「ほめる」とは

「はなす技術」を持つ人は相手に期待するのではなく、「期待を示す」ことで相手を主体的にすることができると言います。そして、相手との距離が離れてもポテンシャルを出せるようなポジティブな環境を作ることができるというのですが、そのためには相手との関係性が良好でなければいけません。では、そのように相手と良い関係性を築き、期待を示すことができるようにするにはどうしたらいいのでしょうか。それは「ほめること」が重要だと言います。

 

しかし、ここで間違ってはいけないのは「ほめる」のであって「おだてる」ということではないというのです。「ほめる」という行為は事実に対し好意をもって伝えることだと言います。それに対し、事実でないことを伝えた場合「おだてる」や「お世辞」になります。あくまで、好意をもって事実を伝えることが「ほめる」ことです。そこには下心は不要なのです。下心をもってほめたところで、それはすぐに分かってしまうと武神氏は言います。

 

ほめる技術として大切なのは「すぐほめる」ということが重要だと言います。このことは私も聞いたことがあります。人は行ったことに対して、「60秒以内にほめたほうが実感として受けやすいそうです」確かに、一年前のことをほめられても、遠い昔のことでピンとこなく、その場でほめられた方が実感としても感じやすいものになります。また、もう一つ大切なことは「具体的にほめる」ことだと言います。いつも「ありがとう」「すごい」「すばらしい」ばかりではどのことについて言っているのかわからないのです。「○○してくれたのがよかった」「○○をしてくれてうれしかった」と具体的な事柄をはっきりとすることが重要なのです。それができると、いろいろな言葉でほめるというポイントも押さえられます。具体的な事実を好意としてすぐに伝えるという「ほめる技術」が結局のところ相手との間にいい関係性を築き、示した期待に応えようという相手の態度につながってくるのです。

 

保育の中でもこの「ほめる」ということが取り上げられることが多いです。そして、「ほめる」ということと「おだてる」ということの境目で悩む人も多くいます。「ただ、ほめればいい」それだけで子どもは伸びる。ということを繰り返しているうちに、わがままになったり、「王様化」してしまうということもあります。これに対して、「ほめる」ということが「事実を好意を持って伝える」ということに変えて考えてみると、その主体は「ほめる側」ではなく、その良し悪しを考えるのは「ほめられる側」といったように主体が変わってきます。要は物事の主体を他責から自責に変えることが重要であり、自分の行動や責任をしっかりと自分自身で把握するという行為が今の時代必要なのだろうと思います。そして、もしかすると乳幼児期からこういった経験が今の人は少ないのにも原因があるのかもしれません。特にこういったメンタルヘルスが原因の問題はより教育や保育に大きく関わる内容でもあるように思います。

 

つぎに武神氏は「ほめるところがない」という管理職に対して、ほめるテクニックを紹介しています。