生きる力と問題解決能力

前回も紹介したように「生きる力」とは「変化が激しく、新しい未知の課題に試行錯誤しながらも対応することが求められる複雑で難しい時代を担う子どもたちにとって、将来の職業や生活を通して、社会において自立的に生きるために必要とされる力」とされています。そして、その「生きる力」を育成するにあたっては、他者、自然、社会との関わりの中で意欲を育むことや、体験活動を充実させること、コミュニケーションの基礎となる言語活動など、実際に社会を生きていく力として必要な資質を育てていくことが重視されていると平成23年(2011年)の中教審答申で言われています。

 

齋藤氏は「根本的な考え方としては、現存の各教科の重要性を認めつつ、現実の社会に対応できる力、現代の社会を生き抜く実践力を身につけることが狙いとされている。具体的には、人間関係形成・社会形成能力(多様な他者の考えや立場を理解し、自分の考えを伝えることができるとともに、他者と協同して社会に参画し、社会を形成していく力)、自己理解・自己観管理能力(自己の可能性や希望について肯定的に理解し、主体的に行動しつつ、社会との相互関係を保ち自らの思考や感情を律する力)、課題対応能力(自ら課題を発見し、課題処理のために計画立案し解決する力)、キャリアプランニング能力(『働くこと』の意義を理解し、情報を取捨選択しながら主体的にキャリアを形成していく力)といった能力が社会に対応できる力であるとされる。」と言っています。

 

この4つの能力は略していくと、人と関わって社会を作る力、自己実現に向けて自分と向き合う力、課題を発見し計画立案と解決する力、主体的に情報を取り入れながらキャリアを形成していく力、これらの力が社会で必要とされているのです。そして、そのどれにも共通するのことが「主体的である」ことです。自らが関わり、自らが向き合い、解決し、情報を取り入れる。「自ら学び自ら考える力」がこれらの学習観がこれからの学習観であるというのです。

 

そして、平成10年の指導要領には「基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくむ」「主体的に学習に取り組む態度を養い、個性を生かす」「学習習慣が確立するよう配慮」という「新しい学習観」を規定するようになり、これまでの知識偏重型であり、暗記を中心とした「伝統的な学力」の育成では得られなかった「問題解決能力」が共通の目的となったのです。

 

OECDにおいてもこの「問題解決能力」は考えられており、PISAの2012年の調査では「問題解決能力とは、解決の方法がすぐには分からない問題状況を理解し、問題解決のために、認知的プロセスに関わろうとする個人の能力であり、そこには建設的で思慮深い一市民として、個人の可能性を実現するために、自ら進んで問題状況に関わろうとする意志も含まれる」と定義されており、問題解決に向かう意欲それ自体が能力とされています。以前紹介したアンドレアス・シュライヒャー氏も著書の中で「協同的問題解決能力」について話していました。それほど「問題解決能力」は今の時代非常に重要になってきていると考えられているのです。では、この問題解決能力はより具体的にどういった力と言えるのでしょうか。