共通点と違い
宮口氏は幼稚園や、小学校、中学校と様々なところで学校コンサルテーションや教育相談、発達相談を行っているそうです。そこでは生徒や子どもたちの頭を悩ませる行動の相談も多く寄せられてきます。もちろん、その問題は発達相談から始まり、イジメ、不登校、非行、親の不適切養育と様々です。また、そこで上がってくる子どもたちの特徴や振る舞いは相談ケースとして挙がってくることが多いのですが、よく見てくと、その子どもたちの特徴や振る舞いは非行少年たちの小学校での様子とほぼ一緒だったということが見えてきたそうです。
それまで、宮口氏は少年院に入ってくる少年たちの生活歴は特別にひどいものだと思っていたそうですが、もちろん、親の非虐待や親の刑務所入所などはありますが、それは全員に共通したものではないと言います。むしろ、前記にある子どもの特徴のほうが共通していたのです。では、普通の子どもたちと非行少年たちとの差はどこにあるのでしょうか。
非行少年たちの調書や成育歴を見ていると、大人が頭を抱える共通の特徴は小学校2年生くらいから少しずつ見え始めてくるようになるそうです。その中には知的障害や発達障害といったその子に固有の問題や家庭内での不適切養育や虐待といった環境の問題を背景とした問題がありますが、それとは別に友だちから馬鹿にされ、イジメにあったり、親や先生から「手がかかるどうしようもない子」と思われることで、単に問題児として扱われることもあります。そして、その問題の背景まで気づいてもらえない場合があります。
そういった場合、学校にいる間は大人の目が届きますが、学校を卒業してしまうと支援の枠から外れてしまいます。本人が困っていなければ本人から支援を申し出ることはほとんどないのです。そのため、仕事は続かず、人間関係もうまくいかず、ひきこもったりして社会から忘れ去られていきます。もし、そういった子どもたちが小学校で特別支援教育につながっていたら、少年院に行くことも、被害者を作らなかった可能性もあるのです。
最近、療育の子育てセンターに行くことがありました。そこには多くの療育を必要とする子どもたちが来ていましたが、実際、自分の感覚から言うと「それほど問題を抱えているのだろうか」と思う子どもが多かったです。しかし、実際保育現場においては大変なのでしょう。確かに最近は発達障害にも当たらない、いわゆる「グレー」と言われる子どもたちが多くなっていることに気づきます。集団内において見ることができず、一対一での対応を求める子どもたちが多くなってきています。宮口氏は小学校2年生から現れると言っていますが、逆にこのことが意味していることに疑問を感じます。なぜなら、幼児期においてもここで挙げられていた特徴は見えてくるからです。乳幼児においても、押さえておく必要がある部分は多くあるように思います。