相互作用

子どもの言葉の獲得が生得的獲得できるメカニズムがある一方で、言葉の獲得で生得的な基盤があることが認めたうえで、言葉を獲得するには多くの要因(成熟/生物学的要因、社会的要因、認知的要因、言語的要因)が相互に作用し、お互いを変容させると考えられている「相互作用アプローチ」があります。

 

これはピアジェの認知理論が有名です。ピアジェ理論では認知発達を言葉の発達の必要条件であると考え、非言語的認知は、言葉の発達を支える“エンジン”であり、言語と非言語スキルは両社とも両方の領域を超えたより深い操作システムから並行して出現してくるとしています。感覚運動期の最終の第6段階で出現する象徴機能(あるものをそれとは異なる他のもので代表させる働き)の一つの表れが言語であり、初期のシンボル(象徴)(言葉での命名)は、関連する認知領域のすべてにわたりほぼ同じ時期に生起する心的表象の一般能力の一つの現れに過ぎないピアジェはかんがえています。つまり、表現としての一つとして言葉があるというのです。

 

もう一つの見方は、言葉の獲得は社会的相互作用の中で発達するという考え方です。子どもの社会的コミュニケーションと子どもの言語技能を改善するために他者(養育者)を必要とするという考え方です。ブルーナーは言葉の獲得の過程について、社会的相互作用を重視し、言語獲得援助システムが人間には備わっているとしています。つまり、養育者は言葉を習得し始めた子どもに、言葉の機能、語彙、統語的規則を発揮しやすいようにさまざまな手がかりをあたえ、言葉の獲得の足場となるコミュニケーションの場をつくります。そうすることで、子どもが生得的に持つ能力を引き出すようになり、環境からの刺激を養育者が調整することで、ことばの獲得が行われていくと考えるのです。

 

このように、言語能力の発達は「教育的働きかけ」と「内的能力」の影響をうけ、時間的経過の中で進行していくとかんがえています。人間が本来持っている遺伝により脳にプログラムされた言葉の獲得の能力が生まれもっているとしても、それが発現するためには多くの要因が相互作用する必要があるということがわかってきました

 

このように、遺伝的な要因と、環境による要因によって子どもが言葉を習得していくということが今では言われているそうです。では、どれほどまで、環境というのは子どもの言葉の獲得に影響するのでしょうか。これはルーマニアの孤児院での研究が有名で、この研究によって子どもの言葉の獲得だけではなく、多くの発達における影響を環境によって影響を受けるということが分かってきました。では、それはどういったことから見えてくるのでしょうか。