マシュマロテストから見えるもの
マシュマロテストを行った研究グループは幼児期のマシュマロテストの成績と、その20年後における自尊心や拒否感受性などとの関連を調べました。拒否感受性というのは、周りの他者が自分を拒否するのではないかと予想したり、些細な行動から自分は拒否されたと考え、過剰反応したりするような傾向のことです。この傾向が強い人は自分は拒否されると考えがちなため、人間関係に問題を抱えやすく、自尊心も低くなってしまいます。
この研究では、子どものときに実行機能が高ければ、たとえ拒否感受性が高くても、自尊心に問題を抱えにくいことを示しています。少しの出来事でも拒否感受性が強い場合とそうでない場合では考え方は大きく変わってきます。森口氏は学校生活で持ち物が見当たらない時を例に挙げて説明しています。自分の持ち物が無くなったと仮定して、拒否感受性が強いと(事実がどうであるかは別として)自分の持ち物が誰かに隠されたとかんがえてしまい、トラブルになります。そのため、周りから人は離れていき、例えば教師からも問題扱いされてしまいます。こうなると自尊心も低下してしまいます。逆に実行機能が高いと思い込みを抑え込み、別の可能性についても考えられるようになるのです。たとえば、自分の持ち物を別のところに忘れた可能性を考えたりなどです。その結果、人間関係に問題を抱えにくく、自尊心も保たれます。このような経験が積み重なることにより、子どもの時の実行機能は大人になってからの自尊心に影響力を持つのです。
このプロセスは「非行少年」の話でもありましたね。非行少年たちのほとんどはこういった考えの元、トラブルを繰り返し、結果として、仕事が長続きしなかったりすることで、結果的に手っ取り早くお金が手に入る犯罪に手を染めることが多くあるということが言われていました。つまり、こういったことを見ても、マシュマロテストで犯罪率にも、違いが見られたと理由が物語っています。
また、他にも興味深い結果をマシュマロテストが示しています。幼児期にマシュマロテストで待つことができた時間が1分長いと、30年後のBMIの値が0.2低くなることも示されました。それはマシュマロテストですぐにマシュマロを食べてしまう子と5分待つことができる子どもは、大人になったときのBMI値が1低いということになります。
確かに30代でBMIを1減らすというのはなかなか難しいことです。このマシュマロテストを通した長期的な研究では、非常に多くのことに幼児期の実行機能が将来に大きな影響を与えているということがわかりました。しかし、このマシュマロテストの結果は衝撃的なニュースであった一方で、その結果に疑問視もされています。それはどういったところなのでしょうか。