天才を作る1

子どもたちは様々な可能性があると言われています。最近でも、まだまだ「早期教育」としていろいろな課外教室があり、そこに参加されている家庭も多くあります。天才的なスキルの習得というものはどう進めていくと身につけることができるのでしょうか。

 

スウェーデンの心理学者K・アンダ―ス・エリクソンは1万時間の法則を提示しています。つまり、どんなスキルでも(たとえば、バイオリンを弾くことでも、コンピューターのプログラムを書くことでも)本当に習得するには1万時間の着実な練習が必要であるという理論です。エリクソンのこの理論の一部は、チェスの取得の研究に基づいています。彼の発見によると生まれながらのチェスのチャンピオンはいないというところから始まります。そして、勉強やプレーに多くの時間を注がなければグランドマスターにはなれないと言っています。これまでの最強のプレーヤーたちは子どもの頃にチェスを始めています。チェスの歴史を眺めてみても、野心を持ったプレーヤーが最高レベルに達するためにチェスを始めるべき年齢は年々早くなってきています。エリクソンによると20世紀が終ることのチェスの開始年齢の平均は10歳半、グランドマスターならたいてい7歳にはチェスを始めていると言います。

 

チェスにおける早い時期からの集中的な訓練の効果について述べた研究があります。ハンガリー人の心理学者ラスロ・ポルガーによるものですが、ポルガーの著書『天才を育てよう!』(1960年代)では、充分に勉強させればどんな子どもでも天才にすることができると論じました。この本を書いた当時、ポルガーは独身で子どももおらず、みずから理論を実証することができなかった。しかし、クララという名のハンガリー語を話す外国語教師の心をつかむと、状況が変わり始めた。クララはウクライナに住んでいたのだが、ポルガーに手紙で説得されてブダペストに移ることにした。その手紙には「一緒に天才を育てる方法」について詳細に書かれてあった。

 

驚くことに二人はこれを実行します。二人は3人の女の子の親になり、ラスロはチェスに特化したプログラムで全員に家庭教育を施しました。どの子どもも5歳の誕生日を迎える前にチェスの勉強を開始し、すぐに1日10時間ほどプレーするようになった。長女のスーザンは4歳の時に初めてトーナメントで勝ち、15歳になると世界でトップレベルのレーティングのプレーヤーになります。そして、21歳でグランドマスターになりました。スーザンの成功に関しては、転載は生まれつくのではなくつくられるものだという父親の主張を見事に証明しました。しかし、一番強かったのは末っ子のユディトでした。ユディトは15歳でグランドマスターになり、最年少記録を塗り替えます。その後世界ランキング8位、彼女は現在でも史上最強の女性チェスプレーヤであるとされています。