見てもらう喜び(平成29年度12月)

 園庭に黄色いイチョウや真っ赤なモミジの葉が、冷たい風に舞い降りてきます。その様子にもまた、これぞ!三次中央幼稚園自慢の園庭!と、ついうっとりと見とれてしまいます。

 そんな事を思いながら園庭に立っていると、子供達が「葉子先生!みてみて!」と呼び止めてくれました。縄跳びの前跳びがたくさん跳べるようになったと見せてくれます。鉄棒の逆上がりができるよとやって見せてくれます。きれいな落ち葉を集めてブーケにして見せてくれます。幼稚園にあるストライダーに乗れるようになった様子を見てもらいたくて「みててよ!」と園庭を一周して見せてくれます。───子供達は、次から次へと「みてみて!」と必死にアピールしてきます。見てもらった後は、葉子先生が何て言ってくれるだろうかと、どうだ!とばかりに私の顔を見ます。「すごい!そんなに何回も縄跳びを跳んだら、地面に穴があきそう!」と冗談を言いながらたくさん跳べた事をほめてあげます。「わぁ!できるようになったんだね!がんばったね!」と一緒に喜びます。上手になった事や格好いい事や綺麗な事、また、頑張った事等々を「どう?すごいでしょ!」と認めてもらいたくてアピールしてくるのです。

この無邪気なアピールは、もしかすると、幼い時期だけかもしれません。大きくなるにつれて、自分の凄さに気づいて欲しくても「みて!みて!」と呼び止めてまで、こんなにわかりやすい…露骨なアピールをしなくなります。少し大きくなって思春期を迎えた頃には、気付いて欲しくても、言えなくて……それでも気付いてもらえるのを待つようになり、思ったように気付いてもらえなかったら諦めるようになって……という事もあるのです。子供の心に気付きにくくなる時が来ます。

 また、幼い時期でもアピールできない子もいます。「みて!みて!」と積極的に言ってくる子はわかりやすいですが、そう思っていてもなかなか自分から言えない子がいます。でも、気付いて褒めて欲しい、一緒に喜んでほしいという気持ちは同じようにあるのです。思春期になっても、子供達の承認の欲求は皆持っているのです。

 来月の6日と7日には、『音楽発表会』を行います。これまで、クラスの友達や先生と一緒に音楽を楽しみながら、練習を重ねて来ました。少し出来上がった頃、違うクラスや学年の子供達や先生がお客さんとして見に来てくれました。そうなるとステージの上の子供達は、自分達だけで練習をしていた時の顔つきとは違ってきます。「見ててよ!見ててよ!」という気持ちが、ピンと伸びた姿勢や先生の指揮を見る視線やキリリと締った顔にうかがえます。そして、演奏し終わった後、お客さんになってくれた友達や先生達からもらえた拍手でそれらの様子が一気に緩み、とても嬉しそうな笑顔に変わります。見てほしいというアピールが自分からできない子供達も、この時は、たくさんの人達から視線を浴びる事が出来ます。頑張っている自分を観てもらえるチャンスです。

子供は皆「みて!みて!」の気持ちで一杯です「みて!みて!」は“私を…僕を認めて!”の気持ちの表れです。頑張った自分を見て“あなたは凄い”と認めて欲しいのです。ステージに立つという特別に用意された時間は、子供達にとっては誰もが誰もに認めてもらえる時間です。見てもらえる喜びを一身に浴びながら得意気に立ちます。また、見てもらっている時の子供達は、嬉しい気持ちと同時に幼い子供なりに張り詰めた緊張感を味わいます。子供の生活には嬉しい!楽しい!…が大切です。そこにこの緊張感が加わると、子供達は大きな達成感を得る事が出来ます。音楽発表会は、それを得る事ができる経験の一つだと思います。緊張を経験する事は決してかわいそうだったり辛い事ではない事を子供達は自ら感じ、その緊張感を含めての快感は、普段の気持ちの何倍も嬉しかったり楽しかったりするのだと知るのです。音楽発表会に向けてのこれまでの練習の中では、子供達も上手くいくばかりではなく、気持ちが向かない時もあったり、しんどくなったりした事もあったでしょう。だけど、ひとつのゴールに向かっていく事が喜びに繋がる事をその時その時に少しずつ感じながら頑張っているはずです。緊張を経験する楽しさを快感として味わう事で、子供達にたくましい心が育っていくのではないかと思います。初めて発表会を経験する年少組の子供達は、まだ、その事態を十分に理解できないまま本番のステージに立つ子がいるかもしれません。それでも、その子の味わう緊張は次への目標に繋がります。その目標を持って頑張っているのが昨年の緊張を経験した年中組の子供達です。そして、幼稚園最後のステージを踏む年長組、みんなそれぞれに緊張の味わい方は違うでしょうが、「みて!みて!」の気持ちは皆同じです。

間もなく行われる『平成29年度 音楽発表会 進め~未来へ~』

では、お家の方々も子供達の「みて!みて!」の気持ちに応えて、大きな拍手と、温かい眼差しを贈ってあげてください。きっと子供達は、全力でステージの上から「僕を…私をみて!!」とアピールする事でしょう。見てもらう事で、認められている事を実感し、自信をもってこれから色々な事に頑張っていける子供になってくれます。その日を楽しみに今、一生懸命に頑張っています。