フェアプレーでノーサイド(2023年度10月)

 今日は、中秋の名月、十五夜です。先日、年長組はお月見のお茶会を経験しました。お月見は、様々な農作物の収穫をきれいな月を見ながら感謝する古来伝わる行事です。月の影を見て「月でうさぎがお餅つきをしていると思う人!」とお茶の先生が聞かれ、ほとんどの子供達が「はーい!」と手をあげていました。そんな昔から伝わるロマンも子供達ならではの楽しみ方かもしれませんね。

私には、週一回とても楽しみにしている事があります。日曜日の夜、「大河ドラマ」を観る事です。あまり、お気に入りのテレビ番組を持つ方ではないのですが、これだけは、欠かさず観る事を楽しみにしています。しかし、ある週の事、ラグビーワールドカップ戦のため放送が中止になっていました。残念がっていると、主人が「今日、それを残念がっているのは、日本でキミくらいじゃないか?」と冗談っぽく言いました。日本代表の初戦だったからです。テレビ観戦している主人は「よっしゃー!」「すごっ!」と言いながら楽しんでいました。その主人の様子につられて、つい私も見入ってしまいました。その試合はみごと快勝、「ノーサイド~!!」というアナウンサーの声と同時に歓声が聞こえ盛り上がっていました。そして、両チームの選手が抱き合ったり硬い握手をしたり言葉を交わしたりしていました。敵も味方も関係なくお互いに讃え合っていました。スポーツ観戦をすると、こうしたシーンをよく見ます。真剣勝負までの道のりの大変さや強い志に共感し合える物があるからこそ、勝者敗者や敵味方関係なく、お互いの健闘をたたえ合えるのだと思います。そんな姿を見ると、どちらかを応援していたとしても、両者に惜しみなく拍手を送りたくなります。スポーツマン精神の素晴らしさに胸を熱くさせられるのです。

ある朝、年長組の子供達が、数人でリレーをして遊んでいました。チーム分けやバトンの準備をし、園庭に描かれたトラックのラインを使って走っていました。しばらくすると、何やら皆で集まって言い合いが始まり、聞いてみるとどうやら、トラックのラインを外れて内側を走った子がいたようで、「それはルール違反だ!」と厳しく言っていたのです。一生懸命に走っていて本人はそのつもりがなかったようですが……。ルールを巡っての言い合いでした。子供達にはありがちな事です。年長組くらいになると、リレーやかけっこのルールがよく分かっていて、厳しい判定をし合いながら遊びます。楽しく遊ぶためには大切な事です。ルールは、単に競技の方法ではなく、公平かつ安全の中で力を出し合うためのステージをつくってくれるものです。

ルールがなければ、それぞれが各々に持つ自分勝手な価値観で勝負をする事になります。無秩序の中では、勝っても負けてもお互いに認め合えない達成感の得られないものになります。何より危険も伴います。結果に喜びや悔しい思いをした後に自分の中でそれを受け入れ、次は頑張ろうと再び努力をしたり、戦った仲間と共に讃え合ったり、次なる目標を掲げたり等、前向きな強い気持ちが育ちます。お互いにルールを守りながら正々堂々と勝負に挑むからこそ得られるものです。

しかし、これが、小さな学年になると、そのルールに基づいて競技するという意識は年長組ほどまだありません。どんなふうに走っても、人の走りに物言いもしません。トラックを走る事の楽しみ方が年長児とは少し違うからです。小さな学年の子供達にとっては、大きなトラックを自分の足で頑張って友達と一緒に最後まで走るその事が楽しいのです。「がんばれ~」の声に力をもらいながらドキドキワクワクしながら気持ち良く走るのです。少しくらい、フライングしたってラインの内側を走ったって、お互いに気にしないのです。それでも何度か走っているうちに、トラックラインに置かれたコーンを意識できるようになり、それがルールだと気が付くようになります。先ずは、ゴールに向かって最後まで頑張って走りきろう──────これも大切なルールです。その中で達成感や楽しさを感じられれば素晴らしい事だと思います。

幼稚園では、間もなく『わんぱくチャレンジ』を開催します。その日を目標に、様々な種目に挑戦する経験を通し、心や身体にたくさんの学びを培ってきました。かけっこやリレー等の競技種目に心を燃やしたり、年長組は、鼓隊パレードで努力の成果をたくさんの人に観て貰ったりします。

友達と一緒に曲に合わせて踊るダンスも、気持ちを合わせ演技する鼓隊パレードも、根気よく何度も繰り返し練習を積み重ねて行きながら仲間の存在を意識し、認め合い、協調し合う事の意味が分かって来たと思います。”みんなで一生懸命頑張ろう!”──────この大きなルールの中で子供達は皆楽しさや達成感に出会います。苦手意識を克服したり、自分の好きな事や得意な事が見つける事ができたり、友達と一緒に生活する楽しさが増したりします。一つひとつの経験に皆と一生懸命取り組んで来たからこそ味わえる事です。

『わんぱくチャレンジ』当日には、お家の人達の応援を受け拍手をいただく事で、その頑張りを自信に繋げていく事でしょう。どうか、惜しみないエールを送ってあげてください。そして最後には、頑張った者同士お互いの健闘を讃え合える「ノーサイド精神」が宿ったとしたら、この『わんぱくチャレンジ』の経験が、これからたくさんの人達と生きて行く上で子供達を支えてくれる素晴らしい力になると思うのです。


今年度のプログラムには、親子競技を組んでいます。保護者の皆様もどうか、「ノーサイド精神」で素敵な一日にしてくださいね。