱にはあたりが多いので、この箱からカードを選び続けると最終的には多くのシールが貰えます。次に「ハイリスクハイリターン」の箱です。こちらはあたりを引くとシールを2枚もらえます。しかし、外れを引くと、シールを5枚もしくは6枚とられてしまいます。あたりが少ないのでこちらを選び続けると最終的に損をします。一見すると、「ハイリスク・ハイリターン」の箱のほうがたくさんシールをもらえそうなので、そちらを選び続けたいときもちになります。しかし、はずれも考慮すると、最終的な枚数が多くなるのは「ローリスク・ローリターン」の箱を選ぶ必要があります。

 

では、このテストから感情の実行機能はどのようなものとして見えてくるのでしょうか。