運動とストレスは正反対の作用
ここ数日、性教育の話をしましたが、話を運動脳に戻します。運動がストレス耐性をつけるということはこれまでも話していたことですが、実際、このことを調べた研究がありました。不安による疾患を抱えたアメリカの大学生たちが、くじ引きでウォーキングかランニングのどちらかを選び、それを疲れない程度に週に数回、20分ずつ2週間にわたって続けたそうです。そうするとウォーキングもランニングもどちらのグループも不安感は軽減したのです。その効果は直後から実感し、その後1週間も続いたそうです。また、その効果が高い運度はランニングとウォーキングではランニングの方が不安感の軽減は高いと生徒たちは感じたそうです。この結果は以前にも話した内容ではあるのですが、重要なことはこういった運動習慣によって、体はストレスに対して「慣れ」や「予行練習」になるということです。
不安障害は症状がでると心拍数と血圧が上昇します。何か悪いことが起きるはずだと考え、心臓の鼓動が激しくなるのです。これと同じようなことが運動時に起きます。ランニングやウォーキングを行うことで動悸は激しくなります。結果心拍数や血圧は上がります。しかし、走り終えた後は気分は穏やかになり、脳内でエンドルフィンとドーパミンといわれる物質が放出され快感を覚えます。すると体は「心拍数や血圧があがっても、それは不安やパニックの前触れではなく、よい気分をもたらしてくれるもの」と脳に教え込むことになります。「心拍数があがる=危険」と感じていたものが、そうではない解釈するようになるのです。だから、心拍数が上がりやすいランニングの方が高い効果を感じたのでしょうね。この本ではストレスと運動はほぼ正反対の作用を脳に与えるといっています。ほかのフィンランドの調査でも週二回以上運動をしているひとはストレスや不安とはほぼ無縁であったこともわかったそうで、同じような調査をしたチリでも同様の結果が出たそうです。
絶対的なプログラムはないとはいうものの、筋力トレーニングよりもランニングやスイミングなどの有酸素運動を30~45分。少なくとも20分を続けることが進められ、習慣化し長く続けることで、海馬や前頭葉といった脳内のブレーキペダルの役割をする力が強化されるようです。少なくともこういった運動を週に2、3回は心拍数が大幅に増えるような運動をした方がいいようです。そうすることでストレスを受けて動悸が激しくなっても、脳はそれが恐怖から来るものでなく、プラスの変化をもたらすものと学習するそうです。特に不安障害やパニック発作の症状がある人は効果があることが見られます。
運動をした後の、なんともいえない高揚感であったり、心地良い脱力感は脳内での作用が起こしていたことなのですね。そして、その作用を常態化することで、ストレスが起きたときに備えができるというのはいかに運動が重要な意味を持つかということがわかります。「ストレスと運動はほぼ正反対の作用を脳に与える」現代人は特に運動不足が問題になっています。この現状とうつ病や適応障害などの精神疾患が増えているのはよくよく調べると因果関係があるのかもしれません。
2025年8月21日 4:40 PM | カテゴリー:進化 | 投稿者名:Tomoki Murahashi