独り言

森口氏は子どもたちの実行機能をつけていく中で、「心の道具」を利用することを紹介しています。子どもたちとの関わりのなかで、道具を使うことで、切り替える実行機能や読み書きの能力を高めようとするのです。そして、この心の道具は物理的な道具だけではなく、心理的な道具も含むと言っています。そして、森口氏はこの心の道具には4つ重要な活動があると言っています。前回は①「物理的な道具による外的な補助」として、自分をコントロールするためのカードのやり取りの紹介と②「友だちの行動をチェックする」友だちとペアを組み、お互いをチェックし合うといったことを通して、相手の行動が正しいかどうかを判断し、それを振り返ることで深く考えさせ、訓練していくという方法を紹介してました。

 

つぎに3つ目はどういったことがあるかというと「独り言を使った行動をコントロールする」です。これは独り言は子どもの発達において重要な意味を持っていると森口氏は言っています。私たちが何気なく使っている言葉には、「相手にはなす」という役割以外に、「考える」という役割もあると言います。そして、私たちは日常の中でも、頭の中で考えるために言葉を使っているというのです。確かに、何気なく、次の行動を独り言として口から出てしまうことはありますね。森口氏は子どもの言葉には、「他人と話す」という役割があり、成長とともに考えるためという役割を持つようになる言っています。1歳から2歳ごろにかけて、子どもが話し始める頃、言葉は純粋に何かを伝えるために使用されます。自分の気持ちを伝え、親や周りの他者とのコミュニケーションのために言葉は使われます。それが成長とともに「考えるための言葉を発するようになる」のです。周りに誰もいないのに「あれはなんだ?」とか「これ聞いたことあるなぁ」といったように発するのです。これは他者と話すための言葉と、考えるための言葉が、両方とも言葉として出てくる時期だと言います。そして、5歳ごろになると、独り言が減ってくると森口氏は言っています。発話として表出してきた「これなんだろう」といった言葉が発話として出てこなくなるというのです。

 

この子どもの様子の変化は、子どもの独り言が本来考えるために用いられる言葉を発話している状態ではないかと考えられます。そして、難しい問題に取り組んでいるときに独り言が出やすいようです。これは大人も同じですね。子どもにとっても同じで、独り言を多く発する子どもほど、実行機能や難しい問題を解く能力が高いと森口氏は言っています。この様子をプログラムに生かすのです。つまり、子どもに絵や文字を書く際に、教師が独り言を言いながら書く様子をモデルとして見せ、独り言を言って活動するように促すのです。その後、子どもたちが活動をする際に独り言を言うことを奨励するのです。そうすることで、実行機能は向上するというのです。

 

独り言というのは、自分の考えを整理することだけではなく、物事に向き合うときに実行機能を機能させているときにもでるものなのですね。