お父さんお母さんだって人間だもの(2019年度2月)2020年2月

どこかの地方では梅の花が見ごろを迎えているというニュースを耳にしました。いつのまにか「大寒」が過ぎた──そんな気がします。雪あそびは2月のお楽しみにとっておく事にしましょう。

さて、先日、幼稚園で教育講演会を行いました。フリーアナウンサー徳永真紀さんに「子どもと一緒に輝く自分であるために」というテーマでお話しいただきました。

自分の事を知り、似合う洋服を着る事により、自身も生き生きとでき、自分を見る周りの人達にも好印象を与えられる男性女性になれるんだという事を顔タイプ診断をもとに教えていただきました。これまで好きで身に付けていた洋服や靴やバッグが、実は自分には似合う物ではなかった、あるいはもっと違う物のほうが好印象だったという自己診断ができたと思います。中には、そんな事すら考えた事がなかった…自分を振り返る良いきっかけになった等、たくさんの保護者の方から、感想をいただきました。お父さんもお母さんも、子育て真っ只中で、自分の事より子供優先の毎日を送っておられると思います。仕事や家事に追われながら、一生懸命に子供を想い生活をされておられるでしょう。それは、とても素晴らしい生きがいであり幸せではあるけれど、子供達を学校や幼稚園に送り出した後、フーッとため息をもらす事もあると思います。そんな疲れた気持ちに自分を追い込まないようにするためにも、ちょっとした気持ちの持ち様で、生き生きとした自分を実感しながら生活できるという事です。

ある朝の事、中門でいつものようにお子さんを送って来られたお母さん、「いってらっしゃい!」と見送られた後で、私と楽しく話をしていたところ、その子が振り返り、大きな声で、「お母さん!お母さんが笑ってて楽しそうで嬉しい!」と一言叫んで行きました。そのお母さんはいつも笑顔でお子さんを送ってくださり、仕事に行かれるのですが、その時は何か特別だったのでしょう。お母さんの笑顔や笑い声がその子にとっては、元気に「行ってきます!」と言える源になっている事を感じました。お父さんやお母さんが笑顔でいる事が子供達にとっては、すごく幸せで満たされた気持ちになれる事なのです。とても素直で率直な子供の心の声だったと思います。

“生き生きとする”のではなく”生き生きとできる“事が大切なのではないでしょうか?生き生きしたくても、できない状況もあります。でも、自分を少し変える事で何かが変われば気持ちが変わり、それが態度や表情、雰囲気に表れ、周囲に良い影響を与える事になります。そうしたら、人間関係も良くなり、仕事や子育ての歯車が上手くまわるようにもなる気がします。ちょっとしたおしゃれを楽しんだり、趣味を持ったり、お仕事にやりがいや楽しみを見出したりする事で、自分自身が輝き笑顔や会話も増えるでしょう。子供達はそんなお父さんやお母さんをよく観ています。子供達は、笑顔で、たくさん話をしてくれたり聞いてくれたり、元気な心をみせてくれたりするお父さんやお母さんが大好きなのです。

でも、そんな事はわかっているけど、そんなに簡単に生き生きできる環境にはならない。理想は追い求めたいけれど、やっぱり現実はそういかないわ……そう思うところもあります。仕事や家事に加え子育ては実際お父さんお母さんにとっては大変です。実は、心のどこかで“しんどい!”とか“辛い!”とかを言えない(言ってはいけない)という本音と闘っているところがあるのではないでしょうか?だって、世の中、仕事も子育ても楽しい事ばかりじゃあないんですから……。でも、「辛い!」と言ってしまうと、そのままもう踏ん張れなくなるのではないか、子供の前では、しんどそうにしてはいけないとか、そんな顔を見せてはいけない等と忙しさから来る気持ちの逃げ道を塞ぎながら明るい笑顔をつくって、ギリギリのところで頑張っているお父さんお母さんもおられると思います。でも、お父さんだってお母さんだって、しんどい事も悲しい事もあるんです。職場や世間でいろいろな事があって、家に帰った時、それでも、笑っていなきゃと思うとお父さんお母さんがパンクしてしまいます。先程も言ったように、子供はよく観ています。ちゃんとわかっています「アッ、今お父さん疲れているな。」とか「お母さん、しんどいのかな?」と、察してくれているのです。だったら、「今日はお仕事が忙しくて、ちょっと疲れちゃった。」とか「助けてくれる?」と子供の前で少しばかり息を抜いてもいいのではないかと思います。子供達もお父さんお母さんには、自分の気持ちを遠慮なくさらけ出します。お父さんお母さんだって、いつも、元気いっぱい生き生きしてばかり、笑ってばかりではないのです。だって人間だもの。だから、助け合って行かなきゃいけない。子供達を含めての家族です。お互いにどんな時でも、一緒に理解し合い支え合っていく、“お父さんお母さん”としてだけではなく、人と人とが気持ちを分かり合って生きていく大切さをこうした事から子供達は理解しながら学んでいくのではないかと思います。家は、無理しないでいられる場所だと思います。この土台があってこそ、ちょっとしたおしゃれをしたり、趣味を楽しめたり、やりがいを持てたりする気持ちになるのではないかと思うのです。
お父さんお母さんだって人間だもの……そう言って、子供達と心から笑って日々過ごせたら、更に生き生き過ごせるのではないでしょうか?

三種の神器(2019年度1月)2020年1月

明けましておめでとうございます。新元号『令和』になってから初めてのお正月。皆様、どのように過ごされたでしょうか?『昭和』から『平成』そして『令和』と新しい時代が移り行く様を経験している私は、新時代の一年の始まりを新鮮な気持ちで迎え、希望ある年になりますようにと思いながら過ごしました。

昨年5月1日には、新天皇へ、皇位の証である“三種の神器”が継承される「剣璽等継承の儀(けんじとうけいしょうのぎ)」が雅やかに行われました。この“三種の神器”は「鏡・剣・勾玉」の宝物で、この詳しい内容や歴史的背景等は、深すぎてよくわかりませんが、私は、この雅やかな歴史的瞬間を見逃すまいとテレビに釘付けでした。

“三種の神器”と言って思い浮かべるのは、“家電──三種の神器”です。……戦後、国の復興を目指し、新しい時代をつくって行こうとする人々の豊かさとその憧れを意味する物として、「白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫」が上げられていた事はよく知られた話です。それから時代は巡り、平成を生きて来た人が選んだ“新・三種の神器”は「携帯電話・薄型テレビ・ロボット掃除機」だそうです。戦後にこれらの存在する時代が訪れる事をどれだけの人が想像したでしょうか?今は、それほど手の届かない物ではない豊かな時代になっています。それどころか、ここに来て急速に時代の変化を目の当たりにし、追い付けないでいる私がいます。……というのも、昨今ではスマートフォンで、支払いができる世の中になりました。お店に行かなくても欲しい物が買えます。帰宅前に家の冷暖房のスイッチを入れる事ができます。これさえあれば、なんだってできるのです。私は、そのシステムや使い方がどうも理解できず、いろいろな人に教えてもらったり、繰り返し練習したりしながら、なんとかスマートフォンで支払いをするという情けない話です。気が付けば、幼稚園の事務所にも「PayPay」払い可能という「PayPay」のステッカーが貼ってあり、びっくりしました。世の中に少し取り残された気さえして焦ってしまいます。キャッシュレス決済も当たり前の時代になってきました。まだまだ、私は全然使いこなしていませんし、情けない話、むしろ、難しくて不便ささえ感じる程です。

でも、世の中がこんなふうに変化して行くと、子供達の中のあそびにも少し変化がみられるようになります。子供達は世の中を小さいながらにもよく観察して模倣しようとします。お店屋さんごっこをしている子供達がバーコードを読み取る機械を手に「ピッ、ピッ、ピッ」と品物に当てたり、ごっこあそびをしながら型紙で作ったスマートフォンで話したり指で画面を操作する仕草をしたりします。20年以上前に子供達と冷蔵庫を梱包していた大きな段ボール箱を使って“電話ボックス作り”をしました。ダイヤル式やプッシュボタン式の電話機や電話番号帳、その中で電話番号を調べながら受話器を持って話しているという楽しいあそびが展開されていました。「もしもし、○○ちゃんですか?」「ハイハイ、そうですよ。」「今度あそぼうね」と受話器を持って話していたあの頃の子供達……。多分、電話ボックスを知らない今の子供達が見たら、不思議な光景でしょう。もしかすると、ラインで無言のやりとり、何でもインターネットで調べる、スマートフォンでの支払い等、あの頃とは違うごっこあそびをする時代はすぐそこまで来ているのかもしれません。新時代になる事に戸惑いやかすかな疑問や本当にこれでいいのか?と踏みとどまりたい気持ちはありますが、その時代を生きるという事は、この変化を自分なりに受け止め、頭を切り替えて順応していく事も必要なのでしょう。ただ、不便な時代(それほどでもありませんでしたが…)を知って、今の便利さや効率の良さ、またはエコ化したシステムや商品に出会うと、その良い所も問題点も見えてきます。“豊かさ”を求めるがゆえに少しだけ失うものがあるような気がするのは私だけでしょうか?子供達が、当然のように“新・三種の神器”をあそびの中で使いこなす前に、一つ前の時代の物にも触れたり教えたりしてあげてください。工夫する楽しさや頭を抱えて考え、生活を便利にする答えを見出す事のおもしろさは、豊かさへの憧れとして、不便さの中でこそ生まれるのだと感じてくれるでしょう。

子供達は敏感に今の世の中を自分達の生活の中にあそびとして取り入れながら学びます。この前、「葉子せんせい!ジュース屋さんごっこをしているから、買いに来ていいよ。」と言って誘ってくれました。「お金がないけど、いいの?」と言うと「じゃあ、待って!……これで、買いに来てください!」とオレンジ色の画用紙で作ったお金を渡してくれました。100円札(笑)でした。そして、「おつりでーす」と、色とりどりのスズランテープを入れたジュースと丸く切って作った10円玉を「ありがとうございましたー!」と言って渡してくれました。なんだか、このやり取りに少しだけ安心しました。「PayPay払いでしょうか?」と言われたら「おいおい、ちょっと、待って!」と言いたい気持ちになったかもしれません。急速に変化する時代ですが、ちょっとだけ不便でちょっとだけ古い、そして、ちょっとだけ面倒臭い…そんな中にも隠れている“自由”や“贅沢”や“豊かさ”がある事に…そしてそれは何だろう?と探りながら新時代を築く大人になって欲しいと思うのです。

現代の波を受け止め、この波に乗り遅れないように私も新しさを学んでいかなければ!!と思っています。……が、さてさて、この私…ついて行けるでしょうか???(笑)
今年も、子供達の“元気エキス”“若さのエキス”をもらいながら、一生懸命頑張ります。どうぞよろしくお願いします。