日々思うこと

4つのタイプ

鈴木氏はコーチングの中で、「対人関係上の特徴の切り口」を4つのタイプに分けています。

 

その一つ目は「コントローラー・タイプ」です。このタイプは行動的で、自分が思った通りに物事を進めることを好みます。他人から指図されるのを何よりも嫌います。物言いは単刀直入に、時に他人から攻撃的であると言われることもあります。このタイプの人に対しては、こちら側でコントロールしないようにすることが大切です。話をするときは結論から、そして、相手の攻撃性に惑わされないようにする必要があると言います。

 

次に「プロモーター・タイプ」です。このタイプは、自分のオリジナルなアイデアを大切にし、人と一緒に活気のあることをするのを好みます。自分ではよく話しますが、人の話はあまり聞きません。自分のアイデアに対して非常に自信を持っているため、それを却下するような否定的なアプローチをしないことが重要です。独創性を発揮できる自由な環境を与えることが、能力を発揮することにつながります。

 

3つ目は「アナライザー・タイプ」行動に際して多くの情報を集め、分析し、計画を立てます。物事を客観的に捉えるのが得意で、小さな達成をこつこつと積み上げていきます。大きな変化を要求せず、彼らの変化のペースに歩調を合わせることが大切です。人と関わるときも慎重で、あまり感情を外側に出さない。無理やり自分の気持ちを言うように仕向けるのは逆効果です。

 

4つ目は「サポーター・タイプ」。他者を援助することを好み、協力関係を大事にします。周りの人の気持ちの変化に敏感で、気配り上手。自分がしたことを認められたいという欲求が強いので、十分な評価を与える必要があります。一方で周囲の期待に応えようとするあまり、自分本来の願望を見失うことがある。なにを望んでいるのか聞いてあげると、信頼関係が深まります。

 

ただ、このタイプ分けは「あの人はこのタイプだからこう関わればいい」というマニュアルではないと言います。まずは自分のタイプを知り、いろいろなタイプの人とどう関われば、お互いのいい部分を最大限に活用できるかを考えてみようというのです。

 

これらのカテゴリーを見ていても、バチっとはまる人はいないと思います。あくまで「傾向」というだけで、問題はこういった傾向を含めて、どう関わっていけばいいのかというある程度の指標があることで、お互いのいい部分をすり合わせていく必要があるのでしょうね。そして、これは人に当てはめるだけではなく、自分自身にも当てはめなければいけません。私は、「人を変えるには自分から」と思っていますし、「人を作るのは環境の雰囲気」と思っています。そのそれぞれのひとが輝ける環境作りというのはあまりにもきれいごとかもしれません。しかし、そういった目的をもって環境を作っていく必要は大きくあるように思います。今の自分の立場は割と、自分のタイプにあった立場に入れていると思います。そのため、当然しんどいことも多いですが、やりがいを感じています。そのタイプにあった環境作りというのはこういった一つの事例やタイプがあることで見つけやすくなりますね。

 

相手を見極める

コーチングにおいて「相手を見極める」ことも大切だと鈴木氏は言っています。人には苦手と感じる人がいます。そういう人に対してどう対応していけばいいのでしょうか。まず、人は自発性に基づいて行動するときに楽しさを体験します。しかし、自分が苦手と感じる人は、往々にして自分の自発的にやろうとする行動に対して選択するのを妨害する人です。

 

たとえば、自分がじっくり物事を観察し、それに関するデータを集め、ちいさな達成をコツコツ積み上げていくことの中に楽しさを見出す人であれば、「まぁ、細かいことは気にしないで、やってみよう」と性急な行動を促す上司は自分にとって、非常に大きな負荷を与えかねません。逆に、自分がまず実行してその真価を確かめようとするようなタイプだとすれば、事前のデータ収集と分析の強要は、自分の行動から精彩を奪うかもしれません。そういった苦手なタイプが、自分にとって強い影響を及ぼし得るポジションにいるほど、大きなストレスが発生します。

 

しかし、このことは逆に相手にも言えることで、「相手にとっては、自分が苦手なタイプである可能性」もあるのです。知らず知らず相手の自発的な行動を阻んでいることはないだろうか。自分のアイデアを大事にするタイプの人に対して、頭ごなしにそのアイデアを否定したり、あるいはサポートする立場で最もその能力を発揮するタイプの人に対して、全体を統率するように強く求めたりしてはいないでしょうか。

 

大切なことは、相手との関係に煮詰まりを感じているときに、その人はどんなタイプで、どう関われば新たなインターフェイス(接点)を持ち、自発的な行動を促すことができるのか。考えてみることが必要であり、「人はそれぞれ違う」という前提で相手を理解し、個別対応で、接し方を変える必要があるのです。

 

人と関わることに課題を感じるときに相手との関わりを見直すにあたっては、まずは相手のタイプを見極めて、相手に合わせた動きをすることで主体性を見出す必要があるのですね。ただ、問題となってくるのはそういった人の特性を踏まえて、どう仕事や集団の中で生きる人材として行動してもらうのか、この対応は非常に難しいように感じます。ただ、その土台として信頼関係はあるので、そういった信頼関係を作るために相手を見極める必要があるのだろうと思います。

 

また、鈴木氏はこういった相手を見極めるにあたって、対人関係上の特徴を「4つのタイプ」に分けて紹介しています。

相手から引き出す

相手から言葉を引き出すことにおいては「あいづち」は非常に重要であると鈴木氏は言います。あいづち一つで相手に対して話したいと思うか、話しにくいと思うかを人は感じるというのです。いくらいい質問で、こちらが意気揚々と答えようとしても、その相槌が「はあ」や「ふ~ん」と答えられるとそれ以上話したくは無くなるのではないかと言います。しらず、こういったあいづちは会話の中で起こっているかもしれません。どれくらい普段からあいづちを打っているか意識してみてほしいと言います。

 

では、あいづちを打つにあたり、どういったことを意識すべきなのでしょうか。鈴木氏は5つの観点を言っています。①あいづちを打つときの声のトーン ②声の大きさ ③顔の表情 ④タイミング ⑤言葉それ自体の選択(うんうん、はいはい、へ~ などなど)

あいづち一つで人はたくさん話してみようと思えば、話す気を無くしてしまうこともあるのです。そのうえ、あいづちはほとんど無意識に打っていることが多くあります。まずは、自分がどんなあいづちを打っているか客観的な情報に触れてみてほしいと言います。たとえば、テープやボイスレコーダーで録音することも一つの方法でしょう。まずは、一度自分を振り返ってみてほしいと言っています。

 

確かに、あいづちというのは相手をその気にもさせれば、話す気も失わせるなと思います。時に沈黙という選択肢もあいづちに入るのだろうと思います。そして、あいづちは相手に主導権があることの表明でもあります。こういったやりとりは相手に対する礼儀でもあるのでしょうね。

 

また、人から信頼されるには相手に自分の気持ちを伝えるというのも大切なキーワードになると鈴木氏は言っています。鈴木氏は上司は、自分の部下にドンドン自分の気持ちを伝えたほうがいいと言っています。それは「人が人に対して防衛を解くのは、何よりも相手の気持ちに触れたとき」だからだと言っています。

 

アメリカの弁護士 ゲーリー・スペンスは「議論に負けない法」の中で、何百という依頼人の弁護に立ち、一度も負けたこともない弁護士はどんな人なのだろうと見られた時、「毎回毎回、逃げ出したくなるような不安な気持ちを、正直に彼らに伝えるだけ」と言ったそうです。そうすることで自分は信頼を獲得するのだと。ある外資系コンサルティング会社のコンサルタントに鈴木氏がコーチングを教えていた時に、TさんとSさんという二人のコーチング風景を見て、Tさんの方が、相手からたくさんのことを答えていたそうです。TさんがSさんと著しく違ったのは、Tさんは相手が何か言うたびに、「それに対する自分の気持ちを挟み込んでいた」のです。「いいですねぇ、僕まで嬉しくなりますよ」とか「そんなことあるんですか、驚いちゃうな」といったようにです。

 

人の話を聞くときに、自分の内側に意識を向けてみてください。と鈴木氏は言います。そこになんらかの「反応」を見つけたら、それを言葉にして相手に伝えてみてほしいというのです。そうすることで予想以上に相手は乗って話をしてくれるというのです。

 

私は相手の話を聞くのがあまり得意ではなく、話したくなる方なので、こういったことは非常に参考になります。つい、相手の是非を判断してしまうのですが、そうではなく、こちらの感情を話していく方が、相手に考えさせる「遊び」ができるのでしょうね。こういった会話の中にある「遊び」を大切にすることは非常に重要な気がします。

相手の理解

人に指示を出すときに、気を付けなければいけないことが多々あります。誰しもが「自分は正しい」と思っています。だから被害者意識を持ってしまったり、知らず「ワンマン」な指示を出してしまったりするのです。これは自分自身も気を付けなければいけないことでありますし、慎重にならないといけないことだと日々感じています。それほど、相手の立場に立って物を見るというのは難しくもあります。うまく、「自分の側」から「向こう側」に意識を移して考えることができるのでしょうか。その一つの方法が「ひたすらその相手についての質問をする。そして、それについて答える」ことだと言っています。これは私も日ごろから心掛けていることでもあります。

 

これは自分自身の経験でもあるのですが、意外と「指示や決断をしなければいけない」立場になると、相手のことをおもんばかってもいれないことが多々あります。これまでは、やはりしっかりとしている威厳のある人といった印象、つまり「引っ張るリーダー」が印象にあったのですが、さまざまな状況を見ていると、何でもやってしまうリーダーや指示ばかりのリーダーでは人が育たず、逆にお節介になる場合もあるということに気づきました。そのため、人が「動きたくなる」ようなリーダーにならなければいけないと思うと、相手を「動かす言葉がけ」を模索する必要があります。そうなると相手をしっかりと見て、反応を予測して話さなければいけません。結果的に相手と向き合わねばならず、「相手の理解」は最優先事項になります。コーチングするにしても、大切なのは相手との関係であり、関係づくりにおいて、相手の理解は大切なことになってきます。

 

また、これは相手との信頼関係だけではなく、相手に指示の内容をどう届けるかの理解度にもつながっているのではないかと思います。自分の「思うがまま」の指示をすると「結果何を言いたかったのだろう」ということも起きてしまいます。相手がこの指示をどう受け止めて、どう考えるのだろうかと考えなければ、指示が伝わらないことも多くあります。相手を理解するというのは様々な点で考えなければいけなく、うまく関係を作ることで、チームや集団はうまく回っていくのだろうと思います。

 

以前、保育において、怖い先生がいるにあたって「子どもが大人の顔色を伺う」ということが話題に上がりました。このことにどう考えるでしょうか?「顔色を伺う」というとあまりいいことのように感じません。しかし、「今の子どもたちは人の顔色を伺わなさすぎる」と言われるとどうでしょう。最近の子どもたちはこちらが話していてもお構いなしに話している子どもが多くいます。私の園では「自由と規律」が理念に掲げています。「個」を育てるといっても、なんでもいいわけではありません。一定のルールの中で自己発揮しなければ、自分にとっても、集団にとってもいい結果は起きないのです。そのためには、「相手を思いやる気持ち」ということが重要になってきます。割と「先生と子ども」といった関係性において、トップダウンになりがちな関係性を作ることが多くあります。しかし、子どもも一人の人格者という意識は持たなければいけません。

 

「相手のことを思いやる」ということや、相手を知るために「相手の質問をする」という行為はまず相手を一人の人間として認めることから始まるのだろうと感じます。

安心感

前回の内容においても、大切なことは相手の現状分析であったり、目的と現状をすり合わせて、問題を解決していこうとすることです。その援助をコーチはしていかなければいけません。しかし、その時に難しいのが、では、「問題を解決していこう」と思わせる雰囲気を作ることの困難さです。自分自身このことは非常に課題にしています。そして、その土台となるものが「信頼関係」です。そもそも相手が信頼できる相手でなければ、相談事を持ちかけることもないでしょうし、その人の言葉が響くこともないでしょう。では、信頼関係はコーチングにおいてはどのように作っていくことが基になっていくのでしょうか。

 

鈴木氏はまず、「出会いの一言に新しさをこめる」ことが信頼関係の第一歩だと言います。いつもいう「おはよう」や「おかえり」といった言葉に何百回、何千回と同じ人との間で交わされる同じ言葉に、それでも“新しさ”をこめるのです。こういった何気ない日々の関係性を培うことからコーチングは始まると言います。つまり、コーチングが始まる具体的なセッションが始まってから、誰かと向き合ってから、関係構築を初めても遅すぎるのです。鈴木氏はこの出会いがしらの一言で人との関係性がつくれているか、それが自分がどれだけコーチとして成長しているかを示す、一つの指標となると言います。

 

次に、「安心感を持たす」ことです。コーチングの基本哲学は「安心感で人を動かす」ことであると鈴木氏は言います。アメやムチで相手を動機づけるのではなく、安心感をお互いの関係の中に作り出し、それを相手が行動を起こすための土壌とするのです。そして、この安心感を与える非常に強力な方法が、“同じ言葉を繰り返す”ことです。語尾だけを繰り返してもいいですし、あるいは「そうだよね」などの文で置き換えることも良いと言います。このように“同じことを繰り返す”ということは、相手の意見に賛成するということではなく、「相手が今そういう状態にあるということを認める」ということに繋がります。逆に同じ言葉が繰り返されないと、人は今ここでの自分のありかたに漠然として不安を持つようになります。まずは、相手の言葉を繰り返して、相手の状態を認めてあげてほしいと言います。そして、その後でも、「もう少し頑張ってくれよ」と声を掛けるのは遅くないと言います。

 

子どもたちにとっても、信頼関係というのは大きく関わってきます。よく「安心基地」という言葉が使われますが、子どもにとっても、信頼できる大人や何かあった時に助けてくれる存在があることで、新しい世界に飛びこむことやチャレンジをしていくことができます。こう考えていくと、大人も大きくは変わらないのだということが見えてきます。イノベーティブな活動が起きるためには、どういった環境が必要なのか、それは信頼関係を中心とした安心感がある環境が保証されてこそなのかもしれません。