赤ちゃんのテレビ視聴

次に小西氏が注目しているのが、子どものテレビ視聴です。日本小児科学会が「乳幼児のテレビ・ビデオの長時間視聴は危険です」といった提言を小西氏がこの本を出した2004年に出しました。そして、この背景には「言葉の遅れや表情が乏しいといって受診した子どもたちの中に、テレビの視聴をやめると改善が見られた」という小児科医や発達の専門家からの提言があったからです。

 

では、この提言の内容はどういったものがあるかというと、①2歳以下の子供には、内容や見方によらず、テレビ・ビデオを長時間見せないようにしましょう。長時間視聴児は言語発達が遅れる危険性が高まります。 ②テレビはつけっぱなしにっせず、見たら消しましょう。 ③乳幼児にテレビ・ビデオを一人で見せないようにしましょう。見せるときは親も一緒に歌ったり、子どもの問いかけに応えることが大切です。 ④授乳中や食事中はテレビをつけないようにしましょう。 ⑤乳幼児にもテレビの適切な使い方を身につけさせましょう。見終わったら消すこと。ビデオは続けて反復視聴しない。 ⑥子ども部屋にはテレビ・ビデオを置かないようにしましょう

 

それぞれの提言はこういったものでした。日本小児科学会の研究では、1歳5か月~1歳7カ月の子ども1900人をテレビ視聴が①4時間未満②4時間以上③家族が八時間未満④家族が八時間以上 の4つのグループに分け、「ブーブ」や「マンマ」などの意味のある言葉(有意語)について調べました。それによると4時間以上テレビを見ている子どもは、4時間未満の子どもより、有意語の発言に1.3倍の遅れがあり、8時間以上テレビがついている家庭では、その遅れが短時間視聴家庭の2倍にも上ることが分かったのです。さらに、テレビを見ながら親が一緒に歌ったり、内容について話し合ったりしなかった場合、親子間の会話をはじめとするコミュニケーションが減少し、言語発達や社会性、運動能力に遅れが見られることも明らかになりました。また、同じ頃、日本小児科医会でも同様の提言を発しています。こちらも基本的に授乳中のテレビやビデオの視聴などについて否定的に書かれています。

 

こういったことを受けて、毎日新聞は4カ月児の母親に対する調査をしています。それによると4カ月児で保護者の目線に視線をそらす子どもは、テレビのついている時間が1日0~3時間で37.5%、4~6時間で65.2%、7~9時間では90%、10時間以上では96.6%でした。そして、4カ月児と10カ月児の母親(840人)のうち、母乳、ミルク、離乳食を与えているときにテレビをつけている人の割合は67%だったと報じています。

 

テレビやビデオ視聴については、よく育児の中で課題として取り上げてられています。しかも、あまりポジティブな内容ではなく、ネガティブな内容です。これはこういった研究を基にして、結論付けられているのでしょう。確かに、テレビ視聴ばかりしていると親子のコミュニケーションは少なくなっていますし、保育の中で見てきた子どもたちの中には、大阪の子どもなのに標準語を話していて、それは「ドラえもん」の影響であったというように、少なからずテレビが子どもの言語発達において、影響がでているのではないかと思う様子を見ることがあります。しかし、こういった提言の中にも問題点があると小西氏は言います。