海外の保育環境

見守る保育において、藤森平司氏がいる新宿せいが保育園では、部屋は0・1歳児室、3・4・5歳児室では大きな一つの空間を作り、家具や可動式間仕切りで空間を仕切っていることで保育環境を作っており、それは日本家屋における柔軟性のある住居環境に近しくなっています。これに対し、海外ではどういった保育環境になっているのでしょうか。著書ではドイツ ミュンヘンの保育環境が紹介されていました。

 

ミュンヘン市の保育施設では制作、絵本、パズル・ゲーム、ごっこ遊びなど用途ごとに部屋が分かれ、各部屋は堅牢な壁で仕切られ廊下に面して並んでいます。そのため、部屋同士の行き来にはドアを開け閉めし廊下を移動しなくてはなりません。その作りは、保育士室だけではなく、生活住居においても、キッチン、ダイニング、リビングなど各部屋が用途ごとに分かれているのが欧米的な居住空間の特徴です。こういった住居空間づくりに関して、日本人は、かなり自由に空間を多用途に使ってきたということがわかります。

 

そして、ミュンヘンで見学した、3~6歳児、75名の園では、保育室が大きく3つのコンセプトに分かれていました。1つ目は「自然観察・積み木」。2つ目の部屋は「工作・お絵描き」などのクリエイティブな活動をする部屋、3つ目の部屋は「ごっこ遊び」をする部屋で、それぞれの部屋は内部で広い部屋と狭い部屋の2パーツに分かれいました。そして、玄関ホールは運動をする部屋になっていました。そして、子どもたちは登園すると好きな部屋で好きな遊びをします。各部屋には保育者は2名ずつ配置されています。

 

しかし、一応は所属する部屋があり、お集りや昼食のときには自分が属している部屋に行きます。ただ、保育者の許可を得れば他の部屋に行っても構わないそうです。こういった保育を「オープン保育」と名付けていますが、「遊びは子どもの職業」ということで、子どもに対し、「遊びへの自主的参加」を促すことを意味しています。そして、その部屋の装飾や作り込みは、その部屋の担当の個性が出ています。「空間は第3の保育者」がモットーだということでした。

 

子どもが空間の使い方やあり方によって受ける影響というのはとても大きいと考えられているのですね。日本では私の感覚ですが、どちらかというと「先生対子ども」といった人的環境に関しての話が多いように感じます。物的環境や空間へのアプローチというのはそれほど話の中でもそれほど重要視される内容としてはまだ少ないように感じます。しかし、その空間のあり方、人的環境においても「大人対子ども」だけではなく、「子ども対子ども」といった発達過程から影響を受けることなどは、まだまだこれから研究や考えていかなければいけない内容ではないでしょうか。子どもに与える環境と言っても様々ですし、子どもの様子をとらえ、環境を整えていく必要がありますね。