実行機能とは

実行機能とはどういったものなのでしょうか。ここでもう一度整理して生きたいと思います。まず、自分にとって、一番のご褒美となる飲み物や食べ物を想像します。ある人にとってはケーキかもしれませんし、それはビールかもしれません。自分が、とてもお腹を空かせている、または、とても喉が渇いているときに、そのご褒美が目の前に置かれていたとします。たとえば、ご褒美がビールだったとしたら、今すぐにでも飲みたくなります。

 

しかし、ここで友人が、次のような選択肢を与えます。今すぐビールを飲むのであれば、小さなコップ一杯だけ。でも、もし荷物を運ぶのを手伝ってくれたら、ジョッキ1杯に増やしてあげるというのです。ここで、荷物を運ぶのにかかる時間は15分だとします。今すぐ喉を潤したいなら、目の前のコップ一杯のビールに手を出すほうが良いかもしれません。でも、コップ一杯だけでは満足できないだろうから、少し我慢して、ジョッキ一杯飲む方が満足度は高いかもしれません。つまり、目の前のコップ一杯のビールという選択は、自分にすぐに小さな喜びや快楽を与えてくれます。一方で、15分後のジョッキ一杯という選択は、少し後により大きな喜びや快楽を与えてくれます。2つの選択肢を与えられたときに、どちらを選ぶのかが、自分をコントロールする力を表しています。

 

こういった誘惑をコントロールすることは男女問わず、世代や立場関係なく、常日頃から起きていることです。そして、こういった誘惑や困難に打ち勝つことについて、シカゴ大学(当時)のホフマン博士の研究では、205人の大人にポケットベルを1週間持たせ、1日の様々な時間にポケベルを鳴らしました。そして、その前後で何らかの欲求を感じているか、その欲求をコントロールしているかどうかを尋ねました。その結果、研究参加者は、ポケベルが鳴った瞬間、半分で何らかの欲求を感じ、その多くの機会でその欲求を抑え込んでいると報告しました。もっとも多いのは食欲や睡眠欲ですが、それ以外にも、性欲やタバコ、はては、ソーシャルネットワーキングシステム(SNS)での承認すら私たちに快楽を与えてくれるので、その種の欲求もあります。

 

こういった欲求に打ち勝つことができなかったらどうなるでしょうか。人間関係にしても、健康にしても、子育てにしても、想像しただけで恐ろしくなります。健康な社会生活を営む上で、自分をコントロールする力が重要な役割を果たしていることが分かりますと森口氏は言っています。

 

このことは昨今のニュースからも読み取れるように思います。新型コロナウィルスでの「自粛警察」といった様々な問題、世界的なポピュリズム、「あおり運転」など、どうも一度、自分を振り返って、検討するというよりも、衝動的に動くことで起きる問題が最近はよくニュースに上がってきているように思います。現在社会において、この「実行機能」を持つということは社会を形成するうえで非常に重要な意味を物語っているように思います。