経験が育てるもの(平成25年度11月)
気がつけば、今年のカレンダーはあと2枚……。もうすでに、来年の年賀状の注文受付も始まっているようです。なんて一年の早い事!時の流れを早く感じるのは、年をとった証拠とよく言われますが……(笑)。毎年の事ですが、“忙しい、忙しい”と過ごしているうちに、この月まで来てしまったような気がして、いつもここら辺で、ふと立ち止まってこれからの一日一日を大切に過ごさなければ!としみじみ思います。
子供達は今年度が始まってからこれまでに幼稚園で様々な日々を過ごしてきました。お子様の成長を色々な場面で感じてくださっているのではないでしょうか?幼稚園での経験の一つひとつが、子供達を確実に成長させています。それは、目に見えるものから気がつかないくらいの小さなものまで……。成長の大きさやスピードは様々です。
9月に開催された秋季大運動会では、みんなそれぞれに頼もしい姿を見せてくれました。保護者の皆様からも、その後、しばらくは、運動会の感想や我が子の成長を喜んでいただいている気持ちを連絡帳に書いて寄せていただきました。本番当日の一日を観ただけでも、感動してもらえた事を喜んでいるのは、何より子供達だと思います。お家で、お父さんやお母さんそして運動会を観に来てくださったおじいちゃんおばあちゃんからもいっぱい褒めてもらえた事は、大きな自信となったことでしょう。
私達は本番は勿論の事、それまでの子供達の頑張りや努力、そしてその都度得られる子供達の心の成長を毎日一番近くで見てきました。何かができるようになったとか、集団の中でみんなとちゃんと一緒にやっているとかという部分だけではなく、できない事や勝ち負けを繰り返しながらの自分との戦いをしていた子、初めての経験で慣れない事への不安や辛さを感じていた子、そんな子供達も、日を追うごとに楽しさや頑張る事への快感を得て行きました。その過程をずっと見てきた先生達には、一言では、言い表せない感動がありました。運動会が終わってから、子供達の成長はいろんな所に表れています。どことなく自信なさそうだった子の表情に明るさが出てきたり、友達関係に広がりが出てきて仲間意識が高まったり、一人でできなかった事を頑張ってみようという気持ちが強くなってきたり……。いろいろなシーンで、運動会の経験が子供達を育ててくれている事を実感しています。
年長組では、その後、運動会の絵を描きました。子供達の絵は表現が色々で、いつも感動させられます。見るのも楽しく微笑ましい作品がいっぱいです。しかし、子供達の中には、見た物や感じた事を画用紙に表現する事を苦手に感じる子もいます。担任の先生が、ある子の絵を「この子、前は、なかなか悩んで描き始められなかったのに、このリレーの絵は、ささっと描けたんです。運動会からすごく変わったと思うんです。」と言って見せてくれました。また、ある男の子の絵を見ながら「この子、今回、絵に向き合う姿が今までと違っていたんです。すごく根気よく最後まで描けていました。」と話してくれました。なるほど、絵を見てもそれが伝わって来ました。
心が揺さぶられるほどの経験は、子供達を大きく変えるということがよくわかります。楽しかった、悔しかった、面白かった、嬉しかった、悲しかった…色んな事があった。そして、僕も私も頑張った!!その自信が、表現する事に躊躇しない、戸惑わない…むしろ積極的に表現しようとする意欲につながるのです。また、そうできた事で更に自信を持ち、その他の様々な事に対しても挑戦意欲が芽生えてきます。そうなると、子供は生き生きしてきます。しかし、そこで、大切なのはその経験をする子供が置かれた環境です。例えば、運動会は集団の中での経験です。集団の中で友達の力を見ながらそれに憧れたり自信を持てたりもっと自分も頑張ろうと思えたりするのです。「もっと…もっと…」と思えるのは、一人じゃないからです。そして、その姿をわかって応援してくれる家族や先生、友達が近くで見てくれている事、さらに、それを褒めてくれたり、認めてくれて評価してくれる人がいる事です。そこで、子供達は、経験した事を「頑張ってよかった」「僕にもできた!」「私って凄い!」と、自分の力を確信します。ただ経験させるだけではなく、その経験を子供の確かな成長に導くのは、その周りの環境のあり方も手伝うのではないかと思います。
我が子の事は勿論、他の子供達の事まで、お迎えの時間に「○○君、運動会、かっこよかったよ!」「走るの速かったね」「○○ちゃん、お遊戯が可愛かったよ。」と保護者同士でお互いに声をかけ合っておられる様子をたくさん見ました。その成長を我が子の事のように認め褒めて喜んでくださるこのやり取りもまた、子供達の成長を大きくしてくれる環境の一つです。本当にありがたい事だと感謝しました。
これからも、子供達は幼稚園でたくさんの友達と色々な経験をします。楽しかった、難しかった、しんどかった、面白かった、頑張った、嬉しかった、悔しかった、悲しかった──この全ての心の動きを与えてくれる経験こそが、子供達を確かな成長に導いて行く事を感じていただけると思います。子供達のその一瞬一瞬を目の当たりにする事が私達のやりがいと楽しみです。
2013年10月31日 4:29 PM | カテゴリー:葉子先生の部屋 | 投稿者名:ad-mcolumn