ストレスを抱える怖さ

運動はよくストレス解消になると言われています。このことは実際に証明されているそうで、そもそもストレスは人間にとってどういったメカニズムで起きるのかというと、まず人には「HPA軸(視床下部・下垂体・副腎軸)」とよばれるシステムが備わっています。これは脳の深部にある視床下部から始まっています。脳は何らかの脅威を感じると扁桃体反応し危険を脳に知らせます。そこから視床下部(H)がホルモンを放出して下垂体(P)を刺激します。そうすると下垂体が別のホルモンを放出し、血流に乗って副腎(A)を刺激します。そこから副腎は「コルチゾール」というストレスホルモンを放出するために、動悸などの症状が出てくるのです。

 

コルチゾールが血中で濃度が上がってくると脳も身体も危機から脱出するために厳戒態勢になります。自分の命を守るために、闘争や逃走の準備のために筋肉に血液が必要になります。そのため、心拍数があがるため、動悸などが起こるのです。緊張して動悸が起きたり、手に汗をかく体の反応が起こるのはこのコルチゾールのせいです。ただ、この緊張からくるストレスはなにも悪い反応だけではありません。それはよくいう「良い緊張状態」です。その状態は神経を研ぎ澄ませ、集中力を高まる状態が起きます。しかし、この緊張状態から来るストレスは過剰になると集中力は高まるどころか、思考が混乱し、自制心は失われ、押し潰されそうな苦しみに見舞われます。その場合、HPA軸は制御不能の状態になるにひとしくなります。

 

人がストレスを感じる一方、このストレスを緩和する脳の部位が「海馬」です。この部位は先ほど話したストレス反応を緩和して、興奮やパニック発作を防ぐブレーキの役割をします。よく海馬は記憶の中枢と言われますが、それ以外にもこういった感情の暴走をとめる機能も持ち合わしているのです。ストレスを発する扁桃体と海馬は常にバランスをとりながら働いています。

 

ストレスは本来脅威から身を守るために起きる体の警戒反応です。しかし、実はこのコルチゾールというホルモン、脅威が去るとすぐに分泌量は下がります。脅威があった場合、人間はその脅威と立ち向かうためにエネルギーが必要となります。そのためにコルチゾールが分泌されるのですが、その状態が長時間になると、危険です。なぜならば、海馬の細胞は過度のコルチゾールにさらされると死んでしまうそうです。慢性的にコルチゾールが分泌される状態、つまり、常にストレスがかかる状態になるとストレス耐性の役割を担う海馬は萎縮してしまうのです。しかも、海馬は記憶を司る部位でもあるため、ストレスがかかり続けることは記憶にも影響が出ることになります。重いストレスが長期間続くと、言葉が出てこなかったり、場所の認識ができなくなったり、空間認知にも影響を及ぼし、自分の居場所や方向もわからなくなる可能性が出てくるそうです。これがストレスを抱える怖さです。

 

また、以前話していた「スマホ認知症」ですが、スマホを見るということは脳にストレスをずっと与えている事に近い状態です。長時間スマホを見ることは長時間ストレスにさらされていることに近い状態のために、認知症のような症状になってしまうのでしょうね。思えば、症状は似ています。また、デジタルデトックスをすると元に戻るというのはコルチゾールと海馬とのバランスが元にもどるということ、コルチゾールは脅威が去るとすぐに分泌量が下がるということともストレスを受けるメカニズムを見るとわかります。