相手から引き出す

相手から言葉を引き出すことにおいては「あいづち」は非常に重要であると鈴木氏は言います。あいづち一つで相手に対して話したいと思うか、話しにくいと思うかを人は感じるというのです。いくらいい質問で、こちらが意気揚々と答えようとしても、その相槌が「はあ」や「ふ~ん」と答えられるとそれ以上話したくは無くなるのではないかと言います。しらず、こういったあいづちは会話の中で起こっているかもしれません。どれくらい普段からあいづちを打っているか意識してみてほしいと言います。

 

では、あいづちを打つにあたり、どういったことを意識すべきなのでしょうか。鈴木氏は5つの観点を言っています。①あいづちを打つときの声のトーン ②声の大きさ ③顔の表情 ④タイミング ⑤言葉それ自体の選択(うんうん、はいはい、へ~ などなど)

あいづち一つで人はたくさん話してみようと思えば、話す気を無くしてしまうこともあるのです。そのうえ、あいづちはほとんど無意識に打っていることが多くあります。まずは、自分がどんなあいづちを打っているか客観的な情報に触れてみてほしいと言います。たとえば、テープやボイスレコーダーで録音することも一つの方法でしょう。まずは、一度自分を振り返ってみてほしいと言っています。

 

確かに、あいづちというのは相手をその気にもさせれば、話す気も失わせるなと思います。時に沈黙という選択肢もあいづちに入るのだろうと思います。そして、あいづちは相手に主導権があることの表明でもあります。こういったやりとりは相手に対する礼儀でもあるのでしょうね。

 

また、人から信頼されるには相手に自分の気持ちを伝えるというのも大切なキーワードになると鈴木氏は言っています。鈴木氏は上司は、自分の部下にドンドン自分の気持ちを伝えたほうがいいと言っています。それは「人が人に対して防衛を解くのは、何よりも相手の気持ちに触れたとき」だからだと言っています。

 

アメリカの弁護士 ゲーリー・スペンスは「議論に負けない法」の中で、何百という依頼人の弁護に立ち、一度も負けたこともない弁護士はどんな人なのだろうと見られた時、「毎回毎回、逃げ出したくなるような不安な気持ちを、正直に彼らに伝えるだけ」と言ったそうです。そうすることで自分は信頼を獲得するのだと。ある外資系コンサルティング会社のコンサルタントに鈴木氏がコーチングを教えていた時に、TさんとSさんという二人のコーチング風景を見て、Tさんの方が、相手からたくさんのことを答えていたそうです。TさんがSさんと著しく違ったのは、Tさんは相手が何か言うたびに、「それに対する自分の気持ちを挟み込んでいた」のです。「いいですねぇ、僕まで嬉しくなりますよ」とか「そんなことあるんですか、驚いちゃうな」といったようにです。

 

人の話を聞くときに、自分の内側に意識を向けてみてください。と鈴木氏は言います。そこになんらかの「反応」を見つけたら、それを言葉にして相手に伝えてみてほしいというのです。そうすることで予想以上に相手は乗って話をしてくれるというのです。

 

私は相手の話を聞くのがあまり得意ではなく、話したくなる方なので、こういったことは非常に参考になります。つい、相手の是非を判断してしまうのですが、そうではなく、こちらの感情を話していく方が、相手に考えさせる「遊び」ができるのでしょうね。こういった会話の中にある「遊び」を大切にすることは非常に重要な気がします。