ほめる──あなたのここが素晴らしい(2024年9月27日)

今年も、残暑の厳しい夏でしたが、朝夕は涼しくなり、日も短くなって来ました。これからは、気持ちの良い秋空の下で身体を思い切り動かしたり、秋の自然に目を向けて心動かされたりする経験を楽しみたいと思います。

気持ちの良いあいさつに“嬉しいよ”

夏休みを終えて2学期の始まりの朝、子供達は、いろいろな表情で登園して来ました。緊張した顔、笑顔いっぱいの顔、みんなに会える事を楽しみに期待いっぱいの顔……。そんな中、ひときわ大きな声で「園長先生!!おはよう!今日から2学期なんでしょ、私、楽しみな事がいっぱいある!」と、話してくれる女の子がいました。新学期を待ち望んでいた事が手に取るようにわかりました。息継ぎもするかしないかのようなその子の話しっぷりが微笑ましくて、しばらく聞いていました。話し終えて落ち着いたところで、「園長先生は、ここで〇〇ちゃんを待っててよかった。楽しい話が聞けたし、一番に“園長先生!おはよう!”って言ってくれたから嬉しいよ。すご~くいい2学期になりそう!」と言いました。すると、その子は「うん!私も!」と言って笑っていました。その子は帰る時も「園長先生!さようなら!」と自分から言ってくれます。

さりげない優しさに“ありがとう”

2学期から、満3歳児クラスには、5人のニューフェイス達が入園してくれています。まだ、新しい生活に慣れず涙する子もいます。そんな姿も可愛く思えるのか、年中年長のお兄さんお姉さん達が気にかけてくれています。そんなある日、私が、泣いている満3歳児の子の涙と鼻水を拭いてあげてその子をおんぶしようとしていると、ある年中組の女の子が来て「そのティッシュ、捨てておいてあげようか?」と言ってくれたのです。どこかで、その様子を見ていたのでしょう。「ありがとう!助かるよ。おんぶしてゴミ箱まで行くの大変だなぁ~って思ってたんだよ。ありがとうね。」とお礼を言いました。その子は「どういたしまして。バイバイ。」と泣いていた子に優しく手を振って向こうに行きました。

ほめ方とほめるタイミング

先日、ある施設が主催する“子育て講演会”に参加し、興味深く話を聴きました。その中で、児童精神科医の「子供を“ほめること”」についての研究結果をもとにした話を聴きました。

“知能”をほめられた子供は、失敗する事を恐れ、問題の正答数が大幅に減ったが、知能ではなくその“努力”をほめられた子供は、失敗しても以前より多くの問題を解けるようになった。

また、

“結果”をほめられた子供は、良い結果がでる易しい問題にしか取り組まなくなったが、結果ではなくそこに至るまでの“努力”をほめられた子供は、難しい問題にチャレンジする事ができるようになった。

……この研究から、「知能」や「結果」ばかりをほめると、ほめられたいが為に、良い結果が出せる事にしか取り組もうとしなくなる傾向に陥る…というのです。

ほめるには、子供の心に刺さるほめ方があります。どうしてほめられたのか、ほめてくれたお母さんお父さんは…先生は、私の僕のどこを認めてくれたのか、なぜ、嬉しそうなのか、なぜ、幸せそうにほめてくれたのか……。ほめてもらえた事で、それが子供の心に届くのです。そしてそれが、子供達の向上心やチャレンジ精神を育てる事に繋がっていきます。

さて、来月は「わんぱくチャレンジ」で、頑張る子供達を観ていただきます。これまで、様々な種目において努力をしたり、友達と力を合わせる大切さを知る経験をコツコツと積み上げて来た子供達の表情を観て、どのようにほめていただけるでしょうか?「わんぱくチャレンジ」の一日だけではなく、また、できたできなかった…速い遅いの結果ではなく、その日までの、あっただろう“努力”や“仲間意識の高まり”を感じてそこをほめてあげて欲しいのです。結果にばかり目を向けるのではなく、そこに至るまでの過程に目を向け、その部分をほめて感動した事を言葉にしてあげるのです。すると、子供は、頑張って良かったと実感できたり、そうした事で人も自分も嬉しくて楽しい気持ちになれるという事があらためてわかり、自分の頑張りや良い行いがより確かなものになっていくのです。

そして、それは、その子の成長の通過点の一部である事も忘れないでください。これから、どんどん成長して自立した大人になって行くまでの、ここは、ポイントに過ぎないのです。大きく考えれば、人生のプロセスを踏んでいる最中なのです。人生の中で、こうしたポイントを何度も通過しながらその度に他者に認められ承認称賛される事により、自己肯定感を得ます。そうして、認められた力に自信をもって生きて行ける子になるような気がします。

私達は、幼稚園生活の中で、まだ見えない先の先のずーっと先に見える“強く逞しく生きて行く子供達の像”を夢に描き育てています。

日常の中でも、その子のとった言動に「あなたのここが素晴らしい」としっかりほめてあげてください。それは、子供達の成長において大きな力になります。