食育(平成19年度1月)平成20年1月
新年あけましておめでとうございます。皆さん、それぞれに色々な想いを持って新しい年をお迎えになられた事でしょう。昨年を振り返り、また新しい年に夢と希望をもって決意新たに過ごしていきたいものです。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、我が家は必ず家族みんなが揃って元旦の朝を迎えます。神棚にみんなで手を合わせ家内安全と家族の健康をお願いし、お神酒をいただきながらおせちとお雑煮を食べます。日頃毎日忙しくて、家族全員が集まる事がなかなかないので、子供達はこの日をとても楽しみにしています。本当にのんびりとくつろげるのは、一年を通してもこの日ぐらいかもしれません。おせち料理を食べながら、それぞれの料理の意味を子供達に教えてやります。黒豆は“まめ(元気)に暮らせますように…”数の子は“子孫繁栄を願って…”煮しめの中の蓮根は、穴があいている事から“先の見通しのよい一年が過ごせますように…”等々おじいちゃんの知識に助けられながらではありますが、子供達は熱心に聞いてくれます。毎年同じ話をしているのに、子供達も成長と共に感じ方が変わってくるのでしょう。料理にそんな願いや意味があるという事にも驚きでしょうし、今も昔も変わらず込められている、料理を作る人の家族の幸せを願う気持ちの大切さやありがたみも子供なりに感じているようです。毎年おせち料理は、二人の娘達にも手伝ってもらい、三人でバタバタしながら作ります。子供達も大きくなってきたので、結構助かるようになりました。
先月の初めに年長組の子供達は、三次市が企画している食育推進プロジェクトの一つである食育講座の料理作りを体験しました。味噌汁を作ったのですが、作る前に味噌汁の具になる食材について、どんな栄養があるのか、その栄養は身体にどんな意味を持つのかを話していただきました。毎日何気なく食べていた物が自分の身体でどんな仕事をしてくれているのかを教わりました。サツマイモには身体を温めてくれる力がある事、だしをとるいりこを食べると、骨をつくってくれたり、強くしてくれたりするという事。同時に、私達は食物や動物や魚の命をいただいて命をつないでいる、だから私たちは、粗末な食べ方をしないで、ありがたい気持をもってきれいに食べてあげなくてはいけないのだという意識も持たせていただきました。食べ物に関心を持つ事が、子供の食べる意識や意欲を育てるのです。子供達は一人ひとり包丁を持たせてもらい、サツマイモ、ニンジン、ネギを切りました。シメジを丁寧に手で割きました。お団子を丸めて静かにお汁の中に入れました。おいしく出来上がるまでの時間が待ち遠しかったり、手間と時間をかける過程で、食べる人へのどんな想いが込められているかを実感したと思います。包丁の使い方から、いつもお母さんと一緒にお料理を作っているのかな?と伺える子もたくさんいました。ご馳走をつくってくれるママの隣でじっとママの手先を見つめたり、料理が出来上がるいい香りの中で、幼稚園であった出来事を話したりしているのかな?等と、その様子を勝手に想像して微笑ましく思えました。
料理上手の理事長先生が、遅くまで残って仕事をしている先生達によくご馳走を作ってくださいます。“ご苦労様”の気持ちと“頑張っている先生達に食べさせてやりたい”という優しい気持ちが伝わってきます。その時いつもおっしゃる事は、「愛情がこもっていれば何でもおいしくなるんだ。」──本当にそうだろうと思います。皆さんもお料理しながら(子供達がどんな顔をして食べてくれるかな?)とか(これを食べて元気にしてやりたい。)(パパは「おいしいよ。」って言ってくれるかしら?)等と想いをはせておられる事でしょう。また、食べながら(一生懸命、私のために作ってくれたんだろうなぁ。)とそれを感じてくれたら…作る方も食べる方も心通わせてさらにおいしくいただけるにちがいありません。
今『食育』は、よく耳にする言葉ですが、色々な意味があると思います。生きとし生けるものは皆何かを食して生きています。食べるという事は当たり前過ぎて振り向く事を忘れられがちでしたが、実はこうして考えると『食する事』を通して、単に身体がつくられるというだけでなく心と心の結びつきや命の営みへの関心までも育てられる大切な教育なのです。料理を囲む事によって、家族の時間を生んだり、あるいは取り戻したりできるような気もします。そして、親子で台所に立ち、知らず知らずのうちに料理を覚え、母の味父の味を伝えるのもすばらしい『食育』の一つだと思います。
今年のお正月は、おせち料理を囲んでどのような話題に花が咲きましたか?『食』を通して家族で話をし、『食』に興味を持たせてやってください。今や子供達の中には、朝ごはんを食べずに学校へ行く子もいて、勉強にも集中できず、お昼まで気力も体力ももたないそうです。食育を受けるのは子供達だけでなく、大人達ももっと『食』に関心をもたなくてはいけないのかもしれません。食べる事が大好きなこの幼児期にこそ、親子で食育を意識し、食べる事をもっともっと好きにさせ、『食』によって心と身体は成長していっているのだという事を感じさせてやりましょう。
2008年1月8日 10:56 AM | カテゴリー:葉子先生の部屋 | 投稿者名:ad-mcolumn