遊びの天才は、片づけの天才!(平成24年度7月)

6月になり、衣替えと同時にプールあそびが始まりました。いよいよ夏到来です!天気の良い日は朝から外あそびが盛んで、保育室の中には、ほとんど子供がいません。靴を濡らしながら小川のアメンボを捕まえようとする子、さっき着替えたばかりの体操服や手足を泥だらけにしながら泥だんごを作っている子、汗をいっぱいかきながらサッカーをして遊ぶ子等、春の頃の子供達のあそび方やその様子とは随分違ってダイナミックに遊べるようになってきたのがよくわかります。子供同士の繋がりが深まってきたせいでしょうが、やはり夏は子供達にとって魅力あふれるあそびが思いっきりできる季節だからでしょう。水・土・空・生きもの……これらの全てが、子供達のあそびの味方になってくれます。そして、開放感を味わい心を解きほぐします。思いっきり遊ぶので、帰りの園バスの中やお家の方のお迎えを待つ保育室では、コックンコックンと眠ってしまう子が増えるのもこの頃です。いっぱい遊んでいっぱい笑って……そして居眠りしている子供達の姿がとても無邪気で可愛いです。

プールも天気の良い日は毎日入ります。それまでは静かに控えていたプールが一気に夏の主役に躍り出た感じです。水着の入ったプール袋を持って来た子は、得意そうに、「今日はプールに入れるんだよ!」と見せてくれます。しかし、その日体調が悪い子達は、水着も持って来ないので、プールには入りません。ですが、その子達もプールの時間は園庭でたっぷり遊びます。担任の先生は、プールあそびに行きますが、そんな子供達は他の先生や友達と遊びます。それはそれで楽しそうです。私もその子達と遊ぶ事があります。

年長組のプールあそびの時の事です。何人かが集まって、砂場で何やら必死に穴を掘ったり、水を入れたりしていました。「何をしているの?」と聞くと「温泉を造ってるんだ!」と言いました。「葉子先生もしていいよ。」と誘ってくれたので、一緒に遊ぶ事にしました。どうやら、山のてっぺんから温泉が湧き出て、山の尾根を流れ下の大きな池の中に熱い湯が溜まるという設定らしく、山を作る子と穴を掘る子とに分かれていました。その中には、現場監督らしき子もいて、「おーい!水が足りない!汲んできて!」「そこじゃあないよ!ここに水を流して!」と指示を出します。「じゃあ、俺は、こっちをするよ」「もっと深く掘ろうや」「しっかり固めないと!」とスコップやバケツを持って、それはそれは、工事現場さながらの様子でした。その威勢の良さと子供達の目の輝きに誘われるように、私も毎日砂場で遊びました。しかし、砂場は、その子達だけが遊んでいるわけではないので、いい感じに出来て来ても、次の日に行ってみると壊れている事もあるのです。それを修理(?)しながら、毎日その温泉づくりは続きました。掘っていく内には、埋まっていた砂場の道具が出てきたり、頭上の藤棚の葉っぱや枝が埋まっていて、それを見つけるたびに「あっ!!宝が出てきたぞ~」と盛り上がります。

そんな様子を見ていくうちに、自然に、子供達の中で役割分担ができているのに気がつきました。“山造りチーム”の中でも、現場監督さんをはじめ、砂を高く盛りあげていく子・スコップの背で叩いて固める子・尾根を作る子…がいました、“温泉造りチーム”の中では穴を掘る子・その穴の壁を固める子・さら粉を集めて山や池にまぶす子・水を運ぶ子…等、いろいろな係ができていました。山の尾根から流れる水が温泉の穴まで、勢いよく流れないと、「もっとこの道のこっち側を深くしないと流れないよ。」と気づき、傾斜を作りました。山が崩れないようにとさら粉を砂山にまぶし、しっかり固め、その上に水をかけてまたさら粉をまぶす…これを繰り返したら山がカチンカチンに固まる事に気づきました。子供達はいろいろな発見をしながら遊んでいます。どうしたらもっと楽しくなるか、こうしたらいいかな?これではどうだろう…と。子供達が「いいこと考えた!」と言う度に「それは、いい考えだ!天才だね。」と共感してやりました。子供達は「天才」という言葉に弱いようで、認めてもらうと益々がんばろうかなと思います。こんなやり取りが子供達をたくましく粘りのある子供に育てると思います。

そして片づけの時間になった時です。「よし!お片づけをするぞ~!」と現場監督さんが声をかけると、他の子供達は作業をやめて、砂場の道具を片づけ始めました。それから「明日もこれ使うから一番上に片づける方がいいぞ。」とか、「こっちに山を作る人の道具で、反対側は温泉を作る人の道具…、っていうのはどう?」という声があがりました。私は、思わず「あそびの天才は片づけの天才!」と言いました。“明日また遊ぶため”の“今日の片づけ”をしていたのです。いかに効率よく温泉造りができるか、そのためには、片づけでさえ工夫が必要だという事を感じたのでしょう。すごい!!と思いました。あそびに集中していると、先を見通してまで考えることができるのかと感心しました。そして、その片づけでさえ楽しげなのです。その次の日もまた温泉造りをしていました。前の日に遊びやすく片づけていたので、すぐに温泉造りにとりかかる事ができたでしょう。あそびや生活を工夫することは、遊びやすく生活しやすくするという事なのです。それを考える事だって子供にとっては『あそび』なのです。

『あそびの天才は、片づけの天才』──子供達の頭と心はいつも働いています。