難しい事って実は面白い(2024年11月29日)

2024年のカレンダーも残すところあと一枚になりました。街では、クリスマスムードが盛り上がり、年賀状やお節、福袋の話題……日々忙しくしている者にしてみれば、気持ちがそこにまで追い付かずせかされているようで、慌ただしさに拍車がかかります。

娘達の言葉

そんな中、終活(笑)ではありませんが、我が家の物置と化している部屋を片付ける事にしました。ずっと何とかしなければと思いつつ手つかずになっていた部屋は、思い出の品や書物等、仕分けて収納していたつもりがこの有様…と思われるほど溢れかえっていました。

その中で一番場所を占めていたのは、娘達の思い出の品でした。誕生から今までの撮り溜めたアルバム、うぶ着から幼稚園で作った作品や絵、小学校から大学までのカバンや制服、それを家族で懐かしみながら処分や整理をしました。幼稚園から小学校くらいまでのノートは可愛いばかりです。そして、中学校から大学までのノートを見て「よく頑張って勉強したんだね。(成績に反映されていたかどうかは別として)難しそう」と言うと、娘は「今見たらしんどくなるわぁ。でも、こういう数学の問題、何だか面白かった。たった一問をすごく長い時間一生懸命に考えて、最後に解けた時はすごく気持ちよかったなぁ。何とも言えないヤッターって気持ち!得意じゃあないけど、面白かった。」とまじまじとそのノートをめくりながら話していました。それを聞きながら、椅子に片膝立てて姿勢悪く机に座り、鉛筆片手に教科書とにらめっこしているその頃の娘の姿を思い出していました。一番勉強が楽しいと思えていた時だったようです。

“難しさ”を通して“本気”を引き出す

「難しい」と思う事を何とか乗り越える時、そこには、「本気」の気持ちで向き合う姿があります。時には時間を忘れたり周りが見えなくなってしまったりするほど夢中になります。何とか成果や答えを導き出そうと知恵や心身をフルに使って「本気」を出します。そうして、「わかった!」「できた!」「勝った!」という最高の喜びを得るのです。その喜びは、次の意欲に繋がります。難しい事にでも臆病にならず「ちょっとやってみよう。できるかもしれない。」という気持ちで向き合えるようになります。あの時頑張ってできた!という自分の力を信じてその次に味わったその時の喜びや達成感に出会うために「本気」出せるのです。

子供達は、まだ生まれて数年しか経っていません。これから出会うほとんどの事は初めてです。初めて見たり経験したりする事に興味津々です。そこの入り口は様々なカタチがあると思います。他者からの影響・“どうして?”という疑問からの追求・好きな事等…。それが難しい事であればあるほど、本気出して結果を自ら見出し喜びを得る───これが面白くてたまらないのです。

「本気」の先に……

今、まさに幼稚園の子供達は、友達や先生と一緒に「メロディーチャレンジ」という目標に向かって「本気」を出しています。初めて触れるいろいろな楽器と曲に出会い、ステージに立ち演奏したり踊ったりします。保護者の皆様においでいただくその日までには、いろいろな道のりがあった事は想像していただけると思います。はじめは、メロディーはわかっていても、うまく楽器で演奏できなくて、「もうしない。できないもん」と言ったりする子もいました。それでも、今では楽しくみんなで同じステージに立ち、演奏したり踊ったりします。そこには、大きな目標を掲げつつ、ひとり一人が自分の中での目標を持ちチャレンジする経験をし、「がんばったらちょっとだけできた!わかった!」という喜びを味わう経験を積み重ねてきた“本気”があるのです。

打楽器をしている男の子に「こうしたらもっと良い音が出るよ」と手を添えようとしたら、「わかってるってば!」と教えてもらう事を拒んでいました。でも、他の友達が先生に教えてもらってどんどん良い音がでるようになっていくのを見て、彼も自分も良い音にしたいと思ったのでしょう。「ねえ、園長先生、僕の音はこれで良かった?」と教わる気持ちになってきました。「うん!良くなったよ!その調子!」とオッケーサインをすると、「おもしろくなってきた!」と言うようになってきました。また、木琴のパートをしている子達は、主旋律だけでなく、それにハモりのメロディーも覚えて2本のマレットで音色を奏でます。きれいな音を出すのはとても難しいのです。でも、何度も何度も根気よく先生の指導を受けます。バス通園のある男の子が朝バスの中で先生に、「僕、今日楽しみなんだぁ。」と言ったので「何かあるの?」と先生が聞き返すと「ホールでの練習!僕、早く明日にならないかなぁと思って夜も眠れなかったんだぁ~」と言ったそうです。難しい事を一生懸命本気になって頑張ると、それは次の楽しみにつながる事を彼は実感していました。本番、子供達の誇らしげな姿や楽しそうな表情、音色は、そんな楽しさや喜びの努力の末に獲得した子供達の勲章です。

「難しい事は実はおもしろい」──それを知った子ども達はチャレンジする事への快感と共に学ぶ力を身につけていくはずです。

そんな子供達の姿を毎日見ながら一緒に過ごせている先生達もまた、楽しくてたまらないのです。