成長の歓び(平成10年度)平成11年3月

3月を迎え、今更ながら、月日の経過する早さを感じていますが、本年度最後の月を迎えました。この時期になると、進級入学するという区切りの中で子供たちはそれぞれに、自分の成長の歓びを持ってくるようになります。


うめ組子供たちはもも組になれる歓び、もも組の子供たちは、あこがれのさくら組になれるという歓びをだんだと大きなものとしていきます。そして、さくら組の子供たちは、いよいよ、幼稚園を卒園して、小学校に入学します。小学校に入学する期待と歓びも大きなものがあると思います。


お母さんお父さんにもしっかりと記憶にあると思いますが、わが子が生まれたときの感動から始まり、始めて寝返りしたときやハイハイをしたとき、始めて歩いたとき等々、その時その時のわが子の成長を大きな感動で受け止めてこられたことと思います。
私たち大人は、そのように、子供の成長ぶりを素直に歓びます。そして、子供たちは、お母さんやお父さん、周りの人たちが自分の成長を歓んでくれている心地良さを感じ、そのことが、その子の成長に大きな力を与えてくれます。わが子の成長ぶりを素直に歓び、その歓びをそのまま子供に伝えてやってください。


以前にもお話ししたと思いますが、他の子と比較してしまうと、素直に歓ぶことができなくなります。「誰々ちゃんはもうこんな事ができるのに、あなたはまだこれだけしかできない」と思ってしまうと、素直に歓ぶ事ができませんから、わが子の成長の歓ぶを感じている親の気持ちは、子供には伝わりません。子供自身の意欲も失われます。人間、一人ひとり皆違います。違うからこそすばらしいので、その子の個性であり特性なのです。特に、幼児期はその子の興味を示す対象や方向の違い、生まれ月の差が大きいのですから、発達の差は当然大きいのです。そのことが、その子の発達の遅れではないことを、しっかりと認識しておかなければなりません。その子自身の、一歩一歩の成長に対して、しっかりと歓びを感じることができるということができるということが大切なのです。


話が変わり、私自身のことで申し訳有りませんが、この3月23日に大学院を修了します。この2年間、保護者の皆様には深いご理解とご支援を賜りましたことを厚くお礼申し上げます。
大学院での研究は、「幼児の自発活動を促す動機づけに関する研究-造形的な遊びを中心として-」というテ-マで進めてまいりました。一口で言えば、学校教育の目的でもある、「生涯にわたる健全な発達や社会の変化に主体的に対応する能力の育成」のために、幼児の自発活動としての造形的な遊びを中心として、主体的生活基盤の構築を図る実践研究の追求を研究の目的として、論文にまとめました。


先日、論文審査と口述諮問、論文発表と全てが終わり、まもなく幼稚園に帰ります。
この歳になって、学生生活を送ることなど夢にも思っていませんでしたが、しっかりと勉強できた歓びを実感しながら、もう10年早く入学していればもっと良かったのにと思いながら過ごしていました。
そんな時、先日の新聞で、東大阪市の浮世絵師・歌川豊国さんとという人が、なんと96歳で近畿大学法学部法律学科に合格したということが報じられていました。卒業される時には、ちょうど100歳になられます。これから大学で4年間勉強して、博士号も取りたいというコメントも載っていました。しかも、平成8年4月に高校に入学して、この3月に卒業予定の、高校3年生だそうです。歌川さんは江戸時代後期に美人画で一世を風靡(ふうび)した歌川豊国の6代目の家元で、ご子息に7代目を譲ってからの勉強だそうです。


この記事を見た時、10年早ければと思っていたことが、一度に吹っ飛んでしまいました。私には、その歳になるまで、まだ40年も有るのではないかと思った途端、将来に何かの光を感じることができたのです。
何時までも将来に夢を持って過ごすことがいかに大切なことを、歌川国男さんの記事を見て、あらためて感じることができました。


この研究を通して、中央幼稚園の保育実践をあらためて見直し、今後の幼稚園の教育に生かして、子供たちの成長の礎にしたいと思っています。
園長の留守の間、PTA役員の方々を始め保護者の皆様方には、幼稚園の運営につきましていろいろな面で支えていただきましたことを心より感謝申し上げます。
特に、さくら組の子供たちは、間もなく卒園です。4月には小学校に入学です。
その歓びを共に味わいたいと思います。