子どもの遊びと運動
これまでの「脳と運動のメカニズム」を考えると、自分自身の生活も改められるように思います。確かに何か運動をした時のほうが、運動前と運動後では悩みの深さが変わっているものです。自分自身でもその経験を何度もしてきました。では、子どもたちはどうでしょうか。
ある時、自分の子どもが1歳児だったころの様子を思い出すと、何度も立ち上がっては家の中を歩き回っていました。特に1歳児は歩行が安定してくる時期なだけに、歩きたいという探索活動が非常に活発です。何度こけても立ち上がって遊んでいる姿が印象的でした。ふとその様子を自分に当てはめてみると、子どものように何度も立ち上がって歩く行動を繰り返すことはとてもできません。赤ちゃんが一日に繰り返す立ち上がりの動作は、まるでスクワットのようで、一般的なトレーニングの回数を優に超えているように思います。
赤ちゃんはそれだけ日々の遊びのなかで「運動」を行っていることがわかります。それと同時に、これまで考えてきた「運動と脳」の関係性を踏まえると、ストレス耐性も同時に培われているのかもしれません。よく体を動かす子どもほどストレス耐性がついているのかもしれませんし、逆に落ち着かない環境下にあるがゆえに、よく動いているのかもしれません。そのどちらの要因なのかはわかりませんが、子どもが動き回るという行為にはさまざまな背景が隠れているように思います。
一方で、昨今では日中に遊ぶ場所の問題や、体を動かして遊ぶ機会が減少していることが懸念されます。体を動かす活動や環境を整えることは、子どもの体を作るためだけでなく、心を育てるうえでも必要なことだと思います。
また、それと同時に「運動」という言葉がそもそも何を指すのかを考える必要があります。多くの場合、運動といえばボールなどの器具や遊具を使ったり、「競技」を行ったりすることを指しているのではないでしょうか。では、子どもたちの「遊び」はどうでしょう。幼児教育の現場では「運動遊び」という時間が設けられますが、こういった活動を「運動」として考えたとき、「遊びは運動か?」と問われると、体を使っていることは理解していても、明確に運動時間として捉えにくい面があります。
しかし、普段の生活環境や外での遊びのなかでも、子どもたちは体を使い、間違いなく運動と呼べる活動をしています。遊びの種類によって差はありますが、遊びの中には多くの運動要素が含まれており、体を使って遊ぶことで運動機能は大いに養われます。実際に、過去の研修で「運動教室に通う子どもよりも、外で遊ぶ時間が長い子どものほうが運動機能が高かった」という研究事例を学んだこともあります。運動教室そのものを否定するつもりはありませんが、今一度、子どもたちが自由に遊べる環境や機会を見直すことが、これからさらに大切になっていくのではないでしょうか。
2025年8月18日 2:50 PM | カテゴリー:乳幼児教育, 遊び | 投稿者名:Tomoki Murahashi