新年度が始まって4カ月、新型コロナウイルス感染拡大防止のための自粛期間や休園期間があり、みんな不安な4カ月だったかもしれません。しかし、その期間を経ての今の子供達に目を向けると、それぞれに皆自分を発揮して生き生きと園生活を楽しんでいる姿が頼もしくもあり可愛くもあります。今年度は、夏休みを短縮し8月7日に1学期の終業式を行います。“この1学期間、みんな元気でいてくれて良かった”と思う気持ちでいっぱいです。
さて、この1学期間、私は毎日中門で登降園する子供達を迎えています。「えんちょうせんせい!おはようございます!」「さようなら!またあしたもくるよ!」という元気な声に私の方が元気パワーをもらっています。でも、みんながみんなそんな調子で登園してくるかと言えば、そうではありません。通常保育になってからそうは言ってもまだ2カ月しかたっていないのですから、新年度の波にすぐに乗れた子もいればまだ乗り切れていない子がいても当たり前だと思っています。そんな中、毎日絶対にお母さんと一緒でないと保育室に向かえない年少組のある男の子がいました。しかも、制服のボタンが難しいからといつも体操服での登園でした。その子は満3歳児クラスから幼稚園に通っています。去年1年間もお母さんと一緒に保育室まで行っていました。年少組さんになったので、そろそろ頑張ってくれるかな?と思い、時々「今日は、園長先生が一緒に行ってあげよう!」と言って誘っていましたが、「お母さんと一緒がいい」とお母さんの手を離しません。でも保育室に一旦入れば、友達とも遊べて楽しく過ごせているのです。
そんなある日、私はその子のクラスで昼食を食べました。その男の子と一緒のテーブルに座り、様子を伺いながら少し話しかけてみました。「○○君は、いつも、きれいにお弁当を食べるんだね。えらいな~。だって、さつき組(満3歳児)さんで、いろんな事ができるようになってググ~ンとお兄ちゃんになったんだもんね。」と言うと「うん。」とゆっくりうなずいてくれました。私の話を聞いてくれそうだったので、その子にだけ聞こえるような小さな声で「アッ!そうそう!○○君、制服のボタンがちょっとだけ難しい?」と聞くと「うん。」と周りを気にしながら答えてくれました。「そうよね。ちょっと穴からボタンを引っ張るのって難しいんだよね~。でもね、できなかったら、先生か誰かに“してください”って言ったらいいよ。園長先生だって手伝ってあげるから、どうってことないよ。平気!平気!」と言いました。「うん。」と言ってくれました。その時の顔には、ちょっと彼なりの決心がみえたような気がしました。そして、次の日、私はその子がやって来るのを楽しみに中門に立っていました。すると、車から降りて来る彼は制服を着ていたのです。「今日は自分で頑張って制服を着て来ました!」と言うお母さんの嬉しそうな声と少しはにかむ彼の得意気な顔が印象的でした。
同じように、一人で中門から入っていけない子供がいれば、様子を見て先生達は今のその子に合った言葉で声かけをします。また、トイレに行けない子にも、友達と上手く関係づくりができない子にも、いたずらが過ぎて注意が必要な子にも、どんな時でも先生達はタイミングと言葉や言い方や表情を考えてアプローチします。“その子に合った”という事が大切です。この子にはこのぐらい…この子ならこんなふうに…この子にはあの子よりもう少したくさんの……と、考えます。先生達のその技(?)にいつも「さすが!凄い!」と思わされます。これはまさに『さじ加減』なのです。料理をする時、ベテラン母さん(父さん)になると、味つけにいちいち計量カップやスプーンで調味料を計らないのではないですか?思う味になるように、経験で量を加減されると思います。このさじ加減を誤ると、濃い過ぎたり薄過ぎたり…悩めば悩むほどとんでもない味になったりします。先生達は、集団の中にいる子供達の事を一番よく知っている人で、巧みな『さじ加減』で子供達に成功体験をさせる事により自信を高めそれからの様々な結果に繋がるように導きます。この時もさじ加減やタイミングを間違えると、その子のプレッシャーになったり逆に自信を失わせたりしてしまう事もあります。だから、「どうってことない、平気平気」と簡単そうに言った言葉であっても、実は慎重に考えての『さじ加減』なのです。簡単そうに言ってあげる事で、“本当は制服を着て自分で荷物を持ってひとりで歩いてお部屋に行ってみたい”というその子の中に潜んでいる“意欲”を楽な気持ちにして引き出してあげるのです。
兄弟姉妹で性質が違っていたら、同じ事をしてもその叱り方や導き方を変えている事がありませんか?辛めにしたり甘めに言ったりまたほんの少し薄めたり違う薬味を入れてみたり……『さじ加減』です。その子達それぞれに親が願い求める方向は同じでも、そこに行きつくまでの方法にはこの『さじ加減』が必要だと思います。誰彼無しに同じように言って同じ結果が出るわけではないのです。そのためには、一人ひとりの事を良く知り、よく観てよく理解をしている事が大切です。この1学期を通して、自分が自分らしく発揮できる園生活を送ることにより、先生と子供達一人ひとりの関係が築かれて来ています。そこには、先生達の巧みな『さじ加減』があるのです。
今年は短い夏休みですが、それでもお子さんと一緒に過ごす時間は普段より多くなるでしょう。無意識に『さじ加減』──されているはずです。その『さじ加減』……丁度良いかな?
2020年7月1日 1:47 PM |
カテゴリー:葉子えんちょうせんせいの部屋 |
投稿者名:ad-mcolumn
「新しい生活様式」を日常にどう取り入れるかを模索しながら世の中がこれまでと違う覚悟をもって動き始めたような気がします。そんな中、幼稚園もこの6月から通常保育を再開し賑わいが戻ってきました。私達職員も、梅雨入りとほぼ同時にエンジンフル回転になり汗だくの日々ですが、こんな毎日に充実感を感じています。これまで自粛生活をしていたのですから、「遊んでおいで~!」と幼稚園に送り出してもらった子供達の気持ちはウキウキです。クタクタになるほど遊ぶ姿が見られます。この時期ならではのあそびに夢中で、一日中外でプレイパンツとプレイTシャツで遊んでいます。そんな生き生きとした子供達の様子を紹介しましょう。
先日、ある年中組の男の子が、中門の外灯の壁にとまっているたくさんの虫をみつけて、不思議そうに眺めていました。そして、「ここにはすごくたくさんの虫がいるね。この虫、ぼくんちのでんき(電灯)の所にもたくさんいるよ。」「明るい所に夜集まって来るんだよ。夜はここが一番明るいんだろうね。」と、うんちく(笑)を言っていました。その子は今でも毎朝その場所に立ち止まり、虫の様子を観察しています。
また、今年度は、園庭に“畑”を作り、たくさんの野菜を育てています。キュウリ・ナス・トマト・ピーマン・枝豆・ニンジン・ラディッシュ……。年長組の子供達は、バケツ田植えに挑戦し、お米を育てています。全ての花壇にサツマイモを植えてみました。思いの外、野菜の生長は早くて、すでにキュウリが収穫できました。可愛いナスも実になっています。いろいろな野菜が花をつけ野菜らしくなり、バケツの中でお米の苗がグングン伸びています。子供達は「ホントだ!ナスだ!」と不思議そうにのぞき込んでいます。野菜や作物がどのように生長するのかを目の当たりにし楽しんでいます。ある日、先生が「園長先生!みてください!」と笑いながら年少組のある男の子の長靴を持って来ました。その小さな長靴の中をみてみると…、両足の底に枝豆のさやが一つずつ入れてあったのです。枝豆になった事が不思議で、思わず採ってみつからないようにこっそり長靴の中に入れたのでしょう。その可愛い憎めない悪事に笑ってしまいました。
ユズの木やブドウの木にも実が付き始めました。子供達が「先生!みて!」と手に握って見せてくれたのは、まだ緑色で硬い実でした。「いい匂いがするよ。」と潰していた子もいました。でも、先生達は叱りません。木に成っている実が不思議で自分のものにしたい!と思う気持ちが理解できるからです。「もう少ししたら、もっとおいしい綺麗な色の実になるから採らないで観ていようよ。それまで待っていよう。」と、先生達は興味を膨らませるように子供達に話をします。
ある年長組の男の子が、一人黙々と泥んこあそびをしていました。ホースから水を出し、ドロドロ状態にして固めて遊んでいました。水を出しながら両手で固めたいのですが、ホースの先が動いて水が思う所に行きません。何やら苦労してるぞと私は離れた所から見ていました。すると、裸足の指の間にホースの先を挟んで固定し両手で水を受け固めていました。なるほど…と感心するやら可愛いやらで吹き出してしまいました。
小川から、急に大きな泣き声が聞こえました。驚いて振り向くと年中組の男の子が私の所に走り寄って来て足の甲をみせ、「石が落ちて当たったぁ~。」と言うのです。赤くなっていたので、「どうなったの?教えて。」と聞くとどうやら、小川に入っていて手が滑って持ち上げた石が落ちて来たようでした。石を寄せて鯉を捕らえようとしていたそうです。(鯉には気の毒ですが)よく考えたものだとこれまた感心…と同時に、足の怪我を心配していたら「失敗したぁ~。もう、石を落とさない!そっと置く!」と泣きながら反省の弁を述べていました。あえて言わなくても、子供なりにどうしてこんな事になったか、どうしたら良かったのかがわかったのです。
こんなふうに、みんないろいろな事を経験しながら学んでいます。虫を捕まえたり、野菜の生長を観たり、採ってみたり、身体全部を使って工夫しながら遊んだり、痛い思いをしたり、(ちょっとくらい)されたりしながら、今よりもっと人間らしくなっていきます。子供達は、いつも今を生きています。とっさには先を見通したり、後を振り返ったりできないのです。“今”を楽しみ、その瞬間の欲求を満たしたいと行動に出ます。それが子供です。体験してみて実感して初めて本当に学ぶのです。「アッ!そうだった!」「こうなるんだな。不思議だな。凄いな。」「失敗!失敗!次はこうしよう。」と、経験した後で先が見通せるようになったり、振り返って考え直せるようになったりします。友達と、喧嘩をしながら…意見を戦わせながら、人の気持ちに気づいたり、自分とは違う考えをもった人の存在を知り、上手くやっていく方法や加減を学びます。小さな子供の社会をつくるコツを学び、大人になる準備をするのです。
幼稚園教育の目的は「生きる力」をつける事ですが、先ずは、幼稚園が、「“生きる”という事を学ぶ場所」「生きる事は楽しい!という気持ちを育む場所」でないといけないと思っています。幼稚園!ここは、子供達のやりたい事が存分にできる場所です。泥んこで帰ったり、あちこち擦りむいて帰ったりしても、喧嘩したと言ってしょげて帰っても、「今日は行きたくない!」と言う日があっても、そんな全てが子供達の心をときめかせる大切な経験です。「いいぞ!いいぞ!もっと学んでおいで」と見守っていてあげてください。
可愛い、ヒツジの“くりーむちゃん”とヤギの“きなこちゃん”も幼稚園に仲間入りしました。この子達を、子供達と一緒に可愛がりながら「命をもって生きていく楽しさ」を実感できたらと思っています。
2020年6月30日 1:30 PM |
カテゴリー:葉子えんちょうせんせいの部屋 |
投稿者名:ad-mcolumn
天気予報で、“夏日”“梅雨入り”という言葉を耳にする季節になりました。幼稚園では、新年度を迎えてすぐに新型コロナウイルス感染拡大防止のため、自粛期間に続いて5月の1カ月間は休園とさせていただいています。子供達に会えない内に季節がゆっくり移り変わっています。この期間に、生活を見直すきっかけとして色々な事を考えさせられました。新型コロナウイルスについては勿論ですが、私が興味深く想いを馳せたのは、“多くの人に想いや考えを伝える時、どのような言葉でどのような気持ちであるべきか…”という事を考えさせられた様々なニュースでした。
ベルギーの女性首相であるウィルメス氏が、子供番組で新型コロナウイルスについての子供達からの質問に答え、その恐ろしさやどんな生活をするのが良いのかを語っていました。子供達は、実に素朴な疑問や純粋に悩んでいる事をオンラインで首相に問いかけ、それに対して首相は、一人ひとりに丁寧に答えていたのでした。また、あるニュース番組で、「なぜ、ドイツの女性首相メルケル氏のコロナ危機対策演説は人々の心に響いたか」というテーマで一人の女性作家とニュースキャスターがオンライン対談をしていました。私は、どんな演説だったのかが知りたくて、インターネットで検索して読んでみました。なるほど、とても分かりやすく、他人事や一般論ではなく自分はどうしなければならないのかを自ら考えようと思わせ、冷静にさせてくれる内容でした。
両者の言葉に共通するのは、聞き手の気持ちを汲み取りながら、決して一方的でない言葉でした。子供達が「どうして、お友達と遊んじゃいけないの?」という、実に率直な質問に「わかるよ、その気持ち…。そうだよね。遊べないのはつまんないよね。」と先ず子供達の気持ちに寄り添い、その次に、この病気の恐ろしさや、今一番大切なのはあなたやあなたの友達の命、もう少ししたら会える日が来るからそれまで我慢してね──。と子供達が納得のいく説明と見通しについて勇気付ける言葉で答えていました。
メルケル首相の言葉にも、科学者の新型コロナウイルス状況についての意見を根拠にしつつ、そうならば私達はどう生活しなければならないか、それが危険を回避しどんな安全性を生むのか、誰を救う事になるのか、そして、この危機の中で命を張って働いてくれている人への感謝の気持ち……その気持ちを皆で共有して共にこの状況を乗り越えて行きましょう。といったとても具体的でわかりやすいものでした。それを“お母さん的な言葉であった”と表現されていました。
今は誰もが皆、不安な毎日です。言われたままを言われたようにしていてもなかなか先が見えてこない不安や苛立ち…。そんな中で、「こうしなさい、ああしなさい…」ではなくて、「その気持ち、とってもよくわかるよ。私も同じ気持ちだよ。でもね…、今はこうする事がきっと一番大切なの。一人ひとりが気を付ける事であなたの大切な人を守れるの。だから、みんなで一緒にそうしてみようね。」と、そんな“お母さん的な言葉”で、じっくりと言ってくれると、不安に苛まれている子供達も人々も、「うん。わかった。そうしてみるよ。」という気持ちになるのではないでしょうか。これは、新型コロナウイルスに関してだけに言える事ではなく、全てにおいて、お母さんの愛溢れる言葉は、心にしっかり届くのです。それは、不安な気持ちや困惑している気持ちを理解してくれ、自分の事を誰より大切に思ってくれている親愛なるお母さんが語ってくれる言葉だからでしょう。これまで、『ステイホーム』と言われ続けて来ました。「お家にいよう」=「お家は安心・安全」という事なのです。何て素敵な言葉でしょう。そこは、信用できる人がいて自分を安全に守ってもらえる場所なのです。そんな場所で、“お母さん・お父さん”が、きちんと話してくれると、ちゃんと理解しその言葉を受け入れる事ができるのだと感じました。大切な事を伝える時には、愛が必要で“自分の事を大事に思ってもらえている”という事が伝わっていないと心に響かないのだとあらためて感じました。
休園中、預かり保育を利用するはずのある男の子がしばらく休んでいたので、「どうして今まで来なかったの?」と聞いたら「コロナに気を付けてたから…」と答えてくれました。きっと、ステイホーム中に、お家の人にきちんと話してもらっていたのでしょう。“お母さん的な言葉”信用できる人の言葉には愛があるのです。だから、納得できるのです。
この新型コロナウイルスは世界中の人々に大きな変化をもたらしました。しかしそれだからこそ、世界中の人々はいろいろな事を学び考えるようになりました。コミュ二ケーションの方法としてオンラインが広く活用されるようになりました。この度をきっかけに9月入学の話も議論されています。そして、ワクチン開発も進み出しました。いろいろな挑戦が始まっています。
もうすぐ幼稚園に賑わいが戻って来ます。止まっていた時間が動き始めます。幼稚園でも命について考え、子供達の成長に向けて新たな挑戦をしていかなければいけません。私達は、“母なる気持ちで”新時代を生きていく強くたくましい子供達を育てていきたいと思います。また、子供達を迎え、更なる感染拡大防止に努めていきたいと思いますので、ご協力をよろしくお願いします。
2020年5月26日 11:55 AM |
カテゴリー:葉子えんちょうせんせいの部屋 |
投稿者名:ad-mcolumn
新型コロナウイルスの影響を受け深い悲しみの中におられる方、または、不安な日々を送っておられる方々に心よりお見舞い申し上げます。そして、こんな中、尊い命を救うべく医療福祉の最前線に立ち、その使命と向き合いながら戦ってくださっている方々には、心から感謝申し上げます。
この騒動の始まりは2月、対岸の火事のような気がしていた事をいよいよ身近に感じるようになったのは3月でした。三次中央幼稚園も、自由登園とし、卒園式を目前に、欠席数の多い日が続きました。年長組の子供達や保護者の方にとっては、最後の幼稚園での生活……。一日一日が大切な日々でした。もしかしたら、このまま卒園式の日を迎え、全員で顔を合わせる事もなく「さようなら」になってしまう、あの子にもあの子にも会わないで、幼稚園生活を終える事になるのだろうか??──そう思うと、先生達は、できる事なら、すぐにでも「みんな!あつまれ~!!幼稚園においで~!」と呼び戻したい気持ちで毎日を過ごしていました。勿論子供達も、「今日もみんな揃わなかったね。○○ちゃん、どうしているんだろう?」と、毎日毎日、全員が揃わない日々を寂しがっていました。ついに、卒園式の日、できる限りの感染拡大防止策を講じ、保護者の皆様には様々な制限にもご理解いただき挙行しました。その日、やっと約3週間ぶりに全員が揃ったのです。様々な制限の中、私達で試行錯誤の末、最善を尽くした卒園式でした。卒園する子供達を精一杯真心を込めて巣立ちの日を祝ってあげたい!!そんな気持ちで一杯でした。そんな先生達の気持ちに応えるかのように、年長組の子供達は胸を張って立派に卒園して行きました。
春休みの間も落ち着くどころか、新型コロナウイルスの脅威は段々と私達の傍に近寄って来ました。次は入園式…。私も、園長就任後初めての入園式に張り切っていましたが、卒園式と同様に、入園式の在り方から考えないといけない状況になりました。可愛い新入園児達は、今の大変な状況を思わせない無邪気で元気な笑顔で幼稚園にやって来てくれました。その笑顔にみんなが救われるような気がしました。一人ひとりを中門で迎えながら、「どうか、この子達が私達の幼稚園で、健やかに眩しい日々を生き生きと過ごせますように!」と思っていました。保育室では、短い時間でしたが、お父さん又は、お母さんと一緒に担任の先生と歌あそびを楽しんだり、大きな声で返事をしたりして、園生活スタートの一日を過ごしてもらいました。
卒園式も入園式も、仕方がないとはいえご理解とご協力をいただいた事に感謝の気持ちで一杯です。政府の緊急事態宣言の対象区域が全国へ拡大されてからは、子供達にとっての環境が更に息苦しいものになってきました。今、思うのは、卒園して行った子供達、入園式以降幼稚園で会えていない子供達はみんな元気にしているのだろうか?どんな毎日を過ごしているのだろうか?という事……。
私達の力では、どうにもできない事なのかもしれない、それでもどうにかしたい!と思うもどかしさ、これは、今、誰もが感じておられる事だと思います。テレビの放送を観ても、ニュースは新型コロナウイルスの事ばかり、収録困難のせいかドラマもバラエティー番組も再放送が多く、マスクやソーシャルディスタンスもないその過去の映像になんだか不思議な気分になり、遠い光を見つけるまであとどのくらいかかるのだろう?…と、つい気が重くなってしまいます。
だけど、ここが踏ん張りどころです。学校に行きたいのに行けない卒園児達、幼稚園の友達や先生に会いたくても会えないでいる子供達、まだ一日しか幼稚園で過ごしていない新入園児達──。子供達だって、環境の急激な変化の中、子供なりに我慢しています。また、そんな子供達を家の中で安全に過ごさせるために神経を使いながら日々送っておられるご家族の皆さん。仕事や生活に様々な影響を受けておられる方。辛いしんどい気持ちは皆一緒です。運命共同体です。どうしようもない事なら、もう、踏ん張るしかありません。見えないものに立ち向かえなくても、見えて来た事(不要不急の外出を控える、3密を避ける、適切な衛生管理等)には忠実に冷静に対応しながら、自分と大切な人の命を守るために、みんな一緒に踏ん張るのです。そして外出を控え家に居る今の時間を“ピンチの中のチャンス”に!と、考え方を変えて過ごしてみてはどうでしょうか。
そんな悠長な事!…と呆れられるかも知れませんが、私達の気持ち次第で、暗い状況を明るく変える事ができるのではないかと思うのです。親子で、兄弟姉妹で、家の中で遊んだり、掃除や料理をしたりするのもいいでしょう。時には外の空気を吸って軽く運動をしたり、静かに好きな本を読んだりしながら、心穏やかな時間をつくるのもこんな時こそ必要でしょう。又、これまでは、毎日時間に追われてあっという間に日が経ち、立ち止まっている暇がない程忙しかった大人達は、時間が停滞している今のうちに、これまでの事を見直したり新たな挑戦を企て、その“作戦タイム”にしたりするのはどうでしょう。もしかすると、その挑戦が日本を支える底力になる日が来るかも知れないのです。幼稚園の先生達も、今、幼稚園に来ている少人数の子供達と、楽しみを見つけながら過ごしています。神楽好きな子供達が“神楽チーム”を組んで得意な演目を披露してくれています。ある子は、落ち葉や草を使ってお寿司屋さんごっこをしています。段ボール箱や廃材を使って、お昼ごはんの時間を忘れるほどロボットや小動物の住処(すみか)を作って遊んでいます。園庭では、大縄跳びに挑戦している子供達もいます。寂しいけれど、少人数で思いついたあそびを楽しんでいます。子供達はあそびの天才です。満ち足りた中よりも、思うようにならない不十分な中の方が、自分で考えたり工夫したりしながらその中で楽しみを見つけます。先生達は、そんな子供達の“あそびたい!”というシンプルなハートに驚かされたり、感心したりしています。これが結構先生達も楽しかったりするのです。今の踏ん張りの先には、きっと、子供達み~んながこれまで以上の笑顔で幼稚園に来てくれる平和な時が戻って来るはずです。その時の子供達の喜ぶ顔や笑い声を想像しながらいろいろな想いを巡らし、その日が一日も早く訪れる事を信じながら毎日を過ごして行きたいと思っています。
今、世界中が踏ん張りどころです。子供達が安心して成長できる世の中に戻すために……元のように戻す事ができないなら、新しい時代を作る気持ちで精神力を強く保ちながら、日々過ごして参りましょう。辛い時には“お互い様”の気持ちをもって……助け合いましょう。あれこれ、誹謗中傷、争いなどしている場合ではありません。私達一人ひとりがこの状況においてできる事は、先の見通しの悪い長い道を励まし合いながら歩き、踏ん張り続ける事かもしれません。気持ちの持ち様で、“明けない夜はない”と思うのです。──と、書きながら、自分にも言い聞かせている新米園長です。
今年度は、これまでの『葉子せんせいの部屋』を『葉子えんちょうせんせいの部屋』とタイトル改め、引き続き書かせていただきます。この中で、私なりに思う子供達の素敵な所、一緒に過ごす素敵な時間、子育ての難しさや楽しさ、子供とその家族を取り巻く世の中について等々…。保護者の皆様と会話をしているような気持ちで書きたいと思っています。どうか、読んでいただき、共に考え合って楽しさも喜びも苦しさや悲しみも共有できたら嬉しいです。どうぞお付き合いよろしくお願いいたします。
経済的にも歴史的緊急事態に落としいれた新型コロナウイルスとどう向き合えば、この辛い時期を少しでも前向きに過ごす事ができるかを今年度のスタートに寄せて、子供達と保護者の皆様と先生達に……そして自分自身にもエールを送るつもりで、つい割り当てられた私のページを書き過ぎてしまいました(笑)。今回は特別だと思って読んでいただけたら嬉しいです
ピンチはチャンス!明けない夜はない!ここは踏ん張りどころです。一緒に乗り越えましょう!!
2020年4月30日 11:39 AM |
カテゴリー:葉子えんちょうせんせいの部屋 |
投稿者名:ad-mcolumn
葉子せんせいとは、三次中央幼稚園の主任教諭 田房葉子のことです。自分の保育実践を通して書き、学研の保育専門誌「ラポム」にも連載された「あそべやあそべ」という著書もあります。
このページでは田房葉子が主任教諭として平成18年度より三次中央幼稚園が園児・保護者対象に月一度発行する園だよりに連載され、皆様に親しんでいただいている、『葉子せんせいの部屋』を年度・月ごと皆さんにご紹介し、子育ての参考にしていただければと思います。
2020年2月15日 6:02 PM |
カテゴリー:葉子先生の部屋 |
投稿者名:ad-mcolumn
« 古い記事
新しい記事 »