良い文とは

●子供が入っていける世界の文であって欲しい。

子供達は、読みきかせする言葉を手掛かりとして、又は絵を手掛かりとして、もう一つの世界に入り込んでいきます。しかも、聞き手(子供)と絵本の主人公が一体化して、自分が主人公の気持ちとなって聞き入っています。ハラハラドキドキしたり、悲しんだり、楽しんだり、一緒に食べたり、冒険したりしています。そして、やがて本を閉じて現実に戻っていきます。そういう本文であって欲しいのです。


絵本で大切なのは、その中に盛り込まれている知識や情報の多さではなく、言葉そのものなのです。そのためには、より文学的で詩的な言葉、耳から聞いて本当に分かりやすく、楽しくユーモアがあり、リズミカルで美しい文章の絵本が良い絵本ということになります。そういう絵本を選ぶのには、お父さんやお母さんの感性をより豊かなものにしなければなりません。そのためには、お父さんお母さんが絵本を楽しみながら数多く読んでみることが必要となります。仕方なしに読んであげているという気持ちをすてて、子供と幸せで素敵な時間を過ごしているのだと思ってください。

●ストーリー性があることが大事です。

前のページと関係なく突然に話が変わる(あるいは途中を省略してある)のは子供が困惑するだけです。前ページとのかかわりが大事となります。そして、作者自身がちゃんとテーマを持って、作者自身の言葉で書いている本、子供の世界を子供の発想で描いている本、幼児の生活に共通する事柄の本は子供に共感を与えます。「あっ、ボク(わたし)の世界だ」と本の中に深く入っていきます。このような本は子供の発想力を刺激して、その働きを活発にします。

●「おおきなかぶ」(福音館)で具体的に説明します。

「おばあさんは まごを よんできました」「うんとこしょ  どっこいしょ」「まだ まだ かぶは ぬけません うんとこしょ」と、繰り返しながら、だんだんと人数が増えてきます。

リズミカルな文で次のページでは誰が加わるかと期待を持たせます。そして、登場してくるのは子供達にも身近なものばかりです。最後はねずみが加わって「やっとかぶはぬけました」で、ホッとします。ユーモアもあり期待も持たせます。子供達の身近な世界で、この簡単でリズミカルな言葉、この楽しさが子供を本のとりこにするのです。

子供達は身近な動物や食べ物、乗り物の登場する本、ちょっと怖いけど覗いて見たい、現実と空想の世界の交差するおとぎ話、そんな本が大好きです。