自分の事は自分で(平成26年度8月)
今日で一学期が終わりました。この一学期、たくさんの事を経験した子供達にはどんな成長がみられたでしょうか?たった3ヵ月の間ですが、この3ヵ月はそれまでとは違く環境の中で新しい生活を送るため、親も子も心身ともに一生懸命だったかもしれません。そして、先生達にとっても、新しいクラスづくり…仲間意識をつくりお互いの信頼関係を築いていくためにも最も切な3ヵ月でした。
その大切な時期を有意義に過ごした子供達は、みんなとてもいい顔で毎朝登園して来ます。朝一番の「おはようございます」の声と笑顔に、幼稚園の楽しさを見出す事が出来ているのを感じられるようになりました。中門から、お母さんと一緒でなければ行くことができなかった子が、やっとお母さんと「バイバイ」をして、先生の所にまっすぐ一人で行けるようになったり、幼稚園バスから降りてとぼとぼとと歩いて行っていた子が、仲良しになった友達とはしゃぎながら競争するように走って園庭に向かって行くようになったり、登園しても、ずっと先生の後ろをくっついて何をしていいかわからないで不安そうにしていた子が、早々に体操服に着替えて友達を待ち構えているようになったり……と、みんなそれぞれに朝の様子にも嬉しい変化が見られるようになりました。
さて、ここまでの成長は、親子の辛抱や忍耐の伴う事もたくさんあっての成長だったと思います。次のステップとしては、子供達が、幼稚園という集団生活を十分に受け入れ、自主的に環境や人と関わり生活を作り上げていくという事です。そのためには、先ず、基本的な生活習慣を確立していく努力が必要になってきます。“自らが生活して行く”という意識を持つ事です。人の手によってやっと生活させられているのと、そこで生活するために…と自分で何かをするのとでは、その過程と結果に大きな違いが出てきます。
ある朝の事です。いつものように私は、幼稚園の中門でお家の人と一緒に登園して来る子供達を迎えていました。お姉ちゃんと弟二人がお母さんと一緒にいい顔でやって来ました。荷物をそれぞれに持った時に、その子達のお母さんが「アッ!」と言われその場にいた先生に申し訳なさそうに、「先生、カバンを忘れちゃったんです。ごめんなさい。」と言われました。「はい。わかりました。今日は大丈夫ですよ。」と答えると「うち、基本、自分の荷物は自分で準備するようにしているもんで…。ねっ、自分で忘れたんだから仕方ないね。」と、その子を見ながら笑顔で言われたのです。そんなやりとりの中、忘れてしまった弟の顔を見ると、しまった!と思いながらも笑って「行ってきます!」とお姉ちゃんと保育室に向かって行きました。自分でした失敗だから、お母さんを責めたりくよくよしたりしないのです。その家庭では、いつもそういう生活をしているから、“今度は忘れないようにしなくっちゃ、そのためはどうしたら良いか”という解決策が子供ながらにも明らかにできて前向きに受け止められるのでしょう。
私は、その様子を見ていてすごくいい気持ちになりました。それは、その子達にとって実にありがたい事だと感心もしました。幼い子供達が、幼いながらも“自らこの環境の中で生活をしている”という実感を味わうためには、“自分の事は自分で…”という心掛けからスタートするのだと思います。何のかもお父さんやお母さんが手をかけてやっていると、そうしてもらうのが当たり前になってきて、上手くいかなかったり失敗したりした時には、親を責めたり人のせいにしてしまって、自分を振り返る事をしなくなってしまうのです。逆に言うと、どうする事が成功につながるのか、どうしたから良かったのかを考える事をしないまま生活する事になります。人の手により生活させられていくのではなく、自らが生活するという意識を持たせてやってほしいと思います。誰かがどうにかしてくれるのではなく、自分がやらないと始まらない!くらいの勢いのある子供達になってほしいと思うのです。例えば、お風呂から上がってタオルで拭いてもらうのを立ったまま待つのではなくて、タオルを自分で持ってなんとか拭いてみようとしたり、前後ろが反対でも自分で着替えようとしたり、毎日必要なハンカチは自分で制服のポケットの中に入れたり…etc.小さな子供達でも自分でできる事はたくさんあります。自分でしようという意識が大切なのです。そうすれば、自分でした事に対して責任を持つようになります。自分で考える事が当たり前になってきます。そして、得られた結果を自分の事として悲しめたり喜べたりします。人はそれを幾度も経験しながら社会をつくる一員として成長していくのではないでしょうか?
今日まで、新しい環境の中で、お子さんの様子に心配しておられたお父さんやお母さん、幼稚園のお子さんへの対応や焦らずそっと見守っていただきたいという幼稚園からのお願いを受け入れてくださり、本当にありがとうござました。この良い状態で、引き続き2学期を迎える準備をして行きたいと思います。
明日から長い夏休み。お家にいる時間も少し増えてくると思います。“自分でできる・自分でする”は自分で生活している実感を得る事になります。そして“自分”を生き生きと目覚めさせる事になると思います。子供達がみんなそんな気持ちで生活を送れるようになれば、どんなに素晴らしいだろうと、2学期を想像してウキウキします。この夏、“自分開拓”のチャンスにしてみてはいかがでしょうか?
2014年7月18日 2:06 PM | カテゴリー:葉子先生の部屋 | 投稿者名:ad-mcolumn