多様性と偏見

話をさえぎってしまうというのはどうも、相手の話を聞いていない人の癖でもあるのかもしれません。こういった場合、もっともよく相手の話を聞いている人の話すことと聞くことのバランスは「1:2」がベストであるそうです。そして、それと同時に、「質問する」ということも一つの聞くことのテクニックであるとクリスティーン氏は言っています。

 

つまり、どうしても自分が話したくなってしまう人、他人の話に割り込みたい衝動といつも闘っている人は、逆に「あなたはどう思いますか?」と質問するほうが良いというのです。そうすることで、なかなか自分からは口を開くことのない人が話をしてくれるというのです。自分が話すのではなく、謙虚な態度で他人に質問をすることが大切なのです。このように、「笑顔」「相手の存在を認める」「相手の話を聞く」ということが、礼節ある行動につながるといい、こういった態度が相手にとって温かい人といった印象を与え、そのうえで有能さが見えてくるのです。

 

これら三つの心がけは、人との関わりの中で必要なことであるということは疑いようがありません。また、こういったコミュニケーションの取り組みはこれからの社会においても重要な力です。様々な国や地域の人と関わることが求められる時代です。意見や感覚などは今以上に多種多様な時代になってくることだと思います。そんな時代に変化していく中で、多様な気質を持った人をつなげ、お互いが認め合うような集団を作っていかなければいけません。

 

クリスティーン氏は多様性について「ただ多様性があるだけでは期待するような利益は得られない。多様性が真に価値を持つかどうかは、企業の文化や、その構成員の態度によってきまる」と言っています。当然、ただ多様な人材があったとしても、それぞれが自分に自信がなく、価値があると思えなければ、あまり力を発揮することはできません。そういった人材が力を発揮するためには自分が尊重されていると感じれなければいけないのです。そこで重要になるのが礼節であり、礼儀の正しさだとクリスティーン氏は言っています。つまり、相手を打いけ入れ、無意識の偏見や、その偏見による態度、行動をでないようにすることです。しかし、それは困難なことだということが言われています。

 

なぜ人は偏見を持ってしまうのでしょうか。どうして、その偏見を崩すことができないのでしょうか。そこで重要になるのが「認知的過負荷」だとクリスティーン氏は言っています。人間の脳には絶えず大量の情報が入ってきています。しかし、その情報のほとんどは処理されていません。そのため、取り入れた情報のほとんどは無意識のうちに処理されるのです。無意識の情報の処理はよく「ショートカット」されます。ショートカットの際に頼るのが「ステレオタイプ」です。つまり、先入観や固定概念といった、一つのフォーマットを作ることです。こういった概念を作ることで、さほど重要でない情報や、初めから正しいはずのない考えを除去することができ、限られた情報をもとに短時間で判断を下すことができるのです。しかし、この固定概念や先入観のせいで間違いをしてしまう恐れもあるのです。