田植え(2023年)6月

今年は、例年より早い梅雨入り。お気に入りの傘と長靴でウキウキ登園して来る子供達の可愛いこと♡ 雨降りの日でも、楽しめる子供達は素敵です。雨上がりには、園庭にできた水たまりも格好のあそび場になります。梅雨から夏にかけ、お家から持って来たプレイパンツとプレイTシャツ、そしてこれから準備していただく水着の出番も多くなりそうです。子供達の大好きな季節がやって来ます。


さて、先日、年長組の子供達が田植えを経験しました。これは、平成16年(2004年)から毎年行ってきました。ここ3年間は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け自粛していましたが、久しぶりに経験させる事ができました。この田植えは、20年ほど前に、田んぼの泥の感触と手植えの面白さ(農家の方にとっては大変な作業ですが……)を幼稚園の子供達に体験させてやれないだろうかと義父に相談したのがきっかけでした。内心ダメ元でしたが、義父は直ぐに「子供達に植えさせるなら、一番広くて、友達が植える様子がしっかり見えて、足を洗う場所があるこの田んぼを使ったらいいよ。いい経験になるだろう。」と快く場所を提供してくれました。それから、毎年主人と義父は幼稚園の田植えに協力してくれました。いつもは静寂な我が家にとって、その日は、一年の中で最もたくさんの人が集まる賑やかな日にもなっています。


さあ!いよいよ子供達がやって来ました。子供達にとっては、田植えはもとより、幼稚園バスに乗って園外に出かける事も初めてでしたから、楽しみや喜びは倍増だったに違いありません。田んぼ目指してあぜ道を歩いてやって来る子供達は、みんな笑顔いっぱいでした。遠くから「えんちょうせんせ~い!来たよ~」と手を振る子供達が可愛くてたまりませんでした。「私、わくわくしてうきうき!」とか「ドキドキする~」等、いろいろな事を言いながらやって来ました。楽しみにしていた気持ちがわかりました。準備が整い、いざ!田んぼへ!先ず、協力者である私の主人からお米の苗の事や、植え方を教えてもらい10人ずつ順番に田んぼに入って行きます。子供達は、最初ヌメヌメした田んぼの中に入るのは恐る恐るでした。砂場あそびとは違う感触です。ゆっくりゆっくり入る子供達の表情は緊張気味でしたが、一歩踏み入れるとその緊張も緩みキャーキャー言いながら自分が植える場所まで歩きます。

それから、教えてもらったように一株一株を6箇所に慎重に植えて行きました。子供達は真剣です。渡してもらった一握りの苗を丁度良い本数(3本)に根っこから取り分けるのが難しそうでした。中には、そのままごっそり植えようとする子もいました。土のついた根っこ近くを持ち、泥の中にそのまま手の甲が埋まる位に差して植えて行きます。この時、手のひらが汚れる事はそれほどでもないのですが、手の甲が汚れるという事には少し抵抗があるようで、そのような子には「ズボズボズボ~」と言いながらその子の手を持ち一緒に植えました。徐々に抵抗もなくなり慣れて来ます。一人で植える事ができた子は、苗がピンと立ち嬉しそうでした。教えてもらったようにできた事で得意顔です。コツを覚えてからは面白くなって来て、みんな上手に植えていました。

足も手も泥んこになって大仕事(?)をした後は、もう一つのお楽しみ♥まだ植えていない場所で泥んこ競争です。「では、クルっと後ろを向いて!田んぼの端まで行ってここまで帰っておいで!競争だよ!」と言うと大騒ぎ。「服もズボンも汚れていいんだよ~。転んだっていいんだよ~。」と言うのですが、初めは汚れないように転ばないように走ろうとするので、その後ろ姿は…言ってはなんですが…こっけいでした。それを何人かずつ繰り返していくうちに、どんどん度胸がつき、しゃがんでおしりを泥につけたり、わざと何度も転んでみたり、座り込んだりする子もいました。自分の順番が待ちきれず田植えをする前からすでに田んぼの端の方で泥んこになっている子もいました。顔も身体も泥まみれになった後は、洗うのもそこそこにして着替え、虫やサワガニを求めて探索している子もいました。子供達の目はキラキラ!!自然の匂いに誘われて、いろいろな楽しみ方をしていました。さすが!三次中央幼稚園の子供達!

私達は子供達には、自然に触れる事により、自然の不思議さや美しさ面白さに気付き、それを尊び大切にしようとする心を育てたいと思っています。三次中央幼稚園の教育理念でもあります。身体中を泥んこにして心を開放できた時の楽しさは格別です。

子供達はそれからも、「僕達が植えた苗は、今日はどうなってた?」「大きくなった?」「イノシシに食べられてない?」(笑)「夜、雨がいっぱい降ったけど、苗は抜けてない?」等とよく私に聞いてきます。「オタマジャクシやアメンボは出てきた?サワガニは?」「僕の家のそばにも田んぼがあって、同じように田植えがしてあったよ。」といろいろ気になるのです。こういう気持ちになる事が大切だと思います。毎日食べているご飯は、この田植えから始まるという事、そして、上手に植えないと育たない事、どんな所でどんな時(季節)に、どのようにして育っていくのかという事に関心を持ちながら生活する事で、興味が深まり知識が広がります。自らの経験がいろいろな学びに紐づいていくのです。秋には稲刈りをする予定です。その日までに、どんどん変わって行く田んぼの様子を時々観察しながら、泥の匂いや草や水の匂い、田んぼ一面の色……これからは、田植えの時季と稲刈りの時季の生き物が様変わりする事にも気付くでしょう。

田植えの翌日、年長組の子供達は田植えの絵を描いていました。どの子の絵も生き生きとしていて楽しい絵でした。子供達のあの日の歓声が聞こえてくるようでした。

個人的な話になりますが、一番の協力者であった義父が今年亡くなり、その年に再開できた幼稚園の田植え──自然のありがたみと大切さを何より知っているその義父も、可愛い子供達にそれを感じさせてあげられる事を天国で喜んでくれている事でしょう。